北京のPM2.5対策に地方の壁


国際環境経済研究所理事長


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 先日、久しぶりに北京を訪問した。上海では青空が見えたが、北京は相変わらず乳白色の濃霧のようなスモッグだ。(写真は産経ニュース、10/28)
 北京は、周囲(北・東・西)を山に囲まれた盆地状の土地で空気が淀みやすい。
 かつて「北京秋天」と言われた青空は望めない。

 北京市政府は、増大する自動車の市内への流入規制(ナンバープレートによる規制)などを行なっているが、ガソリンの品質問題、暖房用の石炭の使用など課題は多い。これに加えて、北京を取り囲む河北省の汚染の影響も大きい。(地図は中国のPM2.5濃度分布。北京周辺の河北省が汚染していることがわかる(赤い点が汚染がひどい地点))

 河北省は、中国最大の鉄鋼生産地域であり、中国の粗鋼生産7億トンのうち、1億8000万トンと全国の1/4を生産している。河北省政府に対しても、鉄鋼企業の環境対策や能力削減が要請されている。
 鉄鋼の過剰生産対策として、環境対策を打っていない小規模な生産設備を淘汰し、大手企業に統合・再編させてきた。この結果、河北省にあった唐山、邯鄲、宣化、承徳、舞陽、石家庄などの鉄鋼会社は「河北鉄鋼集団」という中国最大の鉄鋼会社に統合された。ところが、統合とは名ばかりで、集団の傘のもとに各地方鉄鋼会社をくっつけただけで、旧来の会社は独立的運営を行なっており、能力が削減された訳ではない。

 中国では、「上に政策あれば、下に対策あり」と言われるように、中央の指示が骨抜きにされることが多々ある。

 中国共産党の昇進システムでは、地方で実績を挙げれば中央のポストに昇進できる。地方幹部(たとえば省の共産党書記)は、各省のGDP成長、税収の増大、雇用の確保などで評価される。このためには、地方政府傘下の国営企業の発展、とりわけ売上高の増大が極めて重要である。売上増大により売上にかかる増値税(付加価値税)が増えると、地方政府の税収増になるとともにGDP成長や雇用の確保にも繋がる。地方幹部も目出度く昇進できる仕組みになっている。
 民営企業では、マーケットが良くないと、工場を減産し、従業員を合理化するが、地方政府傘下の国営企業は、地方政府の意向を無視するのは難しい。どうしても過剰生産の傾向にある。

 中央政府の環境対策も地方政府の壁にぶち当たり、効果を発揮しにくい。

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