FraunhoferとECOFYSによる産業用電気料金の国際比較(第一報)


(一社)日本鉄鋼連盟 特別顧問/日鉄テクノロジー株式会社 顧問

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 ドイツでは国内産業の国際競争力を維持するために電力多消費型企業の産業用電気料金に掛かる公租公課や賦課金に加え託送料金までも減免し、その分を他の産業と家庭用電気料金に上乗せすることで収支を合わせていること、その結果、日本に比べて圧倒的に安価な産業用電気料金を実現していることを既報した注1) 。本報では、欧州最大の科学技術分野における応用研究機関であるFraunhoferと英国を拠点とする大手エネルギーコンサルタントであるECOFYSによる電力多消費産業用電気料金の国際比較情報注2) を得ることができたので紹介する。なお、産業セクター別等を含めた詳細については続報する。
 産業用電気料金を優遇しているのはドイツだけではなく、むしろ産業用電気料金に対する優遇のない日本の方が特殊であることが見て取れる。特に、アジア地区における競合国(中韓)との電気料金の差異は致命的に大きいことがわかる(図1)。


図1 電力多消費産業向け電気料金の国際比較

 本レポートは2015年7月に公表されたものであるため、比較に用いられた価格データは2013年度以前のものと考えられる。日本では、2012年にFIT制度が導入され、2013年度のFIT賦課金は0.35¥/kWhであったものが、2021年度は3.36¥/kWhまで上昇している(図中緑色部分)。一方ドイツでは、電力多消費産業向け電気料金に掛かる公租公課やFIT(EEG)を含む賦課金のほとんどが減免されているため、2013年以降これらの上昇の影響はほとんどない。このため産業用電気料金の内外格差はさらに広がっている。

注1)
小野透、海外のカーボンプライシングの実態(2021)
https://ieei.or.jp/2021/04/special201608028/
注2)
Electricity Costs of Energy Intensive Industries, An International Comparison, Fraunhorfer and ECOFYS(2015)
http://publica.fraunhofer.de/documents/N-382911.html