内閣府「再エネタスクフォース」の珍事、提出資料に中国企業マーク


経済記者。情報サイト「&ENERGY」(アンドエナジー)を運営。

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河野太郎内閣府特命担当大臣

 内閣府の「再エネ再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」で、奇妙な出来事があった。3月22日に30回会合がオンラインで開催され、そこで公開された委員提出の資料に、中国企業の「国家電網公司」のロゴが入っていたのだ。このタスクフォース(TF)は、河野太郎内閣府特命担当大臣の主導で運営され、経産省、電力業界と原子力を敵視する姿勢で知られた。問題の徹底解明が求められる。

内閣府サイエネTFサイト


右上に中国の国営企業「国家電網公司」のスタンプのある資料(3月23日午前)


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「中国国家電網公司」のスタンプが公文書にー事件の経緯

 政府の委員会は開催の当日に、議事録や資料が経産省、財務省などの経済官庁系では公開される。3月22日は金曜日で、同日午後に30回目の会合が開催された。同日中にネットに掲載されたらしい。

 電子文書では、スタンプを入れられる。今回の文書では、こうした場合によく使われる「Adobeアクロバット」では表示されない。しかしAppleのPCなどでは透かしを確認することができる。おそらく官僚も作成者も、前者のみで確認をしたのだろう。上記資料の複数のページに掲載されていた。

 資料は「構成員提言の参考資料集(構成員 提出資料)」という名目で公開されていた。内閣府規制改革担当室は土曜日にもかかわらず、SNSのX上で3月23日に説明を公表した。

 内閣府において事実確認を行ったところ、こちらは同タスクフォースの民間構成員の大林ミカ氏により提出された資料でありました。事務局より大林氏に確認したところ、大林氏が事業局長を務める自然エネルギー財団の数年前のシンポジウムに中国の当該企業関係者が登壇した際の資料の一部を使用したところ、テンプレートにロゴが残ってしまっていたとのことでした。なお、自然エネルギー財団と中国政府・企業とは人的・資本的な関係はないとのことです。念のため内閣府でも確認を行います。

 ちなみに中国国家電網公司は、中国の東北部、河北、華中地域の送配電を担う会社だ。

通称「河野太郎委員会」が中国と関係?

 これは異常だ。同TFは、河野太郎氏が行財政改革担当大臣・規制改革大臣、および国家公務員制度担当大臣になった2020年(令和2年)に作った。彼は一度離任した後に2022年に内閣府特命担当大臣に再任され、再びこの委員会を動かした。河野氏主導で作られたため、通称「河野太郎委員会」と呼ばれる。経産省と電力会社批判に熱心なTFだ。

 構成員の大林ミカ氏は、再エネ・反原発の活動家だ。孫正義氏が震災直後に作った自然エネルギー財団の事務局長を務める。私は何度か会ったが、強い反原発の思想の人で人の話を聞かず、会話が成立しなかった。

 そして、この再エネTFは、再エネを過度に重視して、電力会社に敵対する姿勢を示し、評判は悪かった。さらに太陽光を増やし、発電設備を生産する中国に肩入れする言動があった。経産省の元在籍者は「反政府の立場の人を入れて、経産省と電力会社を攻撃する河野氏の行動はおかしい」との意見を述べていた。

中国政府がエネルギー政策に関与

 そこでこの奇妙な騒動だ。おそらく作成者と内閣府の官僚は気づかなかったのだろうが、中国企業のスタンプが書類にあったということは、「間違い」では済まされない。日本政府の政策に関係する政府内ともいえる人物が、中国企業と関係を持ち、その作成した資料を使って活動をしている可能性が高い。中国企業の意向に沿って政策提言をしている疑惑もある。

 特に、孫正義氏の自然エネルギー財団は「アジア・スーパーグリッド構想」という提案を2013年ごろ出して、アジアの送配電網の一体化を述べていた。中国の送配電会社とその時に関係があったようだ。適切な政策提言ならともかく、外国企業のロビイングをシンクタンクが行い、日本の行政機構に食い込もうとするのは許されない。

 さらに経済安全保障が国策となる中で、このような行動は大きな問題だ。日本は経済安全保障を強化して、中国への技術流出、企業の買収防衛などに関する政策の検討を行なっている最中だ。そして中国政府との親しい関係を河野氏は批判される。再エネの機材は主に中国製だ。

 この委員会を立ち上げ、活用してきた河野太郎大臣には説明責任がある。

 河野氏は3月24日に次のようにXで発言した。

 先ほど報告がありました。チェック体制の不備でお騒がせしたことについて、今後は対策を強化し同じようなことが起きないよう徹底していきます。


河野氏のX

 これだけでは足りない。大林氏と中国企業の関係の実態はどのようなものか。河野太郎氏はこの騒動の真相を説明して、不信に応えてほしい。