自然災害と闘う

--復興、回復力、準備

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(英 Global Warming Policy Foundation(2019/06/20)より転載
原題:「RECOVERY, RESILIENCE, READINESS Contending with natural disasters」)

 2006年以来、有限会社気候予測応用ネットワーク社長として、私は極端な気象や気候事象への脆弱性を減らすために、気象気候情報を意志決定者が活用する支援をしてきました。民間と公共の双方にいる意志決定者とのやりとりの中で、私は気象や気象情報に頼る各種決断の複雑性について少なくともある程度は学んできました。科学的理解に関連する不確実性を慎重に見極めて伝えるのが重要であることも学びました。これは特に予測について言えることです。意志決定者にとって最悪の結果は、高いい信頼性を持って提示された科学的な結論や予測が、実はまちがっていたというものであることがわかってきました。
 この観点から私の証言は、気候変動に伴う自然災害、特にハリケーンや山火事に対応するにあたって、中心的な重要性を持つ以下の課題に話を絞ります。

最近のアメリカにおける気象災害は歴史的な事象の文脈の中でどの程度か
将来の大西洋ハリケーン活動の予測--季節変動と2050年や2100年までの予測
変動する気候を前にして極端気象事象への脆弱性を減らすにはどうすべきか

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自然災害と闘う--復興、回復力、準備(PDF)

【 著者紹介 】
 ジュディス・A・カリー博士は気候予測応用ネットワーク(CFAN)の社長およびジョージア工科大学名誉教授と元学部長である。1982 年にシカゴ大学で大気科学博士号を取得。ジョージア工科大学教授陣に加わるまでは、コロラド大学、ペンシルバニア州立大学、パーデュー大学で教鞭を執る。科学論文を190 本以上執筆し、教科書二冊、『大気と海洋の熱力学』『雲の熱力学、力学、微小物理学』を執筆。カリー博士はNASA 諮問評議会地球科学省委員会、エネルギー省生物環境研究指紋委員会、全米アカデミー気候研究評議会および宇宙研究委員会、NOAA 気候作業部会に在席した。カリー博士はアメリカ気象学会、アメリカ科学進歩協会、アメリカ地球物理連合のフェローである。

解説:キヤノングローバル戦略研究所 杉山 大志

 気候変動と災害に関心のある方、特に以下の関係者は是非一読を:

インフラの維持管理
気候変動に対する「適応計画」
企業の災害時の事業継続計画(BCP)
気候変動リスクへのエクスポージャ

 この報告で、元ジョージア工科大学気候学部長のジュディス・カリー氏は、最近のアメリカの山火事やハリケーンを人為的気候変動のせいにすることは、防災対策を歪めかねない、と警告する。
 更に、カリー氏は以下のように述べている:

21世紀において、人為的気候変動によって極端気象が悪化する可能性はあるかもしれない。(ただし、これまでのところ観測では殆ど変化は検出されていない。)
しかしながら、現状を見ると、アメリカの多くの地域では20 世紀に起きた極端気象にすら十分に適応できていない。
熱波については、かつて米国では1930年代にはダストボウルという暑く乾燥した時期があった。その後、森林は成長し実質的な燃料が蓄積され続け、山火事のリスクが高まっている。
ハリケーンは1970年以降では自然変動(大西洋数十年振動)によって鳴りをひそめていた。そして悪いことに、この間、海岸沿いに多くの建築物が経ってしまった。
このため、かつてあったような熱波やハリケーンが自然変動によって襲来するようになると、大きな災害が起きかねない。
このような長期的な自然変動に備えて、インフラ整備や土地利用に関する政策変更を行う必要がある。

 日本も他人事ではない。戦後の3大台風を含め、強力な台風は戦後から1960年代にかけて頻繁に上陸したが、その後は減った 。自然変動によってまたこれが復活したとき、我々は十分に備えられているだろうか。脆弱な建物やインフラは増えていないか。
 カリー博士によるGlobal Warming Policy Foundation報告書が、山形浩生氏により邦訳された。ここに許可を得て紹介する。

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