カリフォルニア州の電気料金はなぜ高い?
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
カリフォルニア州は、ガソリンの値段から電気料金までエネルギーに係わる物価が高いことで知られる。10月18日のサンフランシスコのガソリンスタンドでのレギュラーガソリンの価格は、1ガロン当たり6.56ドルだ。日本円に換算すると1リットル当たり約270円になる。ちなみに、写真では6.55 9/10と表示されているが、これは価格を安く見せる手法で、四捨五入すれば6.56になる6.559の表示を、1セント安く見せる方法らしい。
全米平均価格4.3ドルと比較すると随分高いが、これには理由がある。米国の製油所は、原油の主生産地であり、海外からの原油の輸入に有利だったメキシコ湾岸に多くあり、西海岸にはあまりない。人口もガソリン需要も大きいカリフォルニア州は、州外から大量のガソリンを持ってくるしかない。
では、電気料金はなぜ高いのだろうか。今年7月のカリフォルニア州の家庭用電気料金は1キロワット時(kWH)当たり33.61セント、53円になる。工業用などを含めた平均でも30.12セントだ。ハワイ州の家庭用電気料金48.0セント、全消費者の平均価格34.51セントは全米一高いが、それに次いでカリフォルニア州が高い。全米平均では家庭用が18.31セント、全消費者平均が14.99セントだ。カリフォルニア州の料金は全米平均のほぼ2倍になる。
カリフォルニア州の家庭用電気料金は、この数年間大きく上昇している。その理由は何だろうか。10月下旬の訪米時に面談した、カリフォルニア大学バークレー校のエネルギー・環境政策の教授の意見は、カリフォルニアでは電力需要が増えていない一方、固定費が増えており、1kWh当たりの料金は当然上昇するというものだった。教授は、例えば電力需要が大きく増えたノースダコタ州では電気料金が下落したとし、需要増と電気料金の上昇には相関関係があるという図も示した。同じバークレー校の異なる研究者は、太陽光発電設備の導入に伴う費用負担も電気料金を引き上げたと指摘しているが、料金の上昇の要因は多くあるということだ。
今回の訪米では、カリフォルニア州北部を供給エリア(図-1)とするパシフィック・ガス・アンド・エレクトニック(PG&E)も訪問したので、同じ質問をした。大きな二つの理由があるとの説明だった。一つは太陽光パネル導入支援に2023年まで用いられた促進策だ。この政策では太陽光パネルを導入した家庭は、送配電に係わる費用支払いを免除された。太陽光を導入していない消費者が、その費用を負担することになった。制度は2023年4月に修正され、現在太陽光設備を導入する際には、送配電の費用負担が求められる。もう一つは、山火事の対策費だ。カリフォルニア州では送電線からの火花により山火事が発生することがある。電力会社は、送電線の近辺の木を伐採するなどの対策を強いられているが、その費用は電気料金で回収される。
カリフォルニア州議会法制調査局が、2025年1月に電気料金に関する調査報告書を出し、電気料金に関し詳しい説明をしている。その中では、2023年までの期間でもカリフォルニアの大手3電力の電気料金の上昇率は全国平均を上回っていることが示され(図-2)、料金に影響を与える事象と料金への影響の大きさも示されている。
それぞれの事象の一般消費者の料金に占める比率は以下の通りだ(2023年の数字)。再エネ導入により、送電線の増強も必要になったが、その費用はここには含まれていない。間接的な影響額もかなりある。
太陽光発電のコスト負担 11-20%
山火事 7-13%
気候変動対策 4%
低所得者の電気料金支援制度(CARE) 2-4%
電力会社により比率は異なるが(図-3)、再エネ導入、温暖化対策もかなりの影響を電気料金に与えているようだ。影響が大きくなってから対策が取られているが、すでに導入されている政策の影響が直ぐに消えるわけではない。政策導入時には将来の影響をよく見極めることが重要なようだ。同様の指摘は、当初ひと月コーヒー一杯分の負担で再エネ設備が増えるとの謳い文句で始まった日本のFIT制度にも言えそうだ。
旗振りをした菅直人元首相、あるいはソフトバンクの孫正義氏は、消費税よりも金額が大きくなり、消費者に負担を強いるFITの負担額について、どう考えているのだろうか。家庭のみならずエネルギー多消費型産業を中心に産業界にも影響を与えたが、特定の事業者は利益を上げた。炭素価格の負担もそろそろ始まり、産業界の負担はさらに増える。FIT制度の根本からの検討も必要な時期ではないか。

















