「再生エネの買取制度」どう両立

導入拡大と国民負担制御


新日鐵住金株式会社 技術総括部上席主幹


(「日刊鉄鋼新聞」からの転載:2015年11月24日付)

 太陽光や風力、地熱など再生可能エネルギーの利用拡大を目的に3年前に導入された固定価格買取制度(FIT)――再エネの利用拡大を促すきっかけとなった半面、太陽光の想定を超える導入拡大によって国民や企業の賦課金負担が増大しているという負の面も指摘されている。電力を大量に消費する鉄鋼業も負担増が年々、深刻になりつつある。制度の問題点や現在進められている見直しに関し、国民負担の問題を中心に、日本鉄鋼連盟の環境・エネルギー政策委員会・電力委員会の小野透委員長(新日鉄住金技術総括部上席主幹)に聞いた。

――――制度開始から3年がたち、太陽光発電の設備認定・導入が急拡大した結果、国民や企業の賦課金負担が増大していると指摘される。

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 「買い取り費用から回避可能費用を差し引いた賦課金総額は今年度、1兆3222億円にのぼる見通し。14年度は約6500億円だったので、2倍強に跳ね上がる。賦課金単価も15年度で1kW時あたり1.58円と14年度の0.75円に比べ2倍になっている。1カ月の電気使用量が300kW時の標準家庭の場合、月額は約450円。年間では5千円強になる計算だ。標準家庭の300kW時という使用量は低すぎるという指摘もある。ちなみに1千kW時超の家庭の場合、14年度が月額800円強、今年度が同1700円弱になる。年間では2万円強になるから、家計への影響は甚大と言わざるを得ない」

―――電力を大量に消費する鉄鋼業界の負担は。

 「電気事業連合会の統計によれば、鉄鋼業の14年度の電力量は約370億kW時。これに15年度の賦課金単価1.58円を掛けると、負担総額は600億円弱になる。普通鋼電炉や特殊鋼電炉メーカーは減免制度の対象になっているが、その減免分を除いても負担総額は約400億円に上る。電力料金は東日本大震災以降、原発の稼働停止や燃料費高騰によって急上昇した。足元は高止まりの傾向にあるが、その分の負担も依然大きい。これにFITの賦課金が上乗せされる形で、鉄鋼メーカーにとっては大きな問題だ」

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―――国民負担の増大は、太陽光発電の想定を超える導入拡大と言われているが、FITの制度的欠陥はなかったのか。

 「日本の制度に問題があったというよりも、FIT制度そのものの構造的な問題ととらえた方がよい。実際、FITを先行導入したドイツやスペインでも同じような問題が発生し、制度の見直しを迫られた。ただ、日本の場合は特に、投資リスクがさほど大きくない太陽光の買取価格を高く設定しすぎたことが問題だった。さらに設備認定の要件が緩すぎたたり、認定後の権利の転売、仕様変更などが簡単にできたりすることも問題と指摘されている。結果として再エネ事業者、特に太陽光発電の事業者にとっては想定を超える大きな利益をもたらし、その分を国民・企業が負担しているのが現状だ」

―――国民負担の問題が指摘された昨年以降、運用の見直しで太陽光発電の認定を抑制する方向になっているはずだが…。

 「認定要件を厳しくしたり、買取価格の引き下げで、確かに太陽光発電事業のうまみは低下している。実際、太陽光の新規認定量は今年4月以降微減傾向を示しているようだ。ただ、仮にFITをすぐに廃止したとしても今の制度では、すでに認定・稼働した設備に対する賦課金の負担はなくならない。認定量が微減に転じたとしても、今後も認定済みの設備が稼働してくる。その分、負担は増え続けていくことになる。非常に深刻な問題だ」


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