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第7話「IAEA総会(下)」


在ウィーン国際機関日本政府代表部 公使


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原子力安全

 第5話でも触れたとおり、IAEA福島報告書が公表され、IAEA原子力安全行動計画が最終年を迎えた本年IAEA総会において、原子力安全はハイライトの一つであった。原子力安全を更なる高みに引き上げていくために、今後、何をすべきか。その方向づけをするのが、本年の原子力安全に関する総会決議の役割であった。
 同決議では、第3話で紹介した、「原子力損害の補完的な補償に関する条約(CSC)」の発効や、原子力安全条約(CNS)外交会議におけるウィーン宣言の採択、IAEA福島報告書の公表など、この一年の新たな動きに触れている。その上で、加盟国に対し、原子力安全に関する諸条約への未締結国の加入や、IAEAの原子力安全基準を考慮した安全対策の実施を奨励するとともに、IAEAに対しても、福島報告書に示された教訓や、行動計画の実施状況を踏まえながら、今後の原子力安全戦略を練ることを求める内容となっている。

原子力エネルギー、原子力科学技術応用、技術協力

 IAEA事務局にある6つの部局のうち、原子力の平和的利用の促進に関する3つの局(原子力エネルギー、原子力科学技術応用、技術協力)の活動は、途上国の関心が極めて高い。IAEAのこれら分野における今後の活動を方向付ける関連の総会決議についても、原子力発電に関連する一部を除き、途上国グループ(G77+中国)が決議原案を作成する慣行がある。本年は、国連総会における新たな開発目標(持続可能な開発のための2030アジェンダ)の採択を翌週に控えたタイミングだったこともあり、とりわけ、開発課題に対処するための原子力科学技術の一層の活用に期待が寄せられた。
 本年の決議で特筆すべき点としては、2018年に原子力科学技術の応用に関する閣僚会議を開催することが明記されたことがあげられる。持続可能な開発のため、特に非発電分野での原子力科学技術の活用に途上国から高い関心が寄せられていることを踏まえたものである。2017年には原子力発電に焦点をあてた閣僚会議をアラブ首長国連邦で開催することが既に決まっている。この2017年、2018年の二つの閣僚会議は、天野事務局長が提唱するAtoms for Peace and Developmentの路線に一層の弾みをつけるためのものであり、その準備が今後、本格化することになろう。

保障措置

 昨年のIAEA総会と比べて最も対照的だったのが、保障措置に関する決議である。昨年は、「国レベル概念(SLC: State Level Concept)」とよばれる、限られた予算で保障措置業務を一層効率的、効果的なものにするためIAEA事務局が提唱した新たなアプローチを巡り、IAEAの査察活動の強化に懸念を持つ途上国と、核不拡散強化を目指す先進国との間で大きな論争が巻き起こった。各国が納得する内容となる決議が採択されるまでに多大な労力が費やされた。
 一方、本年は総じて静かであった。昨年の決議策定プロセスを経て、新たなアプローチに対する途上国の懸念が相当程度和らげられたこと、新たなアプローチの適用にあたり事務局が丁寧なステップを踏んでいることなど様々な理由があげられる。

核セキュリティ

 核セキュリティは、IAEAの活動としては、比較的新しい領域であるが、米オバマ政権になって核セキュリティサミットが開かれる様になったこともあり、近年高い関心を集めている分野である。他方、様々な理由により、核セキュリティ決議案を巡っては、紛糾する場合が多い。本年も同様であった。
 今回は、核軍縮に言及した前文パラグラフを巡って、ドラフト段階から各国の間で議論が紛糾した。根底には、核軍縮へのIAEAの関与を巡る各国の立場の違い(大きく二つに分けると、核軍縮はIAEAの活動マンデートの枠外であり、IAEAの場に持ち込むべきでないとする立場と、IAEAには核軍縮においてより積極的な役割を果たし得るとする立場がある)がある。様々な案文が提示されたものの、結局、全体委員会ではコンセンサスがなされないまま、本会議に提出され、一部パラグラフが分割投票に付されることとなった。最終的に、投票に付されたのは、前文パラ(c)後段の以下の部分である。

“and stressing that further progress is urgently needed in nuclear disarmament, consistent with relevant international nuclear disarmament and non-proliferation obligations and commitments,”

 議論が紛糾した背景には、本年のNPT運用検討会議が合意文書不採択という結果に終わったこと、その要因の一つとして核軍縮を巡る各国の立場の違いがあり、特に核兵器国による核軍縮が進まないことに対する非核兵器国側のフラストレーションが増大していることが挙げられる。各国の立場の違いが尖鋭化しており、それがIAEA総会の場では核セキュリティ決議案プロセスで噴出したといえる。
 来年前半には米国で核セキュリティサミットが、来年12月にはIAEAによる核セキュリティ国際会議が開催予定である。日本では広島でG7外相会合が、伊勢志摩でG7サミットが開催される。これらの国際会議を念頭に置きながら、NPT体制の立て直しという大きな流れの中で、この核セキュリティの問題についても取り組んでいく必要がある。

本会議において報告を行う、全体委員会委員長のベンフシーヌ・アルジェリア代表部大使(写真出典:IAEA)

本会議において報告を行う、全体委員会委員長のベンフシーヌ・アルジェリア代表部大使(写真出典:IAEA)



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