補論「本格稼働を始めた二国間クレジット制度」


在ウィーン国際機関日本政府代表部 公使

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 本連載でたびたび紹介してきた二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism、以下JCM)注)が、本年に入って本格的にパートナー国を増やし始めている。
 本年1月8日にモンゴル政府との間で、同制度の設置に関する二国間文書(「日・モンゴル低炭素発展パートナーシップ」)(後掲)への署名を行ったのを皮切りに、バングラデシュ(3月19日)、エチオピア(5月27日)、ケニア(6月12日)、モルディブ(6月29日)、ベトナム(7月2日)との間で同様の文書を交わし、7月半ばの時点で、署名国は6カ国に上る。新興国(ベトナム)からLDC(バングラデシュ)、アフリカ(エチオピア、ケニア)、小島嶼国(モルディブ)まで多様な途上国が網羅されており、途上国の特性に応じて柔軟な制度設計を行える同制度の可能性を示すものと言える。
 この6カ国のうちモルディブを除く5カ国とは筆者も気候変動課長在職中に現地を訪れるか、国際会議の機会をとらえて、先方政府関係者と本制度の構築に向けた協議を行ったこともあり、二国間文書の署名に至った事は感慨深い。関係者の努力に敬意を表したい。
 本稿では、第1号のモンゴルのケースを例に、このJCMの基本的枠組みを形作る二国間文書について解説するとともに、関連の論点について若干の考察をしてみたい。

*本文中意見にかかる部分は執筆者の個人的見解である。

注)
なお、本制度の名称については、これまで日本政府の関連文書において「二国間オフセット・クレジット制度」とされてきたが、表現が簡略化され、「二国間クレジット制度」と改められた。本稿でも、これにならうこととする。