核燃料サイクルの再構築を急げ

ー再処理技術の確立・維持・発展を目指してー


エネルギーシンクタンク株式会社 代表


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1.経緯

資源のない日本が太平洋戦争に突入せざる得ない状況に陥ったのは、直接的には米国対日禁油政策であった。戦後の1950年代は水主火従で復興、1960年代は増大する電力需要に対応するため石炭火力が中心の火主水従の時代、その後中東の石油資源の確認と採掘技術の進歩と大型タンカーの実用化で火力は原油へシフト。これにより、高効率火力発電所が多数建設され世界的にも安い電力を供給し高度経済成長に一役を担った。
オイルショック後の1980年代は、原発の計画的建設とLNG発電、石炭火力による脱石油政策を進め、エネルギーの安定供給と低コスト化がJapan as No.1の年代を陰で支えた。
しかしエネルギー資源のないことに変わりはなく、原子力利用が大きな国の方針として認識され、ウラン資源もないわが国は1967年に再処理によるプルトニウム(Pu)利用(核燃料サイクル政策)も国策として取り上げられ、以来研究開発と事業化が進められてきた。核爆弾の原料となり得るPuを、たとえ平和利用にしても米国は核拡散防止から非常に危惧の念を持った。当時、ドイツとわが国が資源確保の観点から再処理の具体化を進めていたが、ドイツは核拡散防止技術の開発に失敗した。わが国はPNC(動力炉・核燃料開発事業団、現日本原子力開発機構JAEA)が独自の技術開発でPuのみの単体抽出でなく、混合酸化物(UとPu酸化物の混合体、MOX)で取り出すマイクロ波混合転換技術を確立し、国際核燃料サイクル評価(INFCE)による国際原子力機関(IAEA)評価を踏まえた日米交渉の末、非核兵器国として唯一再処理事業を行うことが国際的に認知された。こうした経緯のもとで、日本核燃料株式会社(JNFL)の六ヶ所再処理施設(RRP)の建設が認められた。
核兵器国(米露英仏中)以外で濃縮ウラン製造から再処理までの核燃料サイクルを認められている唯一の国であり、且つ核拡散防止を踏まえたIAEAのフルスコープ査察を完全に実施している数少ない国である。

2.現状

RRPは東日本大震災の深い反省を踏まえ制定された新規制基準に基づく、耐震条件の見直しや過酷事故防止対策などの安全審査が進行中で、再起働までさらに2年程度は必要と推察される。
RRPは、技術的にはフランスの導入技術をベースとしているが、着工以来20年余りが過ぎ、この間、種々のトラブルを経験し、人材も育ち、わが国独自の核拡散防止に貢献するMOX形態での最終製品化と、わが国独自の高レベル廃棄物(HLW、ガラス固化体)の運用実績をこれから積む段階にあり、着実な操業が見込まれる。併せて、日本原子力研究開発機構(JAEA)の核ゴミ処理用(減容化と短寿命化)に必要な分離技術の実用化研究の強力な推進が、人類的課題解決の視点からも望まれる。
しかし福島原発事故後既に4年が経過し、操業開始まで今後更に最低2年程度掛かると見込まれる。この停止期間中プラントでは保守作業しか行われず、現場の技術力の低下は避けられない。再処理事業は主工程が化学プラントで経験が重要な部分を占める。早期操業開始を切望と研究開発の継続が強く望まれる。特に長期展望に立った人材に確保、訓練と育成が重要である。この為にはプラント及び核のゴミ処理を含めた研究開発を推進するためにも強固な経営基盤が必要である。
従来、国策民営の枠で我が国の原子力は位置付けられ、本来的に国が所有すべきPuを民間が所有する方式を米国が容認してきたが、民営の意味が電力自由化に依り大きく変質している。このような状況下で、JNFLの株主である電力会社の性質も、短期利益誘導型の純民間経営が強く求められ、核燃料サイクル含めた原子力事業形態も、従来の国策民営から変らざるを得ない可能性が高い。
核燃料サイクルは種々の議論があるが、温暖化問題が人類的課題としてクローズアップされている今日、エネルギーの安定供給が国家の安定にも関係する以上、今後経済成長が見込まれるアジア地域では、中国注1)、韓国、インド、東南アジアを中心に原子力利用は大きく拡大すると見込まれる。アジア地域で、核燃料サイクル分野の技術と管理体制が既にできているわが国の原子力利用方式は、重要な役割を果たすと期待される。
注1)
中国は核兵器国で核拡散防止の制約はない。

3.今後の在り方

経営的な観点でみると、現在、民間電力がLWR用ウラン燃料の手当てからPuを含むMOX燃料製造や使用済み燃料の保有、再処理の実施、さらには高レベル廃棄物の処分まで、民間電力会社の責任になっている。また再処理設備は、民間電力会社が共同出資した民間企業であるJNFLが所有し、操業を担っている。
しかし電力の総括原価の廃止、自由化に伴い、電力会社の経営基盤は従来と異なり、短期利益重視の経営に変わる可能性が高い。JNFLは、電力会社が主要株主である。一方再処理事業は、大規模(数兆円)な設備投資を行い、長期間(40年)の操業により投資資金を回収し成立する事業であり、この間、安定的な運転と盤石な経営基盤が求められ、公営的事業とする事が適切である。
一方将来的な再処理技術開発はJAEAが継続的に研究開発を進めているが、福島原発事故以降活動は大幅に低下している。また再処理技術の開発は現場の経験を踏まえることが要であり、今後遅れを取り戻すためにも組織上、JFNLと同一機関で開発を一体的に進めることが強く望まれる。
国際的役割について、将来的に原子力技術を維持出来る国は、先進国では米仏日露に限られている。エネルギー資源の乏しいアジアにおいて、我が国がエネルギー安定供給の一翼を担う技術とエネルギー政策のプレゼンスを明示することが大きな国際貢献になると考える。また核拡散防止の技術的、制度的仕組みが確立した唯一の国である。この視点からも、日米原子力協定の延長は必須である。

4.纏め(事業主体の再編)

 資源のないわが国で、国産エネルギー資源である核燃料サイクル事業の技術基盤は既に出来ている。今後求められているのは、経営基盤を強化し、JNFLのRRPを順調に稼働し実績を積み、加えてPu管理の透明性とその利用の成果を、アジア諸国にも示すことである。
 2018年に予定されている日米原子力協定の改定を進める上からも、JNFLの経営基盤を強化すると共に、将来必要とされる核のゴミ処理技術の実用レベルの開発をJAEAと一体化して推進でき、一層明確にPu管理責任の責任を負う「公社的(半官半民)事業体」への再編(法制度含め)を急ぐことが強く望まれる。

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