再エネ実践講座
~大規模太陽光発電(メガソーラー)事業の展望


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


 7日(月)から冬学期が始まり、初回の講義では、環境エネルギー問題の総論の解説と授業のガイダンスを行いましたが、いよいよ2週目からはテーマ別に授業を行っていきます。15日(火)、全学自由研究ゼミナール『再生可能エネルギー実践講座』は、大規模太陽光発電(メガソーラー)事業がテーマです。この講座は“実践“というその名の通り、再生可能エネルギー技術の基本とともに、実践的な事業における知見を学びます。各回、ビジネスの世界で活躍されるゲスト講師をお招きします。

 今回は、システムインテグレーターのリーディングカンパニーであるNTTファシリティーズ・メガソーラー事業部長で東京工業大学共同研究員の田中良さんをお迎えしました。まず私から、昨年7月1日から固定価格買取制度が始まり、これまで住宅市場を中心だった日本の太陽光発電市場が、10kW以上の中規模から1MW以上の大規模発電が急成長している状況を少し話し、田中さんに具体的に踏み込んだ話をしていただきました。太陽光発電を取り巻く地球環境や東日本大震災が与えてくれた教訓、再生可能エネルギーの積極的な利用が求められている現状について、また太陽電池や太陽光発電システムの基本原理について解説していただきました。

「メガソーラー事業」の導入事例や制度などに関する実践的な話

 

 太陽光発電事業がどのような制度設計のもと行われているかというと、実にさまざまな法律が複雑に入り組んでいます。土地利用関連だけでも、国土利用計画法、都市計画法、農地法、農業振興地域の整備に関する法律、森林法、河川法、道路法、文化財保護法、土地収用法、借地借家法などがあります。太陽光普及のために緩和された規制としては、工場立地法、建築基準法、都市計画法、電気事業法などがありますが、農地転用や電気保安関係などいくつかの項目で、早急に緩和を求めたいといったお話もありました。大規模太陽光発電システム(メガソーラー)の国内外の事例から、世界各地でかなり大規模なメガソーラー建設が進んでいることもわかりました。太陽光発電の事業性や経済効果の試算からは、将来発展性が高いことが伺えます。

 先日、経済産業省資源エネルギー庁が、平成24年7月1日から平成25年6月末までの1年間に導入された再生可能エネルギー設備容量が366.6万kWになったと発表しましたが、その内、太陽光発電の導入量は10kW未満(住宅)が137.9万kW、10kW以上(非住宅)は212万kWでした。導入された再生可能エネルギー設備容量の実に9割以上が太陽光発電です。しかし、設備認定容量は10kW未満の太陽光は163.3万kW、10kW以上の太陽光は1975.5万kWもあり、実際に稼働しているのは16%にとどまっているという実態もあります。なぜ稼働(発電)が遅れてしまっているのか、問題の背景についても考えました。

 講義では、できるだけ学生たちに感想や疑問、また自分の考えを積極的に出してもらいたいと思っています。後半は、東大OBで田中さんの下で実証や技術開発に携わっている白田さんにも参加していただき、私がナビゲートしながら質疑応答を行いました。

太陽光発電事業は儲かるのか?
太陽光発電は周辺環境への影響はないのか?
太陽光そのものはクリーンだが、太陽光発電の素材が今後不足することはないのか?
太陽電池の寿命は?
-太陽光発電は他のエネルギーと組み合わせて、将来的にはどのような展開が期待できるのか?

など、学生からは次々に質問が出ました。

 それぞれの質問に対しての回答を抜粋すると、

今の段階は普及拡大を図るため、太陽光発電事業における儲かる仕組みをつくっている。昨年からものすごい勢いで成長しているのは事業性があると判断されているからである。
家庭レベルでは音は気にならないが、メガソーラーのように規模が大きくなるとPCSの騒音をいかに小さくするかが課題としてある。業界全体の課題として、メーカーなどと協力して解決に向けて努力している。
太陽光発電の主な素材であるシリコン自体は地球上の資源として大量に存在し枯渇することはない。しかし今後普及拡大していく状況を考えると、十数年後にはモジュール等のリサイクルやリユースの取り組みは必至。実証研究はすでに始まっているが、太陽電池の種類はさまざまであることから、適切な処理方法が必要になる。
“ジェネシス計画”という、地球上を太陽光発電システムのネットワークでつなぐ壮大な構想がある。これが実現できれば地球上のどこかは晴れているので、広範にエネルギーの安定供給は可能になる。また太陽電池で水素エネルギーを作ることも可能だろう。水素エネルギーで燃料電池を動かすなど、太陽光発電と組み合わせてエネルギーの安定供給に貢献できるのではないか。
シリコン自体は何十年も使える素材だが、配線材などの耐久性の問題から30年が今の太陽電池の寿命と考えていいのではないか。

 他にも書ききれないほど、熱心なやり取りになりました。具体的なビジネスとして太陽光発電の展望や課題は何なのか、再生可能エネルギーが地球環境に対してどのような貢献ができるのか、またライフサイクルまで考えるとどんな負荷があるのか等、学生にとって教科書では学べないさまざまな知見が得られたのではないかと思います。とても充実した授業でした!『再エネ実践講座』、次回は地熱発電がテーマです。

 『再生可能エネルギー実践講座』とともに、今学期は『エネルギー科学概論』を担当しています。こちらの講義は、17日(木)が初回でガイダンスを行いましたが、3、4年生の後期課程の学生が対象です。2回目となる24日(木)の講義は『エネルギー問題とコミュニケーション』をテーマに、私が講義を行う予定です。冬学期がスタートし、これまでに増して忙しくなりましたが、学生たちの顔を思い浮かべながら、どんな講義をしようかと練り上げていくプロセスは有意義で楽しくも感じています。彼らの考え方に触れながら、ともに学び合えるような授業にしたいと思っています。


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