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『雇用創出、林業振興、地域活性化』の成功モデル

青森・津軽の木質バイオマス発電所


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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(「月刊ビジネスアイ エネコ」2016年5月号からの転載)

 各地で木質バイオマス発電所の建設ラッシュが続く中、発電の燃料に使う木材需要が拡大し、輸入に頼らざるを得なくなるなど、さまざまな課題に直面しています。そうした中、青森・津軽地方の“地域貢献型”木質バイオマス発電所が注目されています。

津軽バイオマスエナジーの木質バイオマス 発電所=青森県平川市

津軽バイオマスエナジーの木質バイオマス
発電所=青森県平川市

津軽バイオマスエナジー

 青森県初の木質バイオマス発電所を運営する「津軽バイオマスエナジー」(本社・青森県平川市)は、昨年12月からバイオマス発電所の営業運転を開始しました。発電出力は6250kW。年間発電量約4000万kWhは、一般家庭約1万4000 世帯分の年間消費電力量に相当します。 
 同社に燃料の木材チップを供給している津軽バイオマスチップは、地元の農林業事業者や有志の市民らが9950万円を出資して設立しました。青森県の「平成25年度青森県森林整備加速化・林業再生事業費補助金」の交付を受けています。
 燃料には、地元の森林の間伐材のほか、日本一の生産量を誇るリンゴ栽培で発生する剪定枝を有効利用しています。総事業費は約36億円。約1万m2の敷地内に発電プラントとチップ工場、貯木場などがあります。通常のバイオマス発電所と比べると、2分の1ほどの敷地にすべての設備が収まっています。
 津軽バイオマスエナジー代表取締役社長の大山清悦氏にうかがいました。
 「6年ほど前、地元のいろいろな業種に携わる約50人と『津軽新エネルギー事業研究会』を立ち上げ、発電事業の検討を行ってきました。森林事業者からは、年間7万トン程度の燃料なら確保できると言われましたので、それをもとに適切な発電規模を決めました」

木質バイオマス発電所の運転室

木質バイオマス発電所の運転室

 発電事業への参入を決めたのは2013年3月。発電所の資本金は、廃棄物処理・リサイクル事業を展開するタケエイグループが約87%、津軽バイオチップが10%、残りの3%(1000万円)を平川市がそれぞれ出資しています。
 平川市、津軽バイオマスエナジー、津軽バイオチップ、タケエイの4者間で工場建設などに向けた立地協定を結び、14年4月に土地造成工事を始め、15年3月には発電プラント建設とチップ工場の稼働が始まりました。同年12月からの運転開始と売電にあたり、変電所と14本の電柱と送電線を新設しました。
 津軽バイオマスエナジーで発電した電気は、タケエイの100%子会社「津軽あっぷるパワー」(同市)と東北電力に売電されています。あっぷるパワーは、仕入れた電気を主に地元の公共施設や事業者に供給しています。
 発電所で22人、チップ工場で16人の雇用が生まれており、森林事業の新規雇用を含めると全体で100人ほどの雇用が創出されています。

コンパクトに収めてコスト削減

 発電所を訪れ、敷地の入り口を入ると、広々とした貯木場があり、重機で切り出された木材をトラックに積み込んでいました。トラックは積んだ木材をチップ工場に運び、木材は次々に2台のチッパー機で細かく破砕されていきました。でき上がった燃料チップは別のトラックに積み込まれ、すぐ隣にある発電所の中のチップヤードに運ばれていきます。目の前では、一連の作業が流れるようにスムーズに進んでいました。
 津軽バイオチップ代表取締役の中村弘氏にうかがいました。
 「木材チップの生産能力は年間7 万3500トンで、貯木場、チップ工場、発電所のすべてが敷地内にコンパクトに収まっています。輸送距離がほとんどないのは、コスト低減メリットになります」
――チップ化の課題は?
 「木材の乾燥(含水率)が一番の課題です。発電所では、砂が敷き詰められた流動層ボイラーを使っていますが、高温で砂を沸騰状態にして水分量50%までの木質チップを燃料にしています。含水率40 ~ 50%なら100%の出力で発電できますが、51%を超えるとボイラーは止まります。ほかの発電所では、原木を購入すると含水率が60%ほどあるため、チップ工場に乾燥機を導入するところも多い。乾燥機はまだ導入していないので、天候によって保管方法などを工夫し、半年ほど経過を見ているところです」(中村氏)

敷地内の木材置き場

敷地内の木材置き場

敷地内のチップ工場

敷地内のチップ工場

木質バイオマス発電所内のチップヤード

木質バイオマス発電所内のチップヤード

50年間地域に貢献する発電事業をめざす

 津軽バイオマスエナジーを成功モデルに、岩手県花巻市でも木質バイオマス発電事業が今年12月に開始予定です。津軽でのこうした取り組みは、発電事業に関心を持つ自治体の間で話題になり、すでに40を超す自治体から見学がありました。
――今後計画していることは? 
 「バイオマス発電は発電だけだと、発電効率は30%弱にとどまります。投入するエネルギーの70%程度は熱として捨てられます。その熱をうまく活用することが課題です。来年には発電所のそばに温室ハウスを2、3棟つくり、トマトや葉物の栽培を検討しています。これで40%の熱を使えます。残りの40%は、煙突の先から水蒸気として出る熱で、これを利用できないか弘前大学と共同研究しています」(大山氏)
 間伐材は山林からの搬出コストが高いことから、山に放置されることが少なくありません。木質バイオマス発電の原料として間伐材を利用することは林業再生につながると期待されています。一方で、木質バイオマス発電所の建設ラッシュで、間伐材など丸太の需要が拡大し、発電所間で木質燃料の奪い合いが起きていると伝えられています。
――固定価格買い取り制度(FIT)に基づく木質バイオマス発電による電気の買い取り期間は20年間。その先の展開は?
 「先々、間伐材の利用が困難になることが予想されます。燃料を地元の木材で確保するため、今から山を買うことを検討しています。一般に植樹から伐採まで数十年を要しますが、20年程度で伐採できるような樹種の植樹を検討しています」(中村氏)
 大山氏は「50年間の事業継続を目指し、事業そのものが街に喜ばれる形にしていきたい」と話します。地元の人たちとのつながりを大事にして、工夫しながら林業振興と地域活性化を図っていこうとする強い意思が感じられます。



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