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再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方

-検討会における中間整理-


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて世界が大きく動く中、日本も2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、脱炭素電源である再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化を目指している。2012年7月に施行された固定価格買取制度(FIT)により再エネの導入量は大幅に増加した。2010年度の総発電量に占める再エネの比率は9%(うち水力7.8%)だったが、2020年度の再エネ比率は、19.8%(水力7.8%、太陽光7.9%、風力0.9%、バイオマス2.9%、地熱0.3%)に拡大した。

 2021年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、2030年に向けて再エネの主力電源化を徹底し、再エネの最優先の原則で取組み、国民負担の抑制と地域共生を図りながら最大限の導入を促すとしている。2030年度の再エネ電力比率は、「第5次エネルギー基本計画」(2018年7月策定)の22~24%から36~38%(発電電力量3360-3530億kWh)に高めた(図1)。2030年目標では、再エネ(36~38%)、原子力(20~22%)、水素・アンモニア(1%)の脱炭素電源約6割の実現を目指す。


図1 新たなエネルギーミックスへの道のり
出典:資源エネルギー庁

 一方で、再エネの導入拡大に伴い、一部の地域において災害や環境への影響、再エネ設備の廃棄などへの懸念の声が上がっている。資源エネルギー庁に寄せられた自治体や住民の声を分析したところ、電源別では、風力発電等についても寄せられているが、その大部分が太陽光発電に関するものであった(図2)。


図2 情報提供フォームへの相談内容
出典:資源エネルギー庁 007_01_00.pdf (meti.go.jp)

 再エネ発電設備への地域の懸念や不安を払拭するため、経済産業省・農林水産省・国土交通省・環境省が共同事務局となり、2022年4月より再エネ発電設備の適正な導入と管理に向けた施策の方向性を検討する「再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会」が設置された。筆者は、本検討会のメンバーとして議論に関わっており、本稿では7月28日の中間整理の要点をまとめてお伝えする。

検討会の基本的な考え方

 現在、太陽光発電を中心とした再エネ導入拡大に伴い、安全面、防災面、景観・環境等への影響、将来の太陽光パネルの廃棄等に対する地域における懸念が顕在化している。これらの地域の懸念を解消し、地域と共生した再エネの導入に向けて、再エネ事業における課題や課題の解消に向けた取組のあり方等について整理する。中間整理では次の4項目、①土地開発前、②土地開発後~運転開始後・運転中、③廃止・廃棄の各段階、④事業実施段階の横断的事項、に分けて整理する。

「土地開発前」段階の課題への対応

 土地開発前段階における課題として、太陽光発電設備が急な傾斜地や森林伐採を伴う区域に設置される場合などに、災害の発生が懸念されるという地域の声の高まりがある。また発電設備の開発許可については、各法令に基づき都道府県等がそれぞれ対応しているが、太陽光発電の特性が考慮されていないなど関係省庁の横串での対応が不足しているという指摘もある。地域の抑制すべき各エリアへの立地を避け、促進すべきエリアへの立地誘導が必要と考えられる。

 これらの課題に対して、速やかに対応することとして、①太陽光発電設備の特性を踏まえた開発許可にあたって考慮すべき事項を関係省庁が横串で整理し、関係法令の基準・運用へ反映する。また、②太陽光発電に関わる林地開発許可制度による規制面積基準を引き下げる。同制度では、保有林以外の民有林を対象に1ヘクタールを超える開発行為について都道府県知事の許可を必要としているが、これを0.5ヘクタールに改めて、小規模な林地開発に対して管理を強化する。③関係法令の指定区域等の地理情報を、環境アセスメントデータベース「EADAS(イーダス)」に集約するとした。環境省が運用するEADASでは、地理情報システム(GIS)で全国の環境情報、再生可能エネルギー情報、風力発電における鳥類のセンシティビティマップ、国立公園の自然環境インベントリ整備情報などを確認することができる。(参照:環境アセスメントデータベース (env.go.jp))

 さらに、法改正を含め制度的対応を検討することとして、森林法や盛土規制法等の規制対象エリアの案件については、関係法令の許認可取得を再エネ特措法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)の申請要件とするなど、手続きの厳格化を検討する。また、電気事業法における工事計画届出時に関係法令の遵守状況を確認する。森林法や盛土規制法等の規制対象エリアの案件については関係法令の許認可未取得での売電開始を防止する。

「土地開発後~運転開始・運転中」段階の課題への対応

 土地開発後~運転開始・運転中段階の再エネ発電設備の課題として、関係法令等への違反が生じた場合において、違反を早期に解消するための体制強化や仕組みが求められる。また、必要な許認可がされていない状態での売電開始を未然に防止する仕組みが必要である。

 これらの課題に対して、速やかに対応することとして、①電気事業法に基づき、災害リスクが高い設備への優先的かつ機動的な立ち入り検査を実施する。②違反事例への対応フローの整理など、関係省庁・自治体の連携強化、FIT・FIP認定システム等を活用した違反への対応状況の一元管理等により、関係法令に違反する案件への対応の迅速化を図る。

 法改正含め制度的対応を検討することとして、違反状況の早期解消を促すため、関係法令の違反状態での売電収入(FIT・FIP交付金)の交付留保などの再エネ特措法における新たな仕組みを検討する。また、電気事業法における工事計画届出時に関係法令の遵守状況を確認し、許認可未取得での売電開始を防止する。

「廃止・廃棄」段階の主な対応

 廃止・廃棄段階の課題として、調達期間の満了を迎えた住宅用太陽光パネルについて、廃棄方法等に関する懸念や廃棄に必要な情報が不足している現状がある。中長期では、大量に発生する太陽光パネルが適切に処理されるのかに関する地域での懸念が生じている。2030 年代後半には年間約50~80 万t の太陽電池モジュールが排出される見通しであり、設計・施工の不具合や災害、故障、リプレイス等によって、一定割合は製品寿命よりも前倒しで排出されることも想定される(図3)。


図3 使用済太陽光パネルの排出見込量
出典:環境省 001_04_00.pdf (meti.go.jp)

 これらの課題に速やかに対応するため、2022年7月1日から太陽光発電の廃棄等費用の積立制度を開始しており、最も早い事業の積立が開始されている。リユース・リサイクル等のガイドラインや廃掃法等の関連する法律・制度等に基づき適切に対応を進めていく。また、廃棄ルールや廃棄物処理業者等の必要な情報を現場に周知していく。さらに、太陽光パネルの含有物質等の情報発信や成分分析等の実施のあり方を検討する。

 廃止・廃棄段階において、法改正含め制度的対応を検討し措置するものとして、事業廃止から使用済太陽光パネルの撤去・処理までの関係法令・制度間の連携強化を検討する。また、2030年代半ば以降の使用済太陽光パネルの大量廃棄を見据え、これまで「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」の策定・更新や「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」の策定などの措置を講じてきた。今後、さらにリサイクルを促進・円滑化するための支援策や制度的対応も含む検討を行う。

事業実施段階の横断的事項における主な対応

 事業実施段階における横断的事項における課題として、地域との合意形成に向けた適切なコミュニケーション不足が挙げられている。また、事業譲渡(転売)や関係法令違反などによる責任主体の曖昧化や地域との信頼関係の毀損が生じている。非FIT・FIP案件への事業規律の課題の顕在化が生じており、地域と共生した好事例の展開が必要である。

 これらの課題に対して速やかに対応することとして、地域との合意形成に向けた説明項目や周知対象等について整理し、再エネ特措法に基づくガイドライン等に位置付ける。転売の場合も同様で努力義務とする。非FIT・非FIP案件についても適切な補助金の採択基準を設け、適正な規律を担保する。また地域に貢献する事例について整理し、ガイドラインなどで事業者に推奨していく。

 法改正含め制度的対応を検討し措置することとして、再エネ特措法の認定にあたり、説明会の開催など地域へ事前周知の義務化について検討する。転売の際の変更申請の場合も同様とする。また、関係法令等に違反している場合は、再エネ特措法上の転売の変更申請は認定不可とする。適切な事業実施を担保するため、再エネ特措法の認定事業者の責任の明確化等を検討する。さらに、事故発生状況を踏まえ、小規模再エネ設備に対する柵塀・標識設置の義務化等を検討するとともに、工事計画の届出時に関係法令遵守状況を確認するなど、電気事業法等の制度的措置を検討する。

 以上の「土地開発前」、「土地開発後~運転開始後・運転中」、「廃止・廃棄の各段階」、「事業実施段階の横断的事項」のとりまとめについては、検討会で適切にフォローアップを実施していく。今回は太陽光発電への対応策が中心となっているが、他の再エネ設備の課題への対応策についても検討していく。関係省庁は連携して、自治体、事業者、地域住民に対してわかりやすく発信し、事業規律の強化を行った上で、地域と共生した再エネの大量導入に向けて取り組んでいく方針である。

参考資料

  • 第7回「再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会」の「資料1提言(案)」007_01_00.pdf (meti.go.jp)(2022年7月28日)


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