工藤智司氏・日本基幹産業労働組合事務局長に聞く[前編]
震災を経験し、切に感じた日本の強さ
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
震災後、政府は情報を統制しながら発信していたと思う。
――震災、原発事故についての政府の対応や情報発信についてどう思いましたか。
工藤:福島第一原子力発電所の事故は大変でした。福島県の組合員の方も大変でしたし、原子力関連施設を製造している人も組合員です。情報発信はどんどん出していくべきだと思いますが、やはりパニックになるようなことだけは避けるべきです。きちっと情報を統制しながら発信していたと思うし、私は枝野さんの誠意はテレビで見ていて感じました。
――情報を適宜コントロールしながら、発信すべきところは発信していたと思われるのですね。
工藤:はい。いろいろな所に情報発信センターがあり、機能が分化されていたと思います。そういうところは、どんどん集約して一元化するべきです。どんな世界でもそうですが、情報を1カ所に集めて、発信する所も1カ所にするのが一番いい。情報を吸い上げるスピードも上げて、発信するスピードもきちっとタイムリーにやっていく。早いことが必ずしもいいのではなく、情報はタイムリーさが一番大事です。今回は、それについてはどうだったかわかりませんが。
――基幹労連としての情報発信はいかがでしたか。
工藤:情報発信は、中央災害対策会議を週1回行い、そのタイミングで情報発信していこうと言い続けました。非常時には情報を出しますが、基本的には週1ペースで発信していきました。
――情報発信はとても難しいですね。原発事故についても政府はパニックを回避しようとして発信している姿勢はわかりましたが、事故のインパクトの大きさから海外からもさまざまな情報が流れた。インターネットで即時に情報が飛び交い複雑化している中、私たちは何を信じていいのか混乱した局面はあると思います。
工藤:そうですね。ただ今回暴動が起こらなかったのは、すごいと思うんです。海外だったら、起きても全然おかしくない。日本は耐え忍ぶような文化だと思うのです。
(後編に続く)