環境NGOは石炭より原子力が嫌い?

印刷用ページ

(米 Environmental Progressレポートより翻訳転載
「サウスカロライナ州の新たな原子力発電所によって石炭発電を86%削減。新たな分析結果を発表
原題:New South Carolina Nuclear Plant Would Cut Coal Use by 86%, New Analysis Finds
」)

 VCサマー発電所の建設を再開する方法を政策決定者が見つけることができれば、サウスカロライナ州内の石炭火力による発電をほとんどゼロにすることができる、ということがカリフォルニア州・バークリーの政策研究所Environmental Progressによる新たな分析で判明した。

 VCサマー発電所に出資している電力各社は、当原子力発電所を完成させるより、天然ガス火力に投資した方が消費者にとって良い選択になる、と主張する環境NGOのシエラ・クラブ及びFriends of Earth(FoE)からの圧力に屈し、当プロジェクトを中止することを今日発表した。両環境NGOは、環境保護庁(EPA)の排出規制に準拠すればサウスカロライナ州の石炭火力発電は適切に管理できると主張し、原子力発電所さえ止められれば、炭素の排出も温暖化も問題ではないと示唆している。
 
 2016年、サウスカロライナ州の化石燃料由来の電力供給により、580万台の自動車に相当する二酸化炭素が排出された。原子力発電所が完成すれば、その数字は380万台減の200万台相当の炭素汚染に抑えられ、サウスカロライナ州は世界有数のクリーンな電源構成となる。

 政策決定者と発電所の投資家が建設を再開できれば、州内の電力供給に占める石炭の割合は2016年の21%から3%まで下がり、残る石炭火力発電の設備容量のほとんど、または全てを閉鎖することができる。2基の原子炉を合わせると年間18テラワット(TWh)の電力を発電することができ、現在石炭が担っているサウスカロライナ州の電力のうち86%を原子力に代えることができる。

 研究によると、石炭による汚染は呼吸器系の疾患や新生児の低体重の主要な原因となっている。2013年にMITの研究者が行った調査によると、サウスカロライナ州は発電由来の粒子状物質による死亡者数が全国で12位である。

 発電所に出資する電力会社の1社は、当原子力発電所からの電力で石炭火力を代替するることにつき、最近になってあらためて確認した。サウスカロライナ州のザ・ステート紙は先週、「サンティー・クーパー社が大きな予備容量を使って石炭火力依存を低減」と報道している。.

 これは、当原子力発電所は「不要」であり、「大規模な余剰容量」をもたらすとしてきたシエラ・クラブやFoEなどの反原発の各団体の主張とは、正反対の見解である。こうした環境NGOの主張は、2012年にシエラ・クラブが「二酸化炭素の排出削減を実現しつつサウスカロライナ州のエネルギー需要を満たすには石炭火力を代替する電源を模索する必要がある」と証言したことと矛盾している。

 Environmental Progress会長のマイケル・シェレンバーガー氏は、「サマー原子力発電所によってサウスカロライナ州の石炭火力の86%を代替できるという事実は、原子力は要らないとするシエラ・クラブとFoEの主張と矛盾する。」とコメントしている。「このエピソードは、反原発団体が似非科学に根ざしたイデオロギーのために危険な大気汚染を増やして、壊滅的な気候変動のリスクを背負うことを厭わない立場をとっていることを証明するものだ。」

 シエラ・クラブが原子力より化石燃料を支持するのには、財政的な利害が背景にあるのかもしれない。2012年にはシエラ・クラブのメンバーがメディアに直訴し、反原子力のアジェンダを支持する見返りとして、ある天然ガス会社から26百万ドルを受け取ったことを、同NGOの会長に認めさせた

 サウスカロライナ州では何年もの間、石炭火力発電の減少と天然ガス火力発電の増加が続いたが、2016年にその傾向は止まり、石炭と天然ガスはそれぞれのシェアを維持している。専門家によると、ガス価格は変動が大きく、天然ガスによる石炭の代替は将来的に保証されるものではないという。