所得低迷で増す負担感
― 再エネ賦課金除外の検討を
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
(「エネルギーフォーラム 2026年10月号 2026年10月1日発行」より転載)
夏の電気・ガス補助終了 ・・・・ 負担軽減策の在り方を探る
電気・ガス料金の上昇が続き、家計や企業を圧迫している。断続的に実施される料金補助は9月分で終了。支援策はどうあるべきか。
世界の多くの国でインフレが進んでいる。物価上昇の大きな原因はエネルギーの値上がりだ。2022年のウクライナ侵攻は対ロシア制裁を招き、天然ガスを中心に化石燃料価格を上昇させた。例えば英国の消費者物価指数の上昇率は22年後半に前年比10%を超え、今年のイラン戦争も物価を引き上げている。
エネルギーは、さまざまな道筋を通じて物価に影響を与える。例えば中間選挙を控えた米トランプ政権の懸念材料は、トラック燃料のガソリン価格が原油価格の上昇を大きく上回る比率で値上がりしていることだ。輸送費の上昇が商品の価格を引き上げ、有権者の支持が離れる。
電気料金の上昇も製造現場でのコスト増に加え、照明、冷凍・冷蔵、エアコンなどの費用を通じて物価を引き上げる。例えば、高島屋の光熱費は21年2月期の86億円が25年2月期に123億円まで膨らんでいる。
エネルギー危機による急激な物価上昇がビジネスと家計を圧迫し、景気を後退させるリスクを避けるため、多くの国は急速なエネルギー価格の変動を抑制する政策を実行した。22年のエネルギー危機では、フランス、イタリア、英国は電気料金を直接補助した。家庭用電気料金が1kW時当たり47ユーロセントに達したドイツは、6.5セントの再生可能エネルギー賦課金を減額し、最終的には全額を政府負担に変えた。
日本への影響は欧州ほどではなかったが、電気とガスの使用が増える冬季の23年1月から激変緩和措置が導入され、電気については1kW時当たり7円(低圧)、3.5円(高圧)の補助が始まった。その後、夏季、冬季に補助金が支出されるのが常態化し、今夏は3.5円から4.5円(低圧)、1.8円から2.3円(高圧)だ。
消費額に占める比率は4.4% 恒常的な引き下げ策が不可欠
多くの国は、22年のエネルギー危機時に導入した補助政策をいったん打ち切り、一部の国は今年のイラン戦争を受け政策を再開した。なぜ日本は電気とガス代の補助制度を断続的に続けているのだろうか。その背景には、所得が伸びない日本の家計事情がある。
00年の日本の平均所得は主要7カ国(G7)の中で平均的だった。四半世紀たち、日本の平均所得はG7で最低になり、韓国にも抜かれた。欧州では日本よりも電気料金が高い国が多いが、家計へのインパクトは総じて日本よりも小さいのではないか。電気料金が相対的に高い英国、安い米国との比較で、電気料金が日本の家計に与える影響を考えてみる。
25年の日本の家計調査では、世帯平均の月額消費支出額は26万円だ。電気料金の支払額は、平均すると月額1万1000円だ。ただし、この支払額は補助金を含んでいない。補助金を入れると支払額は1万1500円程度に上昇するだろう。消費額に占める比率は4.4%だ。
日本の家庭用電気料金は今、1kW時当たり約35円程度。全米平均は18.34セント(28円)だ。米国の世帯の平均支出額(24年)は年間7万9000ドルだ。電気料金は1830ドルだ。米国の世帯は住宅が大きいこともあり、平均では日本の2倍以上の電気を使う。それでも支出に占める比率は2.3%だ。
英国の家庭用電気料金は1kW時当たり約0.36ポンド(約75円)。日本の2倍を超える。英国の家庭の週平均支出額677ポンド(25年度)に占める電気料金は20ポンド、3%だ。日米英の家計統計の基準が異なることと、天然ガスの利用が多い英国の家庭では電気以外の燃料費が大きいなどの事情はあるが、世帯所得が低迷する日本の家庭に電気料金の負担は重荷になっている。電気料金の家計への影響が相対的に大きい日本では、支援政策は必要だ。日本の電力消費の3分の2は、産業、業務、商業部門だ。電気料金は家計だけでなく、ビジネスにも大きな影響を与える。
予見性がなく、支援額もその都度変動する政策よりも、恒常的に電気料金を引き下げる政策が望ましい。ドイツのように再エネ賦課金を電気料金から除外することも検討されるべきだ。消費税を上回る1kW時当たり4.18円の負担は、家庭にも企業にも軽くはない。












