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海洋プラスチックごみ問題解決に向けての「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス (CLOMA)」の取り組み(第一部)


CLOMA事務局 次長


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1.CLOMAの紹介

 海洋プラスチックごみ問題は地球規模の新たな課題である。廃プラスチックの海洋への流出は、世界全体で478~1,275万トン/年と推定されている注1)。 日本の廃プラスチック発生量は約900万トン/年であるので、同規模の廃プラスチックが毎年海洋に流出している。プラスチックは生活にかかせない優れた素材であるため、今後も新興国を中心に使用量は更に増加すると予想される。このため本課題はグローバルな対応が必要である。

 「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス」(英文名 : Japan Clean Ocean Material Alliance、略称「CLOMA」)は、海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発・導入を推進し官民連携でイノベーションを加速するために設立された団体である。CLOMAは、そのキャッチフレーズ「企業連携が生み出す新たなイノベーション」に表すように、業界の壁を越えたサプライチェーンをつないで課題解決に取り組むプラットホームである。事務局は一般社団法人産業環境管理協会に設置している。CLOMAは会員の会費で運営され、会員数は設立時(2019年1月)の159会員から2020年10月末現在375会員まで拡大している。

 今なぜCLOMAなのか。日本は1980年代以降、ごみの発生量増加、ごみの埋め立て処分場の逼迫、また豊島問題に代表される不法投棄増大の課題に対し、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法等の個別リサイクル法の施行等により対処し、廃プラスチックの3R (Reduce、Reuse、Recycle)は世界最高レベルにまで向上してきた。一方、この10年間については、世界最高レベルではあるもののリサイクル率の向上は頭打ちになっている。海洋プラスチックごみ問題という新たな地球規模の課題は、個々の企業や業界団体の取り組みで解決するにはあまりにも大きな課題である。企業、消費者、自治体をつないだサプライチェーンの連携により、各者が持つ技術やノウハウを組み合わせながら、社会全体として進めていく必要がある。CLOMAでは、「クリーン・オーシャン」を実現する新たなソリューションを日本から発信していることを目指している。

 CLOMAの運営体制は、総会、幹事会のもと、普及促進部会、技術部会、国際連携部会の3部会と、アクションプラン実行WGから構成されている。会員は、それぞれが希望する部会・WGに参画し、会員主導による活動が展開されている。3部会ではビジネスマッチング、技術セミナー、海外への情報発信や国際連携が行われ、既に事業化に結び付いた成果も得られている。また、共通課題については、5つのキーアクション(プラスチック使用量削減、マテリアルリサイクル率の向上、ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装、生分解プラスチックの開発・利用、紙・セルロース素材の開発・利用)を策定し、キーアクション実行WGの中で課題解決に取り組んでいる。

2.CLOMAアクションプラン

 2020年5月、テーマを絞って活動を深め、早く社会実装化させるためにCLOMAアクションプランを策定・公開し、本格的な活動フェーズに入った。キーメッセージは、「CLOMAは海洋プラスチックごみの削減に貢献するため、2050年までに容器包装等のプラスチック製品の100%リサイクルを目指す」である。また、2030年までの全体目標として、容器包装リサイクル60%とした。リサイクルの定義としては、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルであり、焼却に伴う熱回収・発電によるエネルギーリカバリーは含まない。欧州ではエネルギーリカバリーはリサイクルと定義されないためである。CLOMAの方針としては、廃プラスチックの焼却処分を極力減らし、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルによる資源の有効利用拡大を目指している。

 アクションプランの進め方として、実証テストと標準化策定の2本の柱をおいた。CLOMAの強みであるサプライチェーンをつないだネットワークにより実証テストを行い、技術課題や制度上の障壁を抽出し、更なる技術開発や政策提言に繋げようするものである。標準化の策定・普及については、例えば、業界をあげて策定したPETボトル設計基準(透明ボトル、分別しやすいラベル等)は、世界最高のPETボトルリサイクル率達成につながった日本の誇るべき成果である。設計基準作成のノウハウ・効果を新興国に情報発信することは国際貢献につながるものである。

 アクションプランの5つのキーアクションについて、それぞれWGを設置して検討している。主な技術検討ポイントは次の通り。キーアクション1 (プラスチック使用量削減)として、リサイクル視点から容器包装の設計基準をあらためて見直し、その標準化を図る。キーアクション2 (マテリアルリサイクル率の向上)では、モノマテリアルでの容器包装の開発、多層フィルム分離技術、高度な洗浄技術、再生品の品質保証・高付加価値化。キーアクション3 (ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装)では、食品等の汚れや複合素材への対応、既存の石油精製や石油化学のコンビナートを活用したケミカルリサイクル、LCAによる環境性等の評価。キーアクション4 (生分解性プラスチックの開発・利用)と5 (紙・セルロース素材の開発・利用)では、生分解プラの用途拡大、生分解プラと紙との複合材技術と用途拡大である。

 CLOMAの活動で成果を挙げるため考慮すべきことがある。CLOMAは、競合関係にある企業が多数参加している。競合各社がお互いに牽制し続けるとその特徴が十分に発揮されない。筆者が以前行ったNEDOナショナルプロジェクトの追跡調査では、オープンイノベーションを成功させる要因は、共通の危機感、優れたコア技術、オープンな部分とクローズな部分の仕分け(協調と競争)であると分析した。ソニーのブルーレイディスクやマツダのスカイアクティブエンジンの実用化に繋がった基盤技術の成果はこの良い代表例である。CLOMAのオープンイノベーションでは、上述3条件に加え、容易ではないがクローズな競争領域に踏み込み、競合している企業がタッグを組んで進むことができれば、大きな成果が得られると考える。

 今回の第一部に続き、第二部、第三部では、「マテリアルリサイクルを最大化するためのチャレンジ」と「ケミカルリサイクルの取り組み」について紹介する。

注1)
Jambeck et al. Plastic waste inputs from land into the ocean, Science (2015)