執筆者:澤 昭裕

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国際環境経済研究所前所長

  • 2012/11/14

    核燃料サイクル対策へのアプローチ

    原子力問題の本丸—バックエンド問題

     原子力問題のアキレス腱は、バックエンド(使用済核燃料への対応)にあると言われて久しい。実際、高レベル放射性廃棄物の最終処分地は決まっておらず、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」はトラブル続きであり、六ヶ所再処理工場もガラス固化体製造工程の不具合等によって竣工が延期に延期を重ねてきている。 続きを読む

  • 2012/10/12

    原発再稼働の現場(大飯原発を例にして)

    (共著:国際環境経済研究所主席研究員 竹内純子)

     原子力発電所の再稼働問題は、依然として五里霧中状態にある。新しく設立された原子力規制委員会や原子力規制庁も発足したばかりであり、再稼働に向けてどのようなプロセスでどのようなアジェンダを検討していくのかは、まだ明確ではない。 続きを読む

  • 2012/08/20

    電力供給を支える現場力①
    —関西電力海南発電所の苦闘—

     先日、和歌山県海南市にある関西電力海南発電所を見学させていただいた。原発再稼働がままならない中で、火力発電所の重要性が高まっている。しかし、一旦長期計画停止運用とした火力発電ユニットは、設備の劣化が激しいため、再度戦列に復帰させることは非常に難しい。
    続きを読む

  • 2012/08/07

    ようやく、現実的エネルギーミックス選択肢が提示された!
    —政府の選択肢は案にならず―

     6月末に政府のエネルギー・環境会議が示した2030年のエネルギー選択肢は、その内容や背景が明らかになるにしたがって、専門家の間では、経済の史的事実や現在の実態、技術の現状と見通しなどを無視したひどいものだという認識が広がってきていた。産業界もこうした認識を共有し、こうした選択肢では日本経済の活性化が図られるどころか、空洞化が進み基礎的な経済基盤が崩れるという懸念を示してきている。 続きを読む

  • 2012/07/09

    温暖化政策、待望の書刊行される!

     温暖化政策に関わる者すべてが待望していた書が刊行された。英文による日本の政策提案である。
     編著者は山口光恒 東京大学先端科学技術研究センター特任教授。同教授は、温暖化政策の世界的学者であり、IPCCの報告書のリードオーサーはもちろん、日本国内でも政策形成に関連するさまざまな場で委員などを務められている。その権威が編集された新刊の目次をご覧いただきたい。 続きを読む

  • 2012/07/03

    エネルギー政策の「国民的議論」に向けて

     「国民的議論」とは便利な言葉だ。しかし、実際のところ何を表しているのか不明確。そのうえ、仮にそれに実体があるとしても、その集約方法についてコンセンサスがあるとは思えない。
     特に、エネルギー政策のように、踏まえるべき視点やデータを消化することが専門家でも難しいイシューの場合、大衆討議的あるいは国民投票的な方法が意思決定になじむのかという本質的問題がある。 続きを読む

  • 2012/06/19

    活字は「しゃべり」に勝る

     エネルギー政策についての原稿をようやく書き上げた。今年8月10日より、新潮新書から順次発売される予定だ。宣伝になってしまうが、ぜひご一読いただければ・・・。

     昨年の東日本大震災を境に、それまで世の中の関心事だった地球温暖化問題はどこかに消えてしまった。それに代わってお茶の間の話題になったのがエネルギー問題である。 続きを読む

  • 2012/05/30

    再生可能エネルギー固定価格買取制度
    —欧州の末路—

     日本では、現状さながら再生可能エネルギー狂想曲である。固定価格買取制度の買取年数や買取価格が決まり、参入企業もプロジェクトメイキングに忙しい。

     ところが、本家本元の欧州では、同制度のほころびが目立ち始めた。電気料金は上がるわ、グリーン産業は育つどころか中国に全部持って行かれて国内の倒産が目立つわ、とうとう制度自体の抜本的な見直しが進められ始めた。  続きを読む

  • 2012/05/01

    再稼働に向けて-政府と原子力コミュニティの宿題

     先日、日本の原子力関連産業が集合する原産会議の年次大会が催され、そのうちの一つのセッションで次のようなスピーチをしてきた。官民の原子力コミュニティの住人が、原子力の必要性の陰に隠れて、福島事故がもたらした原因を真剣に究明せず、対策もおざなりのまま行動パターンがまるで変化せず、では原子力技術に対する信頼回復は望むべくもない、という内容だ。 続きを読む

  • 2012/04/03

    再生可能エネルギーは本当にコストダウンするか?

     前2回にわたって、コスト等検証委員会の試算やプレゼンの図について、いろいろ問題点を指摘したが、最後に再生可能エネルギーに関連して、残る疑問を列挙しておこう。

     再生可能エネルギーの技術開発の進展によるコストダウン・シナリオは学習曲線に基づいているが、この根拠がどの程度確からしいものなのか判然としない。現に米国では風力発電のコストは近年になって上昇してきている。 続きを読む

  • 2012/03/26

    曲解だらけの電源コスト図made byコスト等検証委員会

     前回予告したように、エネルギー・環境会議コスト等検証委員会での議論の問題点を考えてみよう。

     もともと低すぎるではないかとの批判が強かった原子力発電のコストを再検証しつつ、再生可能エネルギーの導入を促進するために、再生可能エネルギーのコストを低めに見積もるという政策的結論ありきで始まったのだろうと、誰しもが思う結果になっている。 続きを読む

  • 2012/03/16

    ごあいさつがわりに、今感じていることを

     ブログ、第一回目だ。

     文章はいろいろなメディアに発表してきたし、ツイッターでも発信している(@sawaakihiro)が、ブログというものは書いたことはない。なので、どうしても肩に力が入ってしまうし、ぎこちない文章になりそうだ。そこで、まとまったものを書くより、ここでは時事的なネタにコメントをすることにしようと思う。 続きを読む

  • 2012/03/14

    ブログを始めます

    国際環境経済研究所(IEEI)所長の澤です。
    この度のIEEI Webサイトのリニューアルを機に、ブログをスタートすることにいたしました。 続きを読む

  • 2011/11/08

    米国グリーン・ニューディール政策破たんの実相

     2009年、米国はオバマ大統領が掲げた「グリーン・ニューディール政策」に沸いた。その後、各国が環境政策と雇用対策を融合させるコンセプトとしてこれを取り上げ、成長戦略として期待した。

     しかし、2年経った今、米国の現状はどうか。「グリーン成長」は実現しないまま、厳しい雇用情勢が継続しており、オバマ大統領の支持率も低下している。追い打ちをかけるように、重点支援した太陽電池メーカーが破たん。支援が妥当・適切だったかが政治問題に浮上している。

     さらに、再生可能エネルギー普及の支えとなってきた債務保証制度が9月末で終了、12年末には風力発電に対する発電税控除の優遇措置も期限を迎えるなど、諸制度が尻すぼみだ。優遇制度が縮小する一方で、経済原理を持ち込む動きも出てきた。例えば、今年前半のエネルギー法案に関する議論では、再生可能エネルギー支援にリバース・オークション(費用対効果の高いものから優先的に採用)が提案された。いつの時代も国家の政策目標と市場原理の狭間で、いわゆる「グリーン産業」は、大きなビジネスリスクを抱え込んでいるのである。

     米国3大電力会社の一つでシカゴに拠点を置くエクセロン社のジョン・ロウCEO(最高経営責任者)へのインタビューを基に、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(10月22日-23日ウィークエンド版)が、これに関連した記事を掲載している。(http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204618704576641351747987560.html)

  • 2011/10/24

    グリーン雇用という「神話」

     温暖化問題で論争の的になっている一つは、いわゆる「グリーン成長」が可能かという点である。具体的には、温暖化政策を進めること(主に規制的手段)で雇用を生み出し、経済発展をもたらすことができるかということだ。

     英国政府はグリーンエネルギー(太陽光や風力など。ここでは水力は含めない)を推進しているが、その政策目的として、エネルギーの安定供給に加えて雇用の創出を挙げている。しかし、本当にそれが可能なのか、懐疑的な見方が英国内から出てきた。エジンバラ大学の経済学者であるゴードン・ヒューズ(Gordon Hughes)教授が最近公表した論文(The Global Warming Policy Foundation GWPF Report 3)は、現実のデータ分析に基づいて、「グリーン雇用は神話だ」と結論づけている。この論文は、単に英国にとどまらず、日本を含む各先進国が同様の経済成長戦略を政策としていることから、大きなインパクトを持つだろう。興味深い分析内容を以下に紹介していく。

  • 2011/07/06

    エネルギー政策の見直しに向けて

     民主党政調の成長戦略PTのエネルギー政策有識者ヒアリングに呼ばれ、6月30日8時からプレゼンしてきました。民主党の中での「常識」と異なる点がいくつも含まれていたようで、出席議員の方々からもさまざまな質問を受けました。

     中でも、次のような質問が印象に残りました。

    質問:原子力国有化は難しいと(澤は)言うが、どのような根拠か。

    回答:国直轄の事業として、原子力発電所を運営できると思えない
    国は、原子力から撤退しないのであれば、原子力賠償措置法における事故時のリスクをより積極的に取ることで関与を増やすべきだが、その政治的意思が見えない。それゆえに国有化議論を一回はこなす必要がある。

    質問:電力供給工程表作成は賛成だが、供給力だけではなく、需要についての綿密な見通しが必要ではないか。これまでの電力会社の見通しは当たった試しがない。

    回答:確かに、需要想定については、これまで機械的に設定してきていたが、これから数年の間は需要見通しについて、相当きめ細かく積み上げる必要がある。また料金オプションとしても、需要の弾力性を高めるような仕組みを検討すべき時期。

    質問:自然エネルギーを増やすための固定価格買取は必要だし、イノベーションも期待できる。

    回答:原子力も政治的意思と資金注入を長年やって初めてここまでのシェアを得るようになった。風力にしても太陽光にしても、立地地域における抵抗はだんだん大きくなると思われる中、長年にわたって政治的・財政的資源をつぎ込み続ける覚悟はあるか。さらに固定価格買取は、参入事業者間に競争を促進するスキームではなく、新技術を開発するインセンティブがない。

    質問:化石燃料確保が重要というのは同意する。しかし、コストはアップする。具体的にはどのように対処すればよいか。

    回答:ユーザーとして大規模であることが重要な交渉力になる。また外交的にも戦略的に立ち回る必要があり、政府がもっと前面に出る必要がある。コスト的には、今後主流になると思われる天然ガスの調達契約を日本に有利なものとし、価格を低減していくことが戦略目標になる。

     昨今の政府のエネルギー政策について批判的な姿勢を取っている筆者をヒアリング対象に呼んでいただき、じかに与党議員の方々にお話しできる機会が与えられたため、その点は非常にありがたいと思いました。こうした機会は、筆者にとってもさまざまな見方や関心に触れるいいチャンスとなりました。

     今後ともこうした場があれば、またこのWEB上でご報告します。

    資料:成長戦略PT資料(エネルギー政策の見直しに向けて)(PDF)

    記事全文(PDF)

  • 2011/05/19

    COP17に向け先進国への資金要求強める新興途上国

     カンクン合意から5カ月が過ぎ、今年末の第17回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)に向けた動きが各国で活発になっている。なかでも、新興途上国の動きは急だ。2月最後の週末には、BASIC(ブラジル、南アフリカ、インド、中国)とアルゼンチンなどいくつかの途上国が閣僚会合を開催。この会合には、COP17開催国である南アフリカも加わったため注目を集めたが、インドからラメシュ環境森林大臣、中国の解振華国家発展改革委員会副主任、ブラジルのテイシェイラ環境大臣、南アフリカのモレワ水・環境大臣などが名を連ねた。

     合意された内容、あるいは各国から主張された内容は次の通りだ。

    1.京都議定書第二約束期間への先進国のコミットメントや、途上国への人材育成をはじめとする支援約束などの状況について、国際的なアセスメントを求める。

    2.京都議定書第二約束期間への先進国によるコミットメントは、野心的な排出削減と排出量のピークアウトにとって重要。COP17で、先進国は第二約束期間についてコミットし、法的拘束力がある新たな数値目標が第一約束期間の終了後すぐに発効するよう(約束期間にギャップがないよう)にすべきである。

    3.途上国のMRV(測定・報告・検証)措置は、先進国に適用されるものよりも煩雑にならないようにすべきである。

    4.コペンハーゲン合意では、先進国は早期資金として2010~12年の3年間で300億ドルの支援を約束したが、実際に支払われた金額は10億ドルに届いていない。資金が必要な国に供給されていないことを強く問題視する。

    5.技術移転には知的財産権問題の解決が重要(カンクン合意では一旦論点から外れていた知的財産権問題が復活)。また、技術メカニズムと資金メカニズムとの直接リンクが重要。

     これらを見てわかるように、主要途上国は先進国に、京都議定書の第二約束期間についてのコミットメントを要求しつつ、「資金を早く出せ」と迫っている。

     今や地球温暖化交渉は、環境問題ではなく南北問題、所得再分配問題となりつつある。生物多様性条約についての交渉でも同じことが起こっていたが、先進国にとって気がかりな環境問題への協力を盾に取り、先進国の資金と技術をどれだけ獲得するかが、現在の温暖化交渉の本質なのだ。

     先進国が途上国の要求に、どのように対応するのか。各国とも財政状況は最悪であり、途上国を支援したくとも支援する余裕がない。むしろ、先進国は新興途上国の経済成長の恩恵を蒙って、なんとか不況に至らないよう維持しているのが現状だ。世界全体の資金循環をどうするか。今や地球温暖化交渉は、こうしたマクロ経済・金融問題と表裏一体となっているのである。

    記事全文(PDF)

  • 2011/04/27

    セキュリティに重点を置いたエネルギー政策への転換を

     今回の大震災に伴って実施された「計画停電」によって、私たち日本人が最近忘れていたエネルギー安全保障という問題と真正面から向き合うこととなった。過去2度発生した石油ショックの時以来である。まず日本のエネルギーセキュリティに関する政策の歴史を振り返っておこう。

    脆弱だった日本のエネルギーセキュリティ

     エネルギー資源に関して、日本の特徴はその自給率の低さにある。狭い国土には化石燃料や鉱物資源が乏しく、国家経済や国民生活を支えるために必要な資源の大半は、輸入に頼ってきた。特に第二次世界大戦後の高度経済成長期には、エネルギー種がそれまでの国内炭から輸入石油エネルギー源が移行し、自給率を一層引き下げる要因となった。

     1973年の第一次石油危機では、OPEC(石油輸出国機構)の禁輸措置によって、エネルギーの輸入が途絶するのではないかという危機感や不安感が、国民レベルで沸騰した(実際には価格は急騰したが、物理的な量の不足は生じなかったとされる)。特に、当時は発電電力量の約7割が石油火力によるものだったこともあり、輸入石油が手に入らなくなることによって、ライフラインである電気がストップするのではないかという恐怖が国民を襲った。日本のエネルギーセキュリティ政策は、この時に感じた国民的危機感がその根っこに横たわってきたと言ってよい。すべての出発点がそこにあるのだ。

     78年に第二次石油危機が訪れるに至って、日本のエネルギーセキュリティ政策の基本は、石油依存度(73年当時約77%)の引き下げと政治的に不安定な地域(特に中東)へのエネルギー供給依存度の引き下げとされた。それを実現するエネルギーセキュリティ政策の体系は、石油備蓄のような緊急時対応力強化のほか、需給両面からの中長期的施策が打ち出された。

  • 2011/04/14

    徹底討論:震災後のエネルギー環境政策を問う

     このたびの震災でお亡くなりになった方々に対し心よりご冥福をお祈りするとともに、多くの地域で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

     いまだ被災地の状況は問題山積であり、復興への準備も、まだまだ動きが十分とは言えません。エネルギー供給に関する不安も解決しておりません。当研究所としては、こうしたなかで、ごく短期に解決しなければならない問題とともに、いずれ近いうちに始めなければならない中長期的なエネルギー政策や温暖化政策の見直しについて、他に先駆けて議論を始めることといたしました。

     目の前にある深刻な問題、たとえば福島原発の事故処理、計画停電などのさなかに、中長期的な論点を議論することは憚られるという世の中の雰囲気は十分認識しています。しかしながら、今だからこそ、平素よりこうした政策や技術をそれぞれ立場から企画・実施・研究されてきてられる方々の英知と見識を世に発信していくべきではないかと思い至りました。

     具体的には、当研究所のホームページ内に「震災後のエネルギー政策と温暖化政策を考えるフォーラム」を設置し、各界からのオピニオン・解説・情報などの寄稿を受け付けることとします。種々の論点について、議論が深まった段階で、その論点をより深化させるファシリテーターを募り、ファシリテーターがそれぞれの論点の「編集長」としてさらなる寄稿を一般から募り、議論を深めるという方式を取りたいと思います。

     具体的な論点の候補は以下の通りです。もちろん、これらに縛られることなく、自由にお書きいただいて結構です。

     (1)エネルギー政策や温暖化政策の今後の進め方や基本的考え方
     (2)原子力利用
        1.安全問題
        2.今後のエネルギー源としての考え方
     (3)再生可能エネルギーの可能性と問題点
     (4)化石燃料についての考え方
     (5)エネルギーセキュリティ政策はどうあるべきか
     (6)温暖化への取り組みについて
        1.政策転換の必要性の有無(国際・国内)
        2.企業現場は、どう変化するか
        3.自治体での取組みはどうあるべきか
        4.ライフスタイルの変革や家庭での取組み
     (7)短期的な電力供給・電力需要のマネジメントのあり方
    などです。

     なお、みなさまからの投稿は、当研究所ホームページの「ご意見:お問い合わせ」(http://ieei.or.jp/inquiry/)からお申し込みください。投稿用のメールアドレスをご連絡いたします。みなさまの積極的なご参加をお待ちいたします。

    記事全文(PDF)

  • 2010/12/17

    2011年に向けて新しい議定書案の提示を

     温暖化交渉で今回ほど日本が脚光を浴びたのは、京都議定書ができた1997年の第3回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)以来ではないか。そう思わせるほど、メキシコ・カンクンで開催されたCOP16では日本の話題で持ちきりだった。理由は、会議開催の冒頭、日本は京都議定書の第二約束期間の設定をしないと啖呵を切ったからだ。

     いつまでも削減義務から逃れようとする途上国、排出量取引市場の市況を維持しようとするEU(欧州連合)が京都議定書の延長に傾くなか、日本は「(米国や新興国が削減義務を負わない)京都議定書では温暖化を防げない。新たな枠組みを考えるべきだ」と主張した。

     これまで、日本外交のひよわさに辟易していた産業界のなかには、こうした毅然とした日本政府の交渉態度に胸のすく思いをした人も多かったであろう。現地、カンクンでも
    「よくぞ言ってくれた」
    という評価が大半だった。日本政府は期間中、さまざまな国と二国間会談を行って、日本の立場に同感してくれる“友好国”を増やしていく努力を続けた。

     その甲斐あって最終合意では、日本の立場が相当盛り込まれた決定となり、さらに昨年のコペンハーゲン合意の諸要素を盛り込んだ文書が、米中も入る形で正式に採択された。ここまでくれば、産業界としても快哉を叫びたくなるであろう。