ウィーンは、音楽の都であるとともに、欧州国際政治の舞台としての長い歴史を有し、現在は多くの国際機関を抱える、外交の都でもあります。
 なかでも、国際原子力機関(IAEA)を舞台に、各国による活発な原子力外交が繰り広げられています。各国政府関係者、研究者、企業関係者が世界中から集まり、IAEAが原子力の平和利用を確保するため各国で実施している保障措置や、核セキュリティ、原子力安全、原子力技術を活用した途上国支援など、原子力に関連する様々な分野において、国際協力やルール作りなどの取り組みがなされています。世界有数の原子力大国であり、また福島第一原発事故を経験した日本も、原子力外交の主要プレーヤーとして、こうした国際的議論に積極的に参画しています。
 この連載では、ウィーンで行われている原子力外交を巡るさまざまな動きをご紹介していきます。

加納雄大(かのう たけひろ)/ 在ウィーン国際機関日本政府代表部 公使
1968年生まれ。東京大学法学部中退。ケンブリッジ大学経済学修士。1989年外務省入省。アジア局、北米局、国際協力局、在米国日本大使館、経済局、内閣総理大臣官邸、総合外交政策局などでアジア、日米関係、政府開発援助(ODA)、気候変動、安全保障等を担当。2014年7月より現職。
著書に本研究所における連載寄稿をもとにした「環境外交:気候変動交渉とグローバル・ガバナンス」(2013年 信山社)がある。