もんじゅの失敗の原因


エネルギーシンクタンク株式会社 代表


 高速増殖炉「もんじゅ」に関連する2016年度予算案が少し前に話題になったが、事故以来再稼働まで時間が掛かっていることがその理由だ。なぜ、もんじゅの再稼働にこれほど時間が掛かり、「失敗」と呼んでもよい状況になったのだろうか。その原因を考えたい。

1.失敗の原因

技術的原因
熱電対ウエル破損はメーカーの完全な設計ミスに加えて事業者のチェックミスが重なった。更に事故後のNa漏えい再現試験に於けるNa火災の知識・経験不足が問題を過大にした為、大事故であるとの印象をマスコミに与え、社会の不安感を醸成した。
炉内燃料交換機系の不具合は事業者の点検ミスとメーカーの設計上の不備である。
管理的原因(監理、監督)
管理の体制は規模に応じた体制が必要で小型試験装置(数百億程度まで、常陽等)は研究者と職人的技術者による研究機関の体制で動かすことは可能である。
もんじゅは30万KW級の発電所で、物量LWR100万KWe2基分の設備を有するプラントであり研究機関の体制で動かすことは管理体制が伴わない。発電プラントは言うなれば陸軍の管理体制が必要で、研究開発(R&D)は空軍の管理体制である。
前者は大佐の下に3000人の兵を数少ない将校が指揮、管理するが、実態は下士官が管理と実務を担う。一方空軍は大佐の下に飛行中隊を組み20~30機が迎撃、攻撃に向かうがその時の状況に応じての判断は各パイロットに委ねられる。
研究開発の管理は個人の工夫・判断が大きく利き、それなりの判断をする事で効率化が図られる。即ち空軍型でのFBR開発はR&Dの体質で、そこで育った士官が陸軍型管理を必要とする30万KW級の発電プラントを動かすことは現実的には困難である。
体質的原因(村意識、不作為)
Na漏えい事故後現場のビデオテープを公開したが報道側からの指摘で一部隠していたことが判明した。それ以前のLWRでの原子力トラブルの隠ぺい問題が底流にあり原子力村の体質と言われ、不利な話はしないと言う官僚的体質とのレッテルを張られた。
事業者(JAEA)に管理体制・能力が事業規模(30万KWの新型炉)に対して不足していることを事業者が理解していたかどうかは疑問である。また規制当局並びに監督官庁である文科省がJAEAの管能力不足の認識があったかどうか。多分認識をしていたと思われるが、現実には必要な是正処置をして来なかった。即ち規制当局並びに文科省の「不作為以外の何者でもでもない」のではないだろうか。認識をしていないとすれば、「当事者能力不足」である。
社会政治的原因
 県市等地元地方自治体はもんじゅの再稼働の地元合意を人質に取り、国の新幹線の延伸など公共投資を呼ぶための国との取引道具となった(政争の具)。
 これにより現場の士気を著しく低下させ、当事者のやる気を無くさせた罪は大きい。

2.結論

 科学技術という曖昧な言葉に惑わされ、単に小型試験炉の成功を踏襲し、当初は産官学の協業が上手く機能したが、建設終了後は工学、産業化の視点を忘れ30万KW級の発電プラントを運営したこと自体が一番の問題。
 今後は単なる研究と事業化を目指す研究とは峻別し、担当省庁も初めから然るべき分担にすべきである。
 加えて「地域利益誘導の政争の具とはしない、させない」ことが政治の役割でないだろうか。

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