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原子力損害賠償法の改正に向けて③


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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現行の対応スキームの整理

 現在、原子力損害賠償がどのようなスキームにおいて行われているのか、全体像がつかみづらい状況になっている。東京電力の電気料金値上げに関連して「事故の補償費用も含まれているのではないか」といった声もよく聞かれるため、今回は現行の対応スキームを整理しておきたい。

 福島原子力発電所事故の賠償責任については、事業者である東京電力が「一義的に負う」こととされた。しかし、その額が賠償措置額を超えることが明らかであるため、国は原賠法第16条に定められる国の「援助」を具現化するものして、平成23年8月10日、「原子力損害賠償支援機構法」(以下、「機構法」という)を公布・施行した。機構法が審議された第177回通常国会においては、会社更生法による東京電力の法的整理についても当然議論の対象となった。しかしながら、

賠償額のみならず廃炉関連費用もどこまで膨らむのか不透明であるなか、会社更生法による「再建」が実質的に無理だと判断されたこと。
(5月9日その変更申請が認可された、東京電力と原子力損害賠償支援機構に よる「総合事業特別計画」は、要賠償額を2兆5,462億7,100万円、廃炉関連費用については、東京電力による合理的見積もりの範囲内で9,002億円、米国スリーマイル島原子力事故を参考に算出された推計値では1兆1,510億円、廃止措置終了まで30年かかるとする)
現行の法律では、被害者よりも社債権者保護が優先となってしまうこと。
(電気事業法第37条は、「一般電気事業者たる会社の社債権者(中略)は、その会社の財産について他の債権者に先だって自己の債権の弁済を受ける権利を有」し(第1項)、その「順位は、民法(中略)の規定による一般の先取特権に次ぐものとする」こととしており、被害者よりも社債権者保護が優先されてしまう。これでは原賠法の目的の一つである被害者保護が十分に図られない事態になる。)

などの理由により見送られた。



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