鉄鋼業は東日本大震災をどのように乗り切ったか

関田貴司・日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員会委員長[前編]


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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信頼を失うリスク。正しい情報をできるだけ早く開示すべき

――震災直後の政府からの情報発信については、どうお感じになっていますか。

関田:我々企業はCSR(企業の社会的責任)などの観点から、必要とされる情報を正確かつタイムリーに開示することを努めて行ってきています。今回、その点で、政府の対応に不十分な面があったことは否めないと思います。

 いろいろな発言があり混乱を招いたり、公表された内容と違う事象が後から明らかになったりするなど、国民の信頼を失いかねないような状況も見受けられました。海外の関心も高く、日本の発信を注視しているわけですから、その影響は国内にとどまりません。当社においても、しばらくの間は海外のお客さま、海外パートナーとの案件に少なからぬ影響がありました。現代のような情報化社会では、放っておいてもさまざまな情報が独り歩きしますので、良いことであっても悪いことであっても正確な情報をタイムリーに開示し、共有化を図ることが重要だと思います。

 実は当社では、ここ数年ずっと地震を想定した訓練をやっており、それが非常に功を奏しました。今回の大震災では、地震発生直後に全社対策本部を本社につくり、2時間後にはテレビ会議で主要な事業所すべてを結びました。

――2時間後とは素早い対応ですね。

関田:訓練でもテレビ会議を使いますが、いざという時にうまく活用できるのか一抹の不安はありました。今回、結果としては実行できました。製鉄所のある関東と西日本でも相当の衝撃を受け混乱はありましたが、東北ほどひどいダメージを受けることもなく、電気もありました。テレビ会議で結び、被害を受けていない西日本の製鉄所からの支援をどうするのかを話し合いました。そうした対応があったため、復旧も早かったのだと思います。

東日本大震災の発生後、JFEは2時間で主要な事業所すべてをテレビ会議で結んだ。関田氏は「日ごろの訓練が実を結んだ」と話す