COP19 参戦記②
-産業界の関与強化がカギ-
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
政府間の交渉である国連気候変動枠組み条約交渉において、民間組織からの参加者がどのような活動をしているのか、不思議に思われる方も多くいらっしゃるだろう。確かに交渉そのものは政府間で行われ、条約上の義務を負うのも締約国政府である。しかし温暖化そのものの影響、規制による影響を受けるのは産業界を含めた我々市民であり、温暖化対策の技術や資金、人材を多く持っているのもまた同じなので、交渉を実のあるものにするために非政府組織からも多数参加しているのである。ちなみに、国連気候変動交渉の場でだけ通じる専門用語であるが、産業界関係者は「BINGO(ビンゴ)」(Business and Industry NGOs)、研究組織は「RINGO(リンゴ)」(Research and independent NGOs )」、環境保護団体は「ENGO(エンゴ)」(Environmental NGOs)、若者による組織は「YOUNGO(ユンゴ)」(Youth NGOs)などという形で多くの非政府組織が呼び分けられており、会場にはジェンダー、先住民、ベジタリアンなど様々な主張を持つ参加者がそれぞれの立場から気候変動問題に対する意見を主張している。
そして最近、国連気候変動枠組み条約交渉において、これまで以上にこうした非政府組織、特に産業界の関与が求められるようになってきている。京都議定書第一約束期間の経験を見れば明らかな通り、一部の国・地域が高い削減目標を掲げるだけでは実効性ある温室効果ガス削減は図れない。削減目標を持たない国への生産活動の移転や、国連交渉で達成容易な目標値を勝ち取った国が何らの削減努力を行わずに手に入れる「ホットエアー」と呼ばれる排出権のやりとりを招き、さらにはカナダのように目標達成が不可能であると開き直られれば、国連という「町内会」には達成を強制する手段がないのである。(実際には京都議定書第一約束期間で目標未達だった場合には、第二約束期間の目標値に、排出超過分の1.3倍が上乗せされるといった罰則規定も設定されているが、そのような罰則規定を受けることを覚悟で第二約束期間に参加する国はないだろう)
技術や人材の教育システムを持つ産業界の投資決定プロセスをよく理解し、産業界の投資を促進するファイナンス・スキームを確立することが不可欠であるとの認識が国連の交渉関係者の中に共有されて来た結果、今回のCOP19に先立ってこのワルシャワで開催されたプレCOPでも、COP19議長を務めるポーランド環境大臣から産業界に対して特に積極的・継続的な関与を求められている。