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CO2温暖化説は1979年に終っていた


気候研究者


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 菅首相の「2050年に温室効果ガス0」宣言や参議院本会議における「気候非常事態宣言」などでCO2温暖化説が話題になっていますが、この説はMITの優れた気象学者だったR. Newellが1979年に発表した4頁の短い論文によって否定され終わっていた筈でした。
 ところが、R. Cess, S. Schneider, W. Kellogg, V. Ramanathan, F. Luther, R. Watts, A. CraneらCO2温暖化論者たちはこの論文を激しく非難し、R. Newellは研究資金を得られない状況に追い込まれました。
 コンピュータモデルを用いるIPCCのCO2温暖化説は、1958年にまだ貧しかった日本を脱出して渡米したプリンストン大学の真鍋淑郎氏(以下真鍋)が創始しました。真鍋は基本論文(1964/67)の1次元モデルとスパコン「地球シミュレータ」で走る気候モデルの原型である3次元モデル(1975)を発表して多くの学会賞を授けられ、2018年には地球科学のノーベル賞と言われるクラフォード賞に輝きました。

 CO2が産業革命前の300ppmから600ppmへ倍増時の真鍋モデルによる計算結果は下記のようで、気候感度はCO2倍増時の地表気温上昇を意味します。この場合、CO2温室効果増による地表基礎温暖化が引き起こすとされる次の2次的増幅作用(FB: feedback)が真鍋モデルには組み込まれていて、地表基礎温暖化よりも大きな気候感度を出力します。

(1)
水蒸気FB: 地表基礎温暖化で大気中水分が増加し温室効果が更に増加するFB
(2)
雪氷アルベドFB: 地表基礎温暖化で白い雪氷が融けると黒い海面や地表が現れ太陽光吸収率が大きくなって温暖化が更に増大するFB

 1975年の真鍋論文に触発されてJ. Mercerは、1978年の論文で「このまま化石燃料を燃やし続けると約50年後にはCO2が600ppmになる。真鍋論文によれば南緯80度の温暖化は地球平均の2倍以上なので、西南極氷床が融けて5mもの海面上昇が起きる可能性がある」と警告しました。このニュースは世界中に拡散されCO2温暖化の恐怖が世界を覆いました。

 1979年この状況を憂慮したMITの気象学者のR. Newellは、「CO2倍増時の地表における温室効果熱は多量に存在する水蒸気と赤外吸収が重なるので、1(W/m2)程度である。一方、地球表面の70%を占める海表面の熱慣性は30(W/m2)/℃なので、CO2倍増による地表基礎温暖化は0.03℃となり、J. Mercerが警告しているような5mもの海面上昇は起きない」と批判しました。R, Newellの論点を真鍋モデルと図表1で比較しましたが、Reid (1981)では海表面の熱慣性として20(W/m2)/℃を得ており、この値を用いるとCO2倍増時の地表基礎温暖化は0.05℃となります。

 真鍋1次元モデルによる計算結果を図1に示しますが、CO2倍増時の地表基礎温暖化を1.3℃と計算しています。論文中で真鍋は、計算結果を支配する気温減率(高度による気温低下率)について次のように述べており、実に杜撰な考えに基づいた仮定を用いています。
「対流圏の気温減率の観測値は、大体6.5℃/kmである。この説明は少し複雑である。これは、湿ったまたは乾燥した、小さいまたは大規模な対流により熱が上方に運ばれる安定化効果と、放射熱による不安定化効果のバランスで決まる。対流圏の気温減率の問題はこれ以上詳しく調べないで、この値を観測事実として受け入れ、対流の臨界気温減率として受け入れよう」

 真鍋1次元モデルではあらかじめ気温減率が分っている必要がありますが、600ppm時の気温減率はJ. Kiel、C. Essex、A. Sinhaらが指摘するように多くの要因に依存するので、それを決める方法はありません。そこで真鍋は、「色々考えるのは面倒臭いから、300ppm時の気温減率6.5℃/kmをそのまま使っちゃえ」と乱暴な仮定を用いた訳です。もしもこういう計算戦略を取るのなら、600ppm時の気温減率を少し増減したケースも計算して、計算結果が変化しないことを確認する「パラメタ感度分析」を行うことが必要です。

 実際にCO2倍増時の気温減率を6%増減させた計算結果を図2に示しますが、地表基礎温暖化は100%も変化するので、「真鍋の1次元モデルは理論的に無意味」と結論されます。
 事実、NASAのJ. Hansenは、2000年10月23日のS. Weartとのインタビューの席で、真鍋モデルの追試経験から「真鍋の1次元モデルはfudge(でっち上げ)」と言っています。
https://www.aip.org/history-programs/niels-bohr-library/oral-histories/24309-1
 また地表基礎温暖化の文献値は次のようで、真鍋モデルを否定しています。

 ところがIPCCの温暖化予測は図3に示すように真鍋モデルの上に構築されています。IPCC報告書用の気候モデルは100個以上の調節可能なパラメタを用いてFBを加味した気候感度を計算しているだけであり、米国大気研究センター(NCAR)の上級研究員で前役員のJ. Firorは、「気候モデルの最大の問題は、自分たちにとって望ましい結果が出力されるように、モデルを改変し使用する人々によって構築されていることだ」と批判しています。

 1980年にV. Ramanathan が「モデルで計算されるCO2温暖化は検知されない。CO2熱が海洋に吸収されたのか?」という論文を発表し大騒ぎになりました。先達真鍋に10年近く遅れて最初の論文を発表したライバルのJ. Hansenは、遅れを取り戻すのはこの時とばかり、1981年に真鍋1次元モデルを用いた「CO2温暖化の海洋遅延説」を発表しました。また1984年の3次元モデルでは恣意的な雲FBを導入し、気候感度4℃を達成して先達真鍋を追い抜きました。更に、1988年米国北西部で干ばつが発生している時、冷房を切った部屋で「この猛暑は99%CO2温暖化が原因」と議会証言して「地球温暖化の父」と呼ばれるようになりました。しかし彼は「真鍋1次元モデルはfudge」と知っていますので、その上に構築された気候モデルを全く信用していず、「人間の脳の方がスパコンより全ての要因を考慮できる」と発言しています。

【参考文献】

  • Hansen, J., Johnson, D., Lacis, A., Lebedeff, S., Lee, P., Rind, D. and Russell, G., Climate impact of increasing atmospheric carbon dioxide, Science 1981, 213, 957-966.
  • Idoso, S. B., The climatological significance of a doubling of Earth’s atmospheric carbon dioxide concentration, Science 1980, 207,1462-1463.
  • Idoso, S. B., CO2-induced global warming: a sceptic’s view of potential climate change,Climate Research,1998, Vol.10, 69-82.
  • Kimoto, K., Will coal save Japan and the world?, Energy & Environment, 2015, 26, 1055~1067.
  • Manabe, S. and Strickler, R.F., Thermal equilibrium of the atmosphere with a convective adjustment, J. Atmospheric Sciences, 1964, 21, 361~385.
  • Manabe, S. and Wetherald, R.T., Thermal equilibrium of the atmosphere with a given distribution of relative humidity, J. Atmospheric Sciences, 1967, 24, 241-259.
  • Manabe, S and Wetherald, R.T., The effects of doubling the CO2 concentration on the climate of a general circulation model, J. Atmospheric Sciences, 1975, 32, 3~15.
  • Newell, R.E. and Dopplick, T.G., Questions concerning the possible influence of anthropogenic CO2 on atmospheric temperature, J. Applied Meteorology, 1979, 18, 822-825.
  • Ramanathan, V., et al., Increased Atmospheric CO2: Zonal and Seasonal Estimates of the Effect on the Radiation Energy Balance and Surface Temperature, J. Geophysical Research, 84, 4949-4958 (1979)
  • Ramanathan, V., The role of ocean-atmosphere interactions in the CO2 climate problem, J. Atmospheric Sciences, 1981, 38, 918-930.
  • Reid,G.C. and Gage, K.S., On the Annual Variation in Height of the Tropical Tropopause, J. atmospheric sciences, 1981, 38, 1928~1938.