執筆者:加納 雄大
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2017/03/27
最終話「IAEA事務局長」
皇帝(カイザー)の都、ウィーン
ウィーンは長きにわたり、皇帝(カイザー “Kaiser”)の都であった。
神聖ローマ帝国、オーストリア帝国、オーストリア・ハンガリー帝国と名を変えながらも、数百年にわたり、歴代皇帝を輩出したハプスブルク家のおひざ元として繁栄してきた。 続きを読む -
2017/02/06
第14話「環境外交と原子力外交」
2017年の幕開け
2017年が幕を開けた。ウィーンの元日は周知の通り、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートで始まる。今年はマリア・テレジア生誕300周年、ヨハン・シュトラウス2世作曲のワルツ「美しく青きドナウ」誕生150周年、ウィーン・フィル創設175周年にあたる。 続きを読む
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2016/12/22
第13話「核セキュリティ」
ウィーンの秋、そして冬
9月のIAEA総会が終わると、10月は比較的穏やかな秋の日が続くが、サマータイムが終わる10月最後の日曜日が過ぎ、11月に入ると、ウィーンは日がぐっと短く、そして寒くなる。オペラ、コンサート、バル(舞踏会)が開かれる、冬のシーズン到来である。 続きを読む
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2016/11/04
第12話「IAEA総会:60年の節目」
1.IAEA in Africa
8月下旬になると、ウィーンも夏休みシーズンから徐々に通常モードに戻り、一年の国際会議シーズンの幕開けとなる。
国際原子力機関(IAEA)においても、一年で最大の行事である9月のIAEA総会に向けた準備が本格化する。 続きを読む -
2016/08/10
第11話「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」
1.初夏のウィーン
国際機関が集まるウィーンでは、例年、夏休みシーズンに入る7月半ばまでの間、様々な国際会議が開催される。大変あわただしい時期である。 続きを読む
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2016/05/24
第10話「オーストリア・ハンガリー原子力事情」
1.オーストリアとハンガリー:美しく青きドナウでつながる二重帝国の末裔
ウィーンはかつてオーストリア・ハンガリー帝国の首都であった。帝国の都としての遺産は街のあちこちに残っている。 続きを読む
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2016/03/18
第9話「IAEA福島報告書を読む」
ウィーンにおける2016年の幕開け
年が明けて間もない、1月6日の北朝鮮の4度目の核実験は、原子力の影の側面を改めて想起させるものであった。ウィーンにおいても、当地に本拠を置く包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)が、同日直ちに北朝鮮での特異な地震波の動きを各国代表部に通報、技術ブリーフィングを行った。 続きを読む
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2015/12/25
第8話「原子力技術の光と影」
年の瀬のウィーン
毎年11月中旬になると、ウィーンの市内のあちこちでクリスマス市が開かれる。ウィーンのクリスマス市は13世紀末に神聖ローマ帝国皇帝アルブレヒト1世が地元の商工業者に12月に市場で店を出す権利を与えたのが始まりとされる。 続きを読む
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2015/11/30
第7話「IAEA総会(下)」
IAEA総会決議の採択
一週間にわたるIAEA総会は、事務局長による冒頭演説、各国政府代表の一般討論演説と進んだ後、最終的には、IAEA予算の承認や、新たな理事国の選出、様々な原子力関連の政策分野における総会決議の採択が行われる。 続きを読む
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2015/11/20
第6話「IAEA総会(中)」
新たな開発目標とIAEAの役割
国際原子力機関(IAEA)総会の初日冒頭には、事務局長による演説が行われる。IAEAが現在取り組んでいる主要課題を包括的に取り上げ、今後進むべき方向性を指し示すものであり、日本の内閣総理大臣の施政方針演説、アメリカ大統領の一般教書演説に相当するものといえる。 続きを読む
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2015/11/02
第5話「IAEA総会(上)」
IAEA総会は世界の原子力関係者が集う祭典
毎年9月、欧州で新学期が始まる頃、ウィーンにおける原子力外交も、一年で最大の行事を迎える。それが、国際原子力機関(IAEA)の総会(General Conference)である。 続きを読む
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2015/09/10
第4話「『核の番人』としてのIAEA」
イランの核問題とIAEA
ウィーンの旧市街にパレ・コーブルク(Palais Coburg)と呼ばれる、瀟洒な建物がある。旧市街の中心にある聖ステファン大聖堂や、モーツァルトが「フィガロの結婚」を作曲した頃に住んでいた「モーツァルトハウス」にほど近い。 続きを読む
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2015/09/02
第3話「原子力安全のための国際的なルール作り」
ウィーンは原子力をめぐる国際ルールづくりの一大拠点
国際原子力機関(IAEA)が本部を置くウィーン国際センター(VIC)では、日々様々なイベントが行われる。
本年4月15日の昼、このVICの一角のオープンスペースで、日本の北野充大使、米国のローラ・ケネディ大使を含む6ヶ国の大使による「鏡開き」が行われた。 続きを読む -
2015/04/10
第2話「原子力の平和的利用」
原子力の平和的利用
ウィーン国際センター(Vienna International Center)のほぼ中央に円筒形の建物(C棟)がある。この建物には、各種イベントが開かれる地上階のオープンスペースや郵便局、売店、会議施設があり、国際原子力機関(IAEA)の理事会もこの建物内で開かれる。 続きを読む
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2015/02/10
第1話「原子力外交の都、ウィーン」
外交の都、ウィーン
オーストリアのウィーンと聞いて、読者の皆さんは何を思い浮かべるだろうか。多くの方は、モーツァルトやウィーンフィルのニューイヤーコンサートなどから「音楽の都」をイメージするのではないだろうか。 続きを読む
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2013/08/02
補論「本格稼働を始めた二国間クレジット制度」
本連載でたびたび紹介してきた二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism、以下JCM)注)が、本年に入って本格的にパートナー国を増やし始めている。
本年1月8日にモンゴル政府との間で、同制度の設置に関する二国間文書(「日・モンゴル低炭素発展パートナーシップ」)(後掲)への署名を行ったのを皮切りに、バングラデシュ(3月19日)、エチオピア(5月27日)、ケニア(6月12日)、モルディブ(6月29日)、ベトナム(7月2日)との間で同様の文書を交わし、7月半ばの時点で、署名国は6カ国に上る。 続きを読む -
2012/12/28
最終話(3の3)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その3)」
4.日本の取り組み(3):二国間オフセット・クレジット制度
世界全体で低炭素成長を実現していくためには、省エネ、再生可能エネルギーなどの低炭素技術を活用するインフラへの投資を世界全体で促進していく必要がある。エネルギー効率の水準が低いが、エネルギー需要増大が見込まれる途上国において特にその必要性は高く、これらの国々において低炭素関連インフラへの投資が十分かつ速やかに行われるか否かは、今後数十年の経済成長とCO2排出の方向性を左右する決定的に重要な要素であると言って良い。 続きを読む
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2012/12/27
最終話(3の2)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その3)」
2.日本の取り組み(1):東アジア低炭素成長パートナーシップ
これまで本連載において触れたとおり、これは、東アジア首脳会議(East Asia Summit)の枠組みを活用して、温暖化対策の実際的な地域協力を進めていくべきとして日本が提案したものである。
背景には、世界と日本にとってのこの地域の重要性があげられる。EASメンバー国18カ国は世界の成長センターであるとともに、最大の温室効果ガス排出地域でもある。 続きを読む -
2012/12/26
最終話(3の1)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その3)」
カタール・ドーハでのCOP18が終わった。
昨年の南アフリカ・ダーバンでのCOP17と同様、30時間余の交渉延長の末に、一連の合意文書「ドーハ気候ゲートウェイ(Doha Climate Gateway)」がとりまとめられた。COP17で立ち上げられたのが「ダーバン・プラットフォーム(Durban Platform)」だったので、一年かけて「プラットフォーム」が「ゲートウェイ」になったわけである。言葉の響きからすると足踏み感、遅々として進まない交渉といった感がなくはない。 続きを読む -
2012/11/27
第7話(2の2)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その2)」
2.日本の提案:「世界低炭素成長ビジョン」
将来枠組みの構築に向けた国連交渉への取り組みとあわせ、日本が提案し、様々な形で具体化を進めているのが、「世界低炭素成長ビジョン」である(図表7-3参照)。
これは、国連交渉における新たな法的枠組みの構築と並行して、より実際的な地球温暖化対策として、技術、市場、資金を総動員しながら、世界全体をCO2排出を増やさない形での経済成長、「低炭素成長」に導いていこうというものである。 続きを読む