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2030年すべての照明をLED化


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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 今年に入り、政府は2030年度には家庭やオフィス、工場などすべての照明のLED化を図るなど、LED照明を温暖化対策の重要な施策として位置付ける方針を打ち出しています。今回は、LED照明に焦点を当てて、日本の省エネと温暖化対策を考えたいと思います。

優れた省エネの電子デバイス

 LEDは、発光ダイオード(Light Emitting Diode)の略で、電気を流すと発光する半導体の一種です。きわめて少ない電流で光を発することができる省エネルギーの電子デバイスであり、CO2排出削減に大きな効果があります。先月から当研究所ホームページで「産業界が読み解くパリ協定」の連載をスタートしましたが、第2回 化学産業は温暖化対策のソリューションプロバイダー〈前編〉で、日本化学工業協会 技術委員会委員長/三井化学株式会社常務執行役員、生産・技術本部長、松尾英喜氏は、LEDについて次のように語っています。

 「LEDは電気製品だと思われがちですが、基本的には多くの化学製品が使われています。LEDのチップ、基盤にしてもほとんどが化学製品です(図1)。LEDは、2010年前後は、白熱電球に対して、全体の数%のシェアしかありませんでした。LEDを使用すれば、白熱電球に比べて20~30倍と、大きく寿命が延びます。また基本的に電力量は5分の1以下になると言われています。LEDを例えば約3000万個使うことによって、700万t~800万tのCO2を削減できると言われています」

図1

図1 出典:日本化学工業会

LED照明の種類

 LED照明は主に器具と光源が一体化したシーリングライトなどの「LED照明器具」と白熱電球や蛍光灯の光源部分をLEDに置き替えた「LEDランプ」に分類されます。(図2-1)省エネ性と環境性が重視され、公共建築物で使用されたLED照明器具の採用機種数は、2010年度は9機種でしたが、2013年度は25機種に増加し、公共施設の屋内外でのLED機種の採用が増えています。また、電球型LEDは2003年頃に開発され、2011年3月の東日本大震災後の政府の節電要請を受けて急速に伸長しています。

図2_1図2-1 LED照明の分類 出典:経済産業省[拡大画像表示]

 照明器具の消費電力量は、エアコン、冷蔵庫に次いで、家庭全体の15%程度を占めています。1996年に白色LEDが実用化されてから、各国でのLEDの製品開発と技術開発は目覚ましく進展し、LEDの発光効率は、白熱電球の約6倍、蛍光ランプの1.3倍になっています。現在、日本の照明の多くは蛍光ランプですが、将来的にLEDは、蛍光ランプの2倍の発光効率が実現できるといわれています。そうなると消費電力量は現在の半分以下に抑えることができ、大幅な省エネ性能の向上が見込まれます。LEDは、30分間点灯後の発光面の温度が26度と室温とほぼ同じで、発熱量が少ないため、空調の節電にもなります。(図2-2) 電球型LEDのトップランナー基準は図2-3に示します。

図2_2図2-2 LED照明による省エネ効果 出典:経済産業省[拡大画像表示]

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図2-3 電球型LEDランプの区分と目標基準値 出典(一社)日本照明工業会

LED電球の価格と市場動向

 白熱電球と電球型蛍光ランプ、LED電球のコストの比較は、図3-1を基準(価格・エネルギー効率・寿命)として試算すると、「白熱電球」と「LED電球」では、約5か月間(820時間)の使用でLEDのコストが逆転し、「電球型蛍光ランプ」と「LED電球」では約3年(6000時間)の使用でLED電球のコストが逆転します。(図3-2)LED電球は、家庭用であれば10年以上使用できて、極めて長寿命なことが利点です。

図3_1図3-1 出典:経済産業省(2012年12月公表資料)[拡大画像表示]
図3_2図3-2 白熱電球・電球型蛍光ランプ・LED電球のコスト比較 出典:経済産業省[拡大画像表示]

 日本では、2009年以降、LED電球の市場が拡大し、その後を追うようにLED照明器具の市場が拡大しています。当初はオフィスや商業施設を中心に、既存の照明からLED照明への切り換えが進み、最近では家庭での用途にも広がりをみせています。サムソンなど韓国メーカーの参入もあり、LED電球の価格は急激に低下しており、2009年4月から2011年10月の2年半の間で市場価格は1/3と大幅に下がりました。最近のインターネット通販の最低価格では、大手メーカー製60W相当で1000円前後になっています。(図3-3)

図3_3図3-3 LED照明の市場動向 出典:経済産業省[拡大画像表示]

 (一社)日本照明工業会の自主統計によると、LED照明の国内市場の動向は、LED照明の出荷台数が増えた2009年度以降は毎年前年度と比べて2.5倍以上の伸びを示しています。照明器具の全出荷台数に対するLED照明の比率は、40%の2330万台で、金額にすると全出荷台数の48%の3047億円に増えています。(図3-4)

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図3-4 照明器具の国内出荷数量推移 出典:(一社)日本照明工業会

目標達成のため、経産省と環境省が具体策を検討

 COP21で採択されたパリ協定を受けて、日本では今年5月に「地球温暖化対策計画」が閣議決定されました。2020年に温室ガスを2005年比3.8%減以上、2030年に2013年比26%(2005年比25.4%)減、2050年までに80%減の長期目標を達成するため、経産省と環境省が具体策を検討しています。

 地球温暖化対策計画では、2030年の削減目標達成に向けて、民生部門(業務・家庭)のエネルギー起源のCO2の排出量を約40%削減する必要があるとしています。(運輸部門は28%、産業部門は7%の削減率)この高い削減目標を達成するためには、実効性ある施策を確実に行っていくことが必要です。民生部門の削減対策として、住宅や建築物の断熱性の向上など、建物自体の省エネを進める一方、家庭やオフィス、工場などでLED等の高効率照明を2030年度までにストック(既設)で100%導入する目標が掲げられています。(図4)

図4図4 地球温暖化対策計画(案)の概要 出典:内閣官房、環境省、経済産業省[拡大画像表示]

 2015年7月に策定した2030年度のエネルギーミックスでは、徹底した省エネ(=石油危機後並みの35%効率改善)や再エネ最大導入(=現状から倍増)などの目標を設定しました。このエネルギーミックス実現のためには総合的な政策措置が不可欠であり、関連制度の一体的な整備を行うため、経済産業省は、「エネルギー革新戦略」を今年4月18日に策定しています。エネルギー革新戦略に基づき、エネルギー投資を促し、エネルギー効率を大きく改善させ、「強い経済」と「CO2抑制」の両立の実現を目指しています。ここでも、「徹底した省エネ」が目標として掲げられ、2030年度までにLEDなどの高効率照明をストックで100%にする目標が掲げられ、今年度以降に照明のトップランナー基準の対象を、白熱灯などを含め拡大する方針です。

 また、今年5月31日に閣議決定した環境省の平成28年版「環境・循環型社会・生物多様性白書(環境白書)」では、全ての国が温室効果ガスの削減義務を負う新たな国際枠組み「パリ協定」の合意により、温暖化対策は「新たなステージ」に入ったとして、国内ではLED照明の導入を加速させるなど、対策強化の必要性を強調しています。今後の日本の方向性として、政府による強力な支援のもと、LED照明の品種数は拡大し、高効率化と低価格化が進み、既存の蛍光灯などの照明の大部分がLED照明にシフトしていくと思われます。

弘前市、防犯灯1万8000個をLED化

 家庭や業務部門でのLED化を進めるためには、国民レベルの取り組みとともに、自治体が公共施設や設備への普及を積極的に進めていく必要があります。青森県弘前市の取り組みを参考までに紹介したいと思います。

 弘前市は、「弘前型スマートコミュニティ構想」の取り組みの一環として、青森県内で初となる、市内の約1万8000灯の防犯灯のLED化をESCO(Energy Service Company)事業として行いました。ESCO事業とは、民間の資金やノウハウを活用して 既存庁舎等を改修し、省エネ化による光熱水費の削減分で経費等を償還し、残余を施設所有者と ESCO事業者の利益とする事業のことです。ESCO事業のメリットは、施設所有者は初期投資が不要で、後年度の負担増なしで、省エネ化と光熱水費削減、また、CO2排出量削減による温暖化対策を図ることができることです。省エネルギーの改修にかかる費用は、省エネルギー化によって節減されたエネルギーコストの一部から償還されるのが一般的です。

 今回のLED化事業において、弘前市は、地元が主体となったESCO事業者(弘前地区電気工事業協同組合)と10年間の定額サービス契約を結びました。ESCOサービス委託契約期間中の維持管理(電気代を除く)はESCO事業者が実施し、契約期間中の省エネルギー効果について保証します。これにより、これまで防犯灯の維持、管理を担ってきた各町会の経済的、かつ労働的な負担が軽減され、弘前市全体で年間約3000万円の電気料金が圧縮されました。住民たちからも「夜道が明るくなった」と好評だといいます。(図5)

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図5 設置されたLED防犯灯は、市の『管理番号』で管理されている。出典:弘前市

 長寿命で消費電力が少ないLED防犯灯に切替えることで、住民に対して安全・安心な夜間の明るさを提供し、さらに電気代や修理費用の削減、CO2削減などのメリットが地域にもたらされます。こうしたESCO事業でのLED化の取り組みが、今後各地に広がっていくことが期待されます。

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