日米原子力協定の自動延長の背景について


環境政策アナリスト


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「一般社団法人 日本原子力産業協会」からの転載:2017年12月28日付)

 10月18日、ブルイエット米国エネルギー省副長官は東京で日米原子力協定の自動延長を表明した。原子力の平和利用に関する本協定は1988年に締結され、30年の期限で2018年7月に満了になり、いずれか一方が6ヶ月前に破棄するか見直しを提起しない限り延長されることになっていた。

 ブルイエット副長官は本延長は政府全体のアプローチであることを強く示唆していた。本来は国務省の所管だからである。1954年米国原子力エネルギー法においては、その123条で他国との原子力協定(123条合意と呼ばれる)を締結する際は国会の縦覧を事前に義務付けている。米国は日本を含む25の国と機関との間で原子力協定を締結している。一般的に言って日米に関わらず原子力協定は、交渉内容については上記のように公式に表明する以外は高い機微性を有しており、まったく明かされない。たとえば123条合意に関する上院外交委員会によるヒヤリングはまったくの非公開で行われる。
 しかしながら、トランプ政権と議会は日米原子力協定の自動延長についてはまったくの懸念を抱いていないというのがワシントン関係筋の見方である。これまでトランプ政権に先立つ政権内ではときおり、日本のプルトニウム蓄積を疑問視し、日米原子力協定に批判的な勢力が存在した。現在トランプ政権は123条合意についてはケースバイケースで対応すると表明しているが、こと日米について言えばまったく異論はないようだ。
 たとえば国務省の前国際安全保障・不拡散担当次官補であったトーマス・カントリーマンは日本の再処理政策を批判し、日本の拡散リスクおよび経済的な正当性の欠如を議論しようとしていたが、トランプ政権により1月に政権から去った。その後任は、国家安全保障会議の大量破壊兵器・核拡散阻止担当大統領特別アシスタントを務めているクリストファー・フォード氏になる予定であるが、その指名承認に向けて、現在上院外交委員会で審議が進んでいるという。重要な交渉を担うフォード氏は再処理に関してこれまで不拡散政策は国ごとに策定されるべきであると主張してきており、再処理はどの国においても拡散リスクをもたらすという学術団体、シンクタンクでの議論には組みしないとの姿勢である。つまり、イランのような国の再処理への懸念は日本のような国の懸念を惹起しないと考えている。11月28日に行われたフォード氏の上院外交委員会での指名ヒヤリングにおいて、国際核不拡散体制での最大の課題はイランの核分裂生成物の製造と北朝鮮の軍事的拡大であると表明したと伝えられている。またフォード氏は、現在審議中のヨルダンおよびサウジアラビアとの123条合意について交渉中であることは認めつつもコメントは控えたと伝えられている。マーキー委員(マサチューセッツ選出民主党)は、トランプ政権は中東諸国との将来の123条合意について濃縮も再処理も一体的に禁止する「黄金基準」アプローチはあるかと質問をしたところ、フォード氏は「これまでそうだったようにすべての事例において可能な限り強い不拡散制約を模索することが米国の政策であり続ける。できるなら(サウジアラビア、ヨルダンにおいても)この基準を維持したい。法的な要件ではないが、望まれる成果である」と述べている。

 フォード氏はトランプ政権の不拡散政策の主要な役割を担うが、彼はイランや北朝鮮といったハードケースに注目をしており、同盟国においては不拡散の実績を積んでいる日本のような国を敵対国およびサウジアラビアやヨルダンのような実績が皆無な国とは切り離して差別化した政策を適用させようとしている。トランプ政権は日本および日米の安全保障関係を特別に高く支持しており、その政策に対しても批判的ではないとワシントン関係者はみている。12月18日に発表された「国家安全保障戦略」においても、特に増大する東アジアにおける安全保障への危機に関して、日米関係の重要性については繰り返し触れられ、「米国は重要な同盟国である日本との強固なリーダーシップの役割を歓迎し、支持し」、また「日本、オーストラリア、インドとの四カ国の協力関係を一層増進させることを目指す」と述べている。この表現は前オバマ政権の2015年国家安全保障戦略では薄まっており、対比してみると「日本との条約上の義務を支持し」、「日本、韓国、オーストラリア、フィリピンとの同盟を近代化し、地域的およびグローバルな課題に対応することを全面的に可能にするべくこれらの国との相互関係を高める」という認識とは大きく異なっていることがみてとれる。今回の日米原子力協定自動延長決定にはこうした背景がある。

出所:
「国家安全保障戦略」(2017年12月18日)
ザ・ニューアラブ(2017年12月1日)
国際技術貿易アソシエイツ