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再生可能エネルギーの主力電源化と電力システムの持続可能性との両立


国際環境経済研究所主席研究員


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1.再エネ普及の目標と現状

 平成30年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」では、パリ協定における削減目標(温室効果ガスを2030年度に2013年度比▲26.0%)と整合した形で、非化石電源比率を2030年度目標として44%とし、うち再生可能エネルギー(再エネ)22~24%、原子力22~20%を目指すこととしている。さらに、今年6月、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定され、「第5次エネルギー基本計画」と整合する形で、2050年に向けたビジョンが示された。この中で、ビジネス主導による非連続的なイノベーションを実現するには、あらゆる選択肢を追求し、柔軟に見直しするとの考えに基づき、再エネと原子力のゼロエミッション比率の引き上げ、カーボンリサイクル、省エネ・電化の推進等、主な戦略・スタンスが示された。
 足下では、固定価格買取制度(Feed in Tariff: FIT)導入以降、再エネ(水力除く)の比率は、2.6%(2011年度)から8.1%(2017年度)まで増加した。このうち、太陽光発電の導入容量は、55,000MWと、世界第3位となっている(2017年度、IEAデータ)。今後、更に再エネの大量導入が進んだ場合の、電力システムの安定性・持続可能性との両立に向けた課題を次項に整理する。

2.再エネ大量導入下のシステム上の課題

 一般に、電力は容易に大量貯蔵できないため、系統全体で瞬時瞬時の需給バランスを一致させる必要性がある。一方で、再生可能エネルギーのうち、特に太陽光発電や風力発電のように、気象条件次第で出力が変動する自然変動電源(Variable Renewable Energy: VRE)は、出力を人為的に制御することが難しい注1)。このように、出力変動を伴う自然変動電源が大量に入ってくることにより、次のような影響があると認識されている。

(1)余剰電力(電力需給ギャップ)の発生(変動性)
 年間のうち、特に電力需要が少ない春秋・年初などの軽負荷期を中心に、出力制御が困難な自然変動電源が増加すると、発電が需要を上回り、需給ギャップが生じることがある。
 実際に、九州電力エリアでは、2018年10月13日に初めて自然変動電源の出力抑制が行われた。これは、優先給電ルール注2)に基づいた対応を行ってもなお、太陽光発電を含めた供給力が、電力需要を上回ることが予想される場合に、出力制御を指令する注3)もので、2018年度で計26回実施された。


九州の電力需給イメージ(2018年10月21日の例)

(出典:資源エネルギー庁資料)

(2)予測誤差(インバランス)の発生(不確実性)
 電力システムの需給バランスを確保するための仕組みとして、日本においては、2016年4月の小売全面自由化以降、計画値同時同量制度が導入された。具体的には、発電事業者や小売事業者は実需給前(1時間前)までに、計画と実績を極力一致させるべく、必要に応じて内容を見直したうえで、計画値(30分値)を提出する。その上で、実需給時点での計画値と実績値の差分(インバランス)は、一般送配電事業者があらかじめ調達した調整力により調整している注4)
 但し、FIT制度が適用されている電源(FIT電源)に関しては、「FITインバランス特例制度」が設けられており、FIT発電事業者の代わりに、一般送配電事業者が前々日(もしくは前日)までに再エネ出力を予測し、その値を発電計画値としている注5)
 これは、発電量の全量を固定価格で買い取ることを前提とするFIT制度との整合を図るため、本来、発電事業者が行うべき発電予測変動の調整を、一般送配電事業者が行うものであるが、自然変動電源については、天候等の予測が非常に難しく、この予測誤差からインバランスを発生させている状況にあり、系統全体のインバランスの大半を占めている注6)
 至近では、2019年1月10日、中部電力エリアにおいて、当日の朝、天候の状況変化による需要の増加・太陽光発電の出力減少が予想され、予備率が▲1.3%と見込まれたことから、他エリアから広域融通を行い、3%以上の予備率を確保できる見通しを得た。前日時点では、高気圧に覆われて日射量が比較的多い予想だったが、高気圧の東進が予想よりも早く、明け方以降は気圧の谷に覆われ、気温と日射量の下振れに繋がった。その結果、太陽光発電の出力減により供給力が減少し、気温低下により需要が増加したのである注7)


1月10日の気温と需要の推移

(出典:中部電力資料)


1月10日の太陽光の想定誤差

(出典:中部電力資料)

 今後、特に太陽光など自然変動電源の導入拡大が進むにつれて、インバランスが更に増大する可能性がある。発電計画と発電実績とのギャップを縮減し、再エネに起因するインバランスを小さくするためには、発電量の予測精度向上に取り組むとともに、FIT電源の発電事業者にもインバランス抑制のインセンティブをもたらす仕組みづくりが必要であろう。

(3)地理的制約
 通常、自然変動電源の資源、即ち風況および日射量の好条件が得られる場所については、その地理的分布が集中することにより、送電線の容量が不足するといった課題がある。また、大規模需要地から遠隔の場合には、送電制約が発生する場合がある。

(4)周波数変動
 電力の安定供給のためには、システム全体で時々刻々と変化する需要に合わせ、短時間で出力調整可能な火力や水力などの発電所の出力を制御し、需要と発電とを一致させることで、周波数を一定に維持している。しかし、出力予測が困難な自然変動電源が増加し、既存の調整可能な発電機では対応できないレベルの大きさになれば、これに伴い周波数が適性値を超過して変動し、需要家の電気機器へ影響を与え、更には発電機のリレーが動作し、解列してしまう可能性もあり、大停電に繋がりかねない。

(5)系統事故時の不要解列
 電力システムの周波数や電圧の変動が生じた際、本来、解列すべきでないにも関わらず、(必要のない)単独運転防止装置が作動し、多数の自然変動電源が一斉に解列した場合、需給バランスが崩れ、この現象が広域で発生すると、大量の電源喪失となり、リレーが作動して負荷遮断(停電)に至ったり、ひいては系統崩壊のおそれがある注8)
 実際に、日本では、2016年度の中部電力エリアにおける幸田碧南線(275kV)、および上越火力線(275kV)のルート故障事故の際、周波数が想定以上に低下する事象が発生し、太陽光発電が解列したとの情報が広範囲の地域で確認された。


幸田碧南線・系統故障後の周波数の応動(周波数回復まで)

(出典:中部電力資料)


幸田碧南線・周波数低下と系統制御実施状況(故障発生直後 15秒間)

(出典:中部電力資料)

 その後の調査の結果、一部の太陽光発電のパワーコンディショナーについて、系統事故時の周波数の変化を敏感に検出、(必要のない)単独運転防止装置が作動し、解列すること、即ち事故時運転継続機能(Fault Ride Through: FRT)を具備していないことが判明した。しかし、この事象が発生するパワーコンディショナーを有する太陽光発電設備は、全国で約110万件もあり、加えて、事故時運転継続機能(FRT)要件は、遡及して適用しない前提で規定化に至った経緯もあり、将来のパワーコンディショナー取替時に、一般送配電事業者が継続的に周知することとされた注9)

(6)電圧上昇
 特に日本では、比較的小規模の太陽光発電が、配電網に多く接続されている。住宅地において、日中の居住者不在により需要が低い時間帯に、太陽光発電が最大出力となることにより、発電が需要を上回った結果、余剰電力が配電網に流れて逆潮流が発生し、場合によっては適正電圧(101±6V)の範囲を超過して電圧が上昇する可能性がある。(この課題への対策については、2018年6月掲載記事「歴史から紐解く再生可能エネルギー」を参照。)

(7)系統事故時の電力系統への影響(非同期性)
 従来の火力発電や水力発電は、系統に直接接続する同期発電機を用いられるのが一般的である。同期発電機は、自転車のダイナモライトといわば同じ原理で、発電機の回転運動を、電磁誘導の原理により電気に変換するものであるが、自転車の速度の増減に伴い、ライトの強さが増減するといった不安定化を回避すべく、電力システムの周波数に対応する速度に同期して回転する。
 例えば、需要に対して発電が不足してシステムの周波数が低下し始めた場合、全ての同期発電機では、これが回転に抗する力(慣性力)として働き、電力システム全体の慣性は、この力に抗して作用することで、周波数の変動が抑制される。
 一方、自然変動電源は、電力変換装置(インバーター)を介して系統に接続するため、系統と回転機との直接的な繋がりはない。このような非同期発電機が増えることで、系統の同期慣性力が低下した結果、系統事故時に電力システムの周波数を維持する能力が低下するおそれがある。


慣性力の違いによる周波数応答の違い

(出典:海外電力、2019年6月号)

3.主力電源化とシステムの持続可能性との両立

 現在、政府において、2020年度末までのFIT法の抜本的な見直しに向け、「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」における議論が始まった。この中で、前述の課題(1)および(2)に関連して、再エネ自身も一定の調整力を具備するとともに、市場等を活用した効率的な調整が行われるよう、適正な調整力の確保に向けた検討を行うこと、および課題(3)に関連して、人口減少に伴う需要減少や高経年化対策等構造的な課題ともに系統制約を克服すること等が示された。
 電力システム上の課題は、自然変動電源の導入のフェーズによって、それぞれ異なってくる。従って、検討にあたっては、中長期的な視点での市場の制度設計・グリッドコードなどの技術基準の整備が期待される。かつては、需要の変動に合わせて、出力制御可能な電源が追従して需給バランスを保っていたが、今後は、制御に限界のある自然変動電源が大量に加わる一方、需要側にもデマンド・レスポンス(DR)やバーチャル・パワープラント(VPP)注10)等、制御可能な要素も増えてくるなど、需給管理の在り方は大きく変わってくる。同時に、発電側から需要側へという電気の流れも、将来は双方向への動きがより進むだろう。
 しかし、こうした変化にかかわりなく、品質(電圧・周波数)の維持、不足電力の供給、非常時やメンテナンス時のバックアップ等を行い、系統全体での安定性を確保していくことに変わりはない。再エネの主力電源化と、システムの持続可能性を両立しうるイノベーションの実現に期待したい。


電力システムにおけるイノベーションの可能性

(出典:資源エネルギー庁)

注1)
再生可能エネルギーの中には、水力や地熱など、自然条件によらず、安定的な運用が可能なものもある。
注2)
火力や揚水、連系線を活用した九州地区外への供給などの対策を先に講じるルールとなっている。具体的には、以下HP参照。
https://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0055/4202/ob3v76j5.pdf
注3)
前日の夕方(16-17時)に、旧ルール事業者(オフライン制御)の出力制御を指令し、即時対応が可能なオンライン制御の事業者に対しては、最新の気象予測を応じて1時間以上前に出力制御を指令する。
注4)
調整に要した費用は、卸電力取引所における市場価格をベースとしたインバランス料金として、発電事業者・小売事業者との間で事後的に精算している。
注5)
正確には、インバランス特例①および③について、一般送配電事業者が計画値を予測している。インバランス特例の類型については、電力・ガス基本政策小委員会(第8回)資料参照。
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/180312_2.pdf
注6)
電力・ガス取引監視等委員会 制度設計専門会合(第25回)資料参照。
https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_system/pdf/025_08_00.pdf
注7)
電力広域的運営推進機関 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会(第36回)資料参照。
https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/2018/chousei_jukyu_36_haifu.html
注8)
系統崩壊を回避するためには、発電機の周波数低下リレーが動作する前に、高速で供給量を増加させる、もしくは一部負荷を遮断(一部地区を停電)する必要がある。前者には、並列中電源のガバナーフリー機能による出力増加、および(隣接エリアからの連系線を介した)緊急融通といった手段がある(停止中の電源は起動に時間を要するため対象とはならない点に留意)。
注9)
電力広域的運営推進機関 電力レジリエンス等に関する小委員会(第2回)資料参照。
https://www.occto.or.jp/iinkai/kouikikeitouseibi/resilience/2018/files/resilience_02_03_01.pdf
注10)
DR、VPPの定義については、資源エネルギー庁HP参照。
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html#tag1

【参考文献】

International Energy Agency (IEA), “The Power of Transformation, Wind, Sun and the Economics of Flexible Power Systems”,
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、「電力の変革 風力、太陽光、そして柔軟性のある電力系統の経済的価値」(日本語訳)、2015年4月
https://www.nedo.go.jp/content/100643823.pdf
International Energy Agency (IEA), “System Integration of Renewables, An update on Best Practice ”,
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、「再生可能エネルギーのシステム統合 ベストプラクティスの最新情報」(日本語訳)、2018年6月
https://www.nedo.go.jp/content/100879811.pdf
International Renewable Energy Agency (IRENA), “Planning for the Renewable Future, Long-term modelling and tools to expand variable renewable power in emerging economies”,
「再生可能な未来のための計画 変動性再生可能エネルギー(VRE)発電を拡大するための長期モデル分析とツール」(日本語訳)、2018年3月
http://www.env.go.jp/earth/report/h30-01/ref01.pdf
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、「NEDO再生可能エネルギー技術白書(第2版)」第9章 系統サポート技術、2014年2月
https://www.nedo.go.jp/content/100544824.pdf


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