解説一覧

  • 2011/02/25

    新しい欧州排出権取引システムの落とし穴

     欧州連合(EU)では、2005年から温室効果ガスのキャップ・アンド・トレード型排出権取引制度(EU-ETS)を導入しているが、現在、第1期(2005~07年)、第2期(08~12年)に続く、第3期(13~20年)の制度設計が進められている。新制度は昨年末にその概要がまとまり、今春には、EU各国で審議、承認したうえで正式法制化されることになっている。ところが、この新しいキャップ・アンド・トレード制度に関して、『問題が山積みであり、施行すれば不満を抱く企業からの訴訟が乱発される懸念があるうえ、温暖化対策の効果の面でも疑問がある』との懸念が浮上している。

     問題を指摘したのは、2010年12月30日付の独シュピーゲル誌のオンライン版。 EU-ETSは欧州域内の主要産業を対象とし、EUの全排出量のおよそ半分をカバーする欧州温暖化政策の要の制度とされている。これを世界に先駆けて導入することで、他の先進国はもとより途上国にも同様の制度の導入を促し、世界的な排出権取引市場の創出をリードするというのが欧州の基幹戦略である。しかしシュピーゲル誌は、その肝心要の制度が「環境に資するものなのか、それとも単に負担の大きい官僚主義を生み出すだけのものなのか、誰にもわかっていない」と問題提起したのである。さらには「排出権取引が近い将来に世界的に拡大するという兆候はほとんどない」とし、欧州が突出して同制度を進めていることに疑問を投げかけた。

  • 2010/12/10

    京都議定書は問題解決を遅らせる
    日本は実質的な排出削減で世界に貢献を

     温暖化対策を巡る国際交渉が難航している。もめている原因は、先進国と途上国の対立だ。

     下の図を見てほしい。今後数十年にわたって二酸化炭素を排出する量が急増するのが途上国、特に成長著しい中国などの新興国である。温暖化をストップさせるためには、こうした新興国の排出削減に向けた協力が不可欠だ。

     一方、新興国から見れば、温暖化は今の先進国がもたらしたもので、責任は先進国にある。現在の先進国は、これまで石油や石炭などの化石エネルギーを大量に使って経済成長してきた。だから、その結果排出された二酸化炭素によって引き起こされた温暖化問題は先進国の責任であって、まずは先進国が排出を削減する義務を負うべきだという論理である。新興国にとってみれば、これから経済成長する権利があるのだから、エネルギーの使用量を削減するなど考えられない。

     今の京都議定書は、そうした主張に配慮して、先進国だけが削減義務を負う取り決めになっている。しかし、京都議定書は1997年、すなわち今から10年以上前にできたものである。中国だけを見ても、そのころに比べて経済力や生活水準は格段に伸びており、国際事情は大きく異なっている。

    途上国からの二酸化炭素排出は増え続ける
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