緊急提言 【提言2】

—COP21:国際交渉・国内対策はどうあるべきかー


国際環境経済研究所前所長

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吸収源対策▲2.6%は森林吸収対策としてコスト計算せずに、エネルギー起源CO2、その他GHG 排出削減対策で実施するとして計算した場合。他国も同様 図表2:主要国の排出削減目標と限界削減費用(出所:RITE)

吸収源対策▲2.6%は森林吸収対策としてコスト計算せずに、
エネルギー起源CO2、その他GHG 排出削減対策で実施するとして計算した場合。他国も同様
図表2:主要国の排出削減目標と限界削減費用
(出所:RITE)

なお、今回の26%目標の中には二国間クレジット(JCM)による削減は算入されていない。そこで今後、この目標を「水増し」するためにJCMを算入しようという議論が生ずる可能性は排除できない。しかし、次期枠組みにおいてJCMの仕組みが国連公認のオフセット制度として認められるかどうかの目途は立っていない。果たしてJCMによる削減量が我が国の削減量として認められるのかまた、認められるとしてもどの程度認められるのかは未だ予断を許さない。かかる状況の下で、JCMをもって日本の削減目標の数字を水増しすることは、京都議定書交渉の悪夢の再来となってしまう。当時、細目も決まっていない京都メカニズムを盛り込んで削減目標を水増しし、その後の交渉に呻吟したことを忘れてはならない。国際交渉において、「取らぬ狸の皮算用」は厳に避けるべきだ。かつての交渉関係者が現役を去ると貴重な経験に基づく知見が失われ、一から同じ過ちを繰り返すことになるのが、この気候変動交渉における日本の宿痾である。
「高い削減目標を出せなければ国際交渉で持たない」、「野心的な目標値を出せば国際交渉で主導権が取れる」というのも事実に反する。2009年に鳩山内閣の下で90年比25%削減目標を出した際、その場限りの喝采を浴びたかもしれないが、それで国際交渉のダイナミクスが変わったということはなかった。むしろ、上記の通り、日本が「草刈り場」であることを各国関係者に再認識させただけであった。仮に麻生内閣の掲げた2005年比15%削減目標であったとしても交渉は同じ経過をたどったことは間違いない。COP21においても各国のプレッジした数字の大小を巡って交渉の行方が左右されることはありえないのである。

緊急提言【提言3】へ続く

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