解説一覧

  • 2011/12/01

    COP17を巡る諸外国の動向等について

     国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)が南アフリカのダーバンで始まった。2012年末に第1約束期間が終了する京都議定書を、2013年以降も先進国に削減義務を課すことで延長することに合意できるか、はたまた米国や中国など京都議定書で義務を課されていない主要排出国を含む包括的な新たな合意に向けて道筋をつけられるかが焦点であり、「京都議定書の単純延長に反対している日本は途上国やEU(欧州連合)からのプレッシャーに抗し切れるか」といった文脈の報道が始まっている。

     しかし、COP17の論点や焦点はそのような単純な構図では割り切れない、複雑で重層的なものである。しかも、世界、とりわけ未曾有の経済危機、財政問題に直面する日米欧の先進国の置かれている政治・社会情勢は、経済を制約する形での環境政策を受け入れることに極めて慎重にならざるをえない状況下にある。環境と経済の両立を実現するとされてきたグリーン経済成長モデルも、英国で「エネルギー貧困」問題が顕在化したり、米国でグリーンニューディール政策が暗礁に乗り上げたりするなか、急速に勢いを失っている。

     本稿では、そうした各国をとりまく情勢をもとにCOP17に臨む各国のポジションについて解説し、なぜ国連交渉が行き詰っているか、その背景にある構造を明らかにする。さらに、そうした行き詰まりを打破して地球環境問題に具体的な進展を図るために、いかなる代案がありうるか、その代案に日本としてどのように貢献できるかについて論じてみたい。

  • 2011/06/02

    クルマはどこまでエコになるか?

     今回は、運輸部門のなかで、特に個人利用の自動車(乗用車)に焦点を絞って、車両技術の向上による二酸化炭素(CO2)削減と技術以外での削減の可能性について議論したい。

     自動車の多くは、駆動源として内燃機関であるガソリンエンジンを利用している。エンジンは、下の図に示すように主として熱による損失のため効率が低く、一般に、燃料であるガソリンが持っているエネルギーの20%程度しか駆動軸に伝達されない。失われている熱をうまく再利用できれば、効率が飛躍的に改善されるため、研究レベルではいくつかの技術が試みられているが、いまだ実用化には至っていない。

     また、図からわかるように、アイドリングによるロスもかなりの量にのぼる。このため、信号などでの停止時のアイドリングストップは大きな効率向上につながる。これは実際にハイブリッド車でも取り入れられており、ハイブリッド化による効率向上のうち、3分の1近い寄与になっている。

     一方、駆動軸に伝達されたエネルギーは、さらに、トランスミッションなどの伝達系で失われる。タイヤに伝達されるのは駆動軸に伝えられたエネルギーの60~70%程度だ。そのエネルギーによって車はスタートし加速されるが、停止時にはブレーキによって運動エネルギーが失われて止まる。この量は駆動軸に伝えられた量から見ると3分の1程度になる。ハイブリッド車は、この停止時に失われるエネルギーを電気に変換して回収し、効率向上に利用している。

     つまり、自動車の効率は、まず駆動源の効率に大きく左右され、次にトランスミッションなどの伝達系の効率、さらに車両の形を通して空気抵抗やタイヤの摩擦抵抗に影響される。ガソリンエンジンそのものの効率化はメーカーが最大の努力を図ってきた部分であり、着実に成果を出してきた。残された改善余地は大きくないが、今後も効率化は進むと予想される。飛躍的な改善は、今、話題の電気自動車や燃料電池車への移行が考えられるが、車両価格やインフラ整備など大量普及への課題は大きく、短中期的な対策にはならない。

    自動車の効率は、エンジンやアイドリングなどのロスによりそれほど高くない
  • 2011/05/17

    中国の「省エネルギー目標」が意味するもの

     中国は極めて政治的に国家統計を使うことがある。

     たとえば、GDP(国内総生産)成長率は国家目標であり、各省の省長や共産党書記にとって勤務評定の対象である。 続きを読む

  • 2011/05/13

    日本の総力をあげ総合的な水管理システムを

     21世紀は「水」の時代と言われ、10年が経過した。上水の供給や排水処理、処理施設の管理運営などの総合的水管理市場は、2025年には100兆円規模になると試算されている。その背景には、水が得られない人口が約11億人、トイレや排水処理がないか実施されていない地域の人口が約26億人も存在している。また、循環型社会を構築するうえで、水処理分野においても二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)といった温室効果ガスの発生抑制やエネルギー回収が急務となっている。

     2008年度に下水道から排出された温室効果ガスの総量はCO2換算で674万tあり、日本の総排出量の0.5%に達している1)。こうしたなかで、小規模分散型生活排水処理システムとして活用されている浄化槽は、最小規模の5人槽で、生物化学的酸素要求量(BOD)1kgあたりのCO2排出量が8.7kgとなり、西村ら2)は人口密度が1040人/km2以下の集落では、下水道による整備よりもCO2排出量が少なくなると報告している。

     これまで、わが国の生活排水処理システムにおける低炭素化対策は、処理施設がエネルギー面で完全に自立したうえで、新エネルギーの活用とエネルギー回収、物質循環を目標とし、現在では省エネ技術の導入を中心とした施策が実施されてきた。しかし今回の震災により、さらなる省エネや節電が求められており、排水処理の分野においても、一層の省エネ技術開発が直近の課題になっている。

  • 2011/05/09

    賠償額を上回る燃料費負担増が電気料金を押し上げる

     朝日新聞は5月3日の朝刊の1面で、「原発賠償4兆円案」とのタイトルで「東電分2兆円、料金16%上げ」と報じた。東京電力の負担額が2兆円であり、これを10年間にわたって負担するために、電気料金が16%上昇するとの内容だ。

     東電の2009年度の電気料金収入は4兆5000億円ある。16%の値上げを行えば収入増は7000億円強となり、毎年の東電負担額2000億円をはるかに超える収入となる。しかし、記事では「賠償資金を確保するため16%の値上げになる見通しだ」とあるのみで、金額の整合性に関する説明はない。

     一方、同じ記事中で「火力発電の燃料費増を年間約1兆円とみている」とも報じている。この数字が正しければ、燃料費の増加は賠償額を大幅に上回ることになる。燃料費は本当に1兆円増えるのだろうか。まず、燃料費増の計算根拠を推測してみたい。

     燃料費の増加の理由は、当面、原子力発電が難しくなり、その落ち込み分を火力発電で補わなければならないからだ。

     発電が困難になる原発には二種類ある。一つは、既存の福島第一原子力発電所であり、もう一つは新設予定の原発である。福島第一原発からの2009年度の発電量は330 億kW時であった。一方、新設予定の原発は福島第一原発7,8号機、東通原発1号機の3基であり、設備能力の合計は約415万kWだ。全基が稼働する2017年には、稼働率を80%と仮定すると、発電量が290億kW時となる。

     この2種類の原発の発電分を、新増設が比較的容易な石油火力と天然ガス火力で50%ずつ代替すると、1年間に重油650万t、天然ガス410万tが必要になる。ちなみに二酸化炭素(CO2)排出量は、合わせて、年間4100万t増加する。過去、低硫黄分のA重油価格が最も高かったのは2008年秋であり、1t当たり12万円を超えていた。また同時期に、天然ガスの輸入価格も最高値の1t当たり8万円を記録している。

  • 2011/04/18

    「節電生活」定着で電力需要は抑制できるか?

     東日本大震災により多くの発電所が被災し、東京電力、東北電力は十分な電力供給を行えなくなった。日本では、燃料受け入れの関係から火力発電所は海岸沿いに立地せざるを得ず、今回のような広範囲の津波では、多くの発電所が一度に被災することになる。

     4月11日時点で停止している発電所の供給能力は、表の通り合計で2600万kWを超えている。東電、東北電の保有設備能力と両電力に供給を行っている共同火力などの合計の設備能力は約1億kWなので、今回の震災で4分の1の発電能力が失われたことになる。

     この状況では当然、電力供給に問題が生じる。被災した発電所の復旧は、荷揚げ設備が比較的シンプルな石油系の火力が早く、石炭系が遅いのではないかと想像されるが、津波の被害を受けた大半の火力発電所の復旧には少なくとも半年程度は必要だろう。また、原子力発電所については、再開に際し地元の理解を得るのに相当程度の期間が必要と考えられる。

     仮に、火力発電所が半年間停止すれば、これらの発電所からの二酸化炭素の排出量は2000万t以上減少する。燃料の使用がなくなるので、当然の減少だ。

  • 2011/04/05

    運輸部門のエネルギー消費量抑制のカギを探る

     最近、地球温暖化対策としての二酸化炭素(CO2)削減目標が話題になることが多い。2010年末には、メキシコでの気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)で、削減に向けた世界的な枠組みの話し合いが行われた。2009年9月の国連総会では、鳩山由起夫前首相により、日本の中期削減目標として「1990年比で2020年までに25%削減する」ことが表明されている。このような流れのなかで、重要なセクターの一つである運輸部門における削減の可能性についても、さまざまな場で議論されてきた。

     今回は、運輸部門全体におけるCO2排出量の現状を見たうえで、細分化した各サブセクターごとの特徴や、国・地域別の状況に差があり、世界全体が必ずしも同じ問題をかかえているわけではないことを明らかにする。また次回以降、特に自動車に焦点を当てて、削減の技術的なポテンシャル、その他の施策、そして、将来の途上国の急成長を考慮したうえでの削減の見通しについて議論したい。なお、運輸部門では、CO2以外にも二酸化硫黄(SO2)や炭素微粒子、航空機による巻雲生成など、温暖化に影響するものがあるが、ここではCO2に絞って議論する。

  • 2011/02/25

    新しい欧州排出権取引システムの落とし穴

     欧州連合(EU)では、2005年から温室効果ガスのキャップ・アンド・トレード型排出権取引制度(EU-ETS)を導入しているが、現在、第1期(2005~07年)、第2期(08~12年)に続く、第3期(13~20年)の制度設計が進められている。新制度は昨年末にその概要がまとまり、今春には、EU各国で審議、承認したうえで正式法制化されることになっている。ところが、この新しいキャップ・アンド・トレード制度に関して、『問題が山積みであり、施行すれば不満を抱く企業からの訴訟が乱発される懸念があるうえ、温暖化対策の効果の面でも疑問がある』との懸念が浮上している。

     問題を指摘したのは、2010年12月30日付の独シュピーゲル誌のオンライン版。 EU-ETSは欧州域内の主要産業を対象とし、EUの全排出量のおよそ半分をカバーする欧州温暖化政策の要の制度とされている。これを世界に先駆けて導入することで、他の先進国はもとより途上国にも同様の制度の導入を促し、世界的な排出権取引市場の創出をリードするというのが欧州の基幹戦略である。しかしシュピーゲル誌は、その肝心要の制度が「環境に資するものなのか、それとも単に負担の大きい官僚主義を生み出すだけのものなのか、誰にもわかっていない」と問題提起したのである。さらには「排出権取引が近い将来に世界的に拡大するという兆候はほとんどない」とし、欧州が突出して同制度を進めていることに疑問を投げかけた。

  • 2010/12/10

    京都議定書は問題解決を遅らせる
    日本は実質的な排出削減で世界に貢献を

     温暖化対策を巡る国際交渉が難航している。もめている原因は、先進国と途上国の対立だ。

     下の図を見てほしい。今後数十年にわたって二酸化炭素を排出する量が急増するのが途上国、特に成長著しい中国などの新興国である。温暖化をストップさせるためには、こうした新興国の排出削減に向けた協力が不可欠だ。

     一方、新興国から見れば、温暖化は今の先進国がもたらしたもので、責任は先進国にある。現在の先進国は、これまで石油や石炭などの化石エネルギーを大量に使って経済成長してきた。だから、その結果排出された二酸化炭素によって引き起こされた温暖化問題は先進国の責任であって、まずは先進国が排出を削減する義務を負うべきだという論理である。新興国にとってみれば、これから経済成長する権利があるのだから、エネルギーの使用量を削減するなど考えられない。

     今の京都議定書は、そうした主張に配慮して、先進国だけが削減義務を負う取り決めになっている。しかし、京都議定書は1997年、すなわち今から10年以上前にできたものである。中国だけを見ても、そのころに比べて経済力や生活水準は格段に伸びており、国際事情は大きく異なっている。

    途上国からの二酸化炭素排出は増え続ける
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