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歴史から紐解く再生可能エネルギー

~意外に知らない「電力系統マネジメント」の実際~


国際環境経済研究所主席研究員


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 今回は、「テレビやネットでは、知ることが出来なかった!」との反響を頂いた、関西経済連合会主催の「エネルギーマネジメントについて考える」と題した若い世代や女性を対象としたセミナーの内容について紹介したい。再生可能エネルギー普及に関する課題としては、固定価格買取制度(以下、FIT制度)による国民負担の増加が一番に挙げられるが、今回は、エネルギーにあまり馴染みの無い方を対象に、主に技術的な課題にスポットを当て、その解決策について考えた。

(ⅰ) 電力系統マネジメントの難しさ

 電力ビジネスの特殊性を考えるとき、他のビジネスと圧倒的に異なることの一つに、電気は基本的に「大量に貯められない」ということが挙げられる。従って、電力会社は、関西などのエリア全体の、瞬時瞬時の需要(電気を消費する量)と、供給(電気を発電する量)とを、一致させることで、電力系統のマネジメントを行っている。
 仮に、需要(消費)が増え、このバランスが崩れると、周波数が変動して、需要側の電気機器の運転に影響を与える可能性があり、更に、一定以上基準周波数から離れてしまうと、大規模な停電事故を引き起こす可能性がある。


図1

 従って、電力会社は、日々の電力需要に合わせた電源構成を考え、24時間365日、瞬時瞬時の需要(消費)に合わせた供給(発電)を行うことで、安定供給を実現している。朝の立ち上がりの急峻なカーブが日本の特徴で、このカーブに合わせて、各電源の特性を踏まえたベストミックスによる発電を行っている。


図2

 この瞬時瞬時の需要と供給を一致させる事が、電力系統マネジメントの何より難しい点で、ひいては再生可能エネルギーの課題にも繋がっていく。具体的には、次に、大阪大学大学院工学研究科招聘教授の西村陽氏による講話「電気の歴史と再生可能エネルギーの課題」を紹介しよう。

(ⅱ) 電気の歴史を紐解く

 さて、ここからは、電気の歴史を遡ってみたい。電気と磁気の関係が発見され、今日の発電機と電動機、即ち磁力と電気の関係(いわゆる電磁誘導)が発見されたことにより、人間が電気を管理できる技術として確立したのは約200年前、さらに、電気事業者が誕生したのは約150年前と、電気の歴史は比較的新しい。1879年にエジソンが電球に電気を灯し、日本では1878年に東京工部大学校でアーク灯が点灯された。「電気」は、動力(電磁誘導)、光(蛍光灯やLED)、熱(ヒートポンプ)、情報(電圧・電流制御)というように、他のエネルギーと比べて応用範囲が圧倒的に広く、また、利用時においては、異常検知時に極めて短い時間で回路を遮断できる特性があり、化石燃料に比べて安全という利点を持つ。このように、広い応用範囲と優れた操作性・安全性により、「電化」が進み、それにつれて文明が発達した。
 ここで、20世紀初頭の電気事業の様子として、1903年に大阪・天王寺で開催された内国勧業博覧会の様子をご覧頂きたい。

出所:西村氏講演資料

(出所:西村氏講演資料)

 現在では考えられないかもしれないが、当時、財閥が鉄鋼、化学、繊維産業などを手掛けていたのに対し、電気事業はベンチャー産業であった。これは、①電気機器(電球やモーター)が発達した1920年代までは、利益が期待できる成長産業なのかどうか未知数であったこと、②通信や鉄道とは異なり、軍事との結びつきが少なく、国家関与の必然性が低かったこと、および③地域密着産業であり、明治の日本をけん引した政商にとって魅力的な事業でなかったことなどによる。

写真:タングステン電球

(写真:タングステン電球)

 ベンチャーから今日の電気事業の姿への転換の契機は、1910年のタングステン電球の登場により、ランプや蝋燭からの切り替えが加速したこと、および1910年後半からの工業用モーターの量産化により、生産現場で電気が蒸気機関に取って代わったことにある。こうした利用機器側のイノベーションによる需要の増加につれて、小規模電気事業者では需要の変動に対応して発電所を制御することが難しく、品質が安定しなくなったことから、広域で送電ネットワークを建設し、発電所を多数制御して、電気を供給するようになった。この究極の姿が、現在の電力会社の中央給電指令所と言える。そして、国家送電網(いわゆるナショナルグリッド)の形成にあたっては、巨大な資本が必要となってくることから、電気事業は、事業の合併や新たな出資を募る形で、経営形態を変化させていったのである。

(ⅲ) 電力技術の発展の基本的な枠組みと新潮流

 これまでの電力技術の発展の基本的な枠組みは、①「大型化・大規模化」(発送電にはスケールメリットがあり、大型化することで効率を上げる)、②「多重で強固なネットワーク」(供給信頼度を上げて基盤を確立)、③「需要変動に供給が自在に対応」(供給側が自在に変動して品質を確保)の3点からなる。この基本的枠組みは、およそ100年にわたり不変のものとして、生産性と信頼度を向上させてきたが、2000年代以降、様々な新技術が生まれ始めた。具体的には、上述①「大型化・大規模化」に対しては、分散型発電の発達や再生可能エネルギー、特に太陽光発電のパネルやパワーコンディショナーの価格低下といった動きが、②「多重で強固なネットワーク」に対しては、地産地消モデル、スマートコミュニティ、HEMS注1)や家庭内IoT、に代表される、ユーザー側で電源を保有してある程度自立的に運用しようとする動きが、③「需要変動に供給が自在に対応」する仕組みに対しては、デマンドリスポンスなどの需要側を調整するシステム等が、それぞれ潮流として現れた。
 このように、現在では、100年続いた巨大な電力ネットワークシステムと、分散型システムとのハイブリッド型となっている。

図5

図6

注1)
Home Energy Management System: 家庭内で使われるエネルギーを管理するシステム


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