余りにも非常識な原発比率の選択肢案の評価

自然エネルギーの利用を原発廃止のための条件とすべきでない


東京工業大学名誉教授

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 いま、福島原発事故以後の新しいエネルギー政策を創るなかで、政府は、原発の位置づけを発電量の比率の値で表わして、その目標値を決めようとしている。6月28 日、政府のエネルギー・環境会議が、2030年時点における原発比率(国内発電量合計の中の原子力の比率)について、図 に示した3つの選択肢案を、付表に示す評価データとともに政府案として発表した。政府は、世論の動向を考慮しながら、新エネルギー基本計画のなかでこの中のどれを選ぶかを、今夏(2012年8月)までに決めるとしている。

図 政府により提案された(2012 年6 月28日)2030年の原発比率の選択肢案
(朝日新聞6月29日 朝刊のデータを基に作成)

「ゼロ」;できるだけ早く原発をゼロにする
「15」;原発を40 年で廃炉にする
「20~25」;原発依存を減らすが使い続ける
「現状」;2010 年度

付表 原発比率3つの選択肢における家計への影響等の評価データ
(2030年の予測値)
*1;
各選択肢は、図参照
*2;
電気代とGDP への影響は4調査機関の試算の上限と下限、電気代は2人以上の世帯の平均。温室効果ガス排出量は1990年比の値
*3;
カッコ内の数値は、一般家庭の電力使用量を月300 kWh として、月間電気料金の値から筆者が計算した電力料金(円/kWh)