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海洋プラスチックごみ問題解決に向けての「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス (CLOMA)」の取り組み(第二部)

~マテリアルリサイクルを最大化するためのチャレンジ~


CLOMA事務局 次長


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1.日本と欧州のプラスチック再資源化の現状

 日本の廃プラスチック総排出量903万トンの内、処理処分別の割合は、マテリアルリサイクル23%(海外輸出約10%を含む)、ケミカルリサイクル4%、エネルギー回収58%、単純焼却8%、埋立処分6%である注1)。Plastic Europe(the facts 2018)によると、欧州では、国によるバラツキは大きいが各国平均で、現在マテリアルリサイクル32%、ケミカルリサイクル0.1%、エネルギー回収43%、埋立処分25%である。なお、2000年の欧州は、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルを合わせたリサイクル19%、エネルギー回収28%、埋立処分58%であった。ここ20年、欧州は、埋立処分からリサイクルに大きくシフトしている。特にこの10年間、その傾向は顕著である。
 一方、日本のリサイクル率は頭打ちである。その理由は、日本のごみ対策は1990年代のごみ埋立処分場不足の社会的問題に対して、焼却処分によるごみの減容化の推進と循環型社会構築に向けたプラスチックの3R(Reduce、Reuse、Recycle)の推進が同時並行的に進められたことによると考える。特に、日本ではごみの焼却熱を活用した高効率ごみ発電施設の設置が世界に先んじて進められた。高効率ごみ発電施設は、日本の先端材料技術を活用し、ごみに含まれる醤油などの食塩による焼却炉の塩素腐食に対応して開発された優れたものである。発電収入も自治体にとって魅力であり、広く普及した。焼却炉から電気、熱の回収利用は、リサイクルと日本では考えられてきたが、国際的にはエネルギー回収に区分され、リサイクルとは見なされていない。欧州は循環型経済への移行を進め、2018年に欧州プラスチック戦略を策定、プラスチックのリユース・リサイクルを加速している。2000年当時、日本のリサイクル率向上の取り組みは世界に誇れるものであったが、現状の延長では欧州に遅れをとりうる。

 今後のマテリアルリサイクルやケミカルリサイクル促進のための最大のターゲットは、可燃ごみに混入され焼却されているプラスチックの分別回収である。混入され焼却されているプラスチックは日本全体で年間150万トンから200万トンあると想定される。2019年度東京23区の清掃工場で焼却されたプラスチック製容器包装だけでも約41万トンである注2)。日本容器包装リサイクル協会によると、容リ法に基づき、プラスチック容器やPETボトルを分別回収している市町村は全市町村の約2/3である注3)。今後、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを設備投資し拡大しようとしている企業にとっては、原料である廃プラスチックを安定的に、多量に確保することは最大の関心事項であるが、混入され焼却されているプラスチックからの分別回収は、原料確保の大きなターゲットである。
 現在、国の策定した「プラスチック資源循環戦略」(2019年5月31日)の具体的施策を検討するため、経済産業省と環境省の合同審議会が2020年5月より連続して開催されている。事業者と市町村が協力して分別回収する仕組みの改善等、プラスチック資源の回収・リサイクルの拡大と高度化について検討されている。どのような結論になるか現在見通せないが、2020年度末までに具体的な施策が決定される。

2.マテリアルリサイクルの課題と対応

 CLOMAではアクションプランのマテリアルリサイクルWGにおいて、ほぼ単一材料からなる「PETボトル」と複合材料からなる食品包装等の「その他プラ」と2つのチームに分かれて、マテリアルリサイクル率の向上策を検討している。
 「PETボトル」については、2000年容リ法の施行により、PETボトルの回収は順調に進み、現状、日本では85%以上リサイクルされている。一方、欧州のリサイクル率は42%、米国は20%にすぎない。日本のリサイクル率が高い背景には、飲料業界をあげた業界基準の策定がある。PETボトル飲料が市場に登場した当時、PETボトルは透明なものばかりでなく、色付きのものがあった。これを混合回収すると透明なボトルには再生できない。これを透明なものに統一しようと、1990年代、長期間の議論を経て、「指定PETボトルの自主設計ガイドライン」が策定された。このガイドラインに基づきボトルの透明化など各社は新たな投資を行った。現在、PETボトルは透明なほぼ単一材料から作られているため、再生材料としては極めて優れている。再生PET材料は、バージン材よりコストが1.5倍高いにも関わらず、飲料ボトル、衣料、各種シート、ボックス等の成形品の原料として幅広く利用されている。小売り企業の環境配慮志向の高まりに伴い、むしろ再生PET材料は獲得競争になっている。

 CLOMAでは、日本が世界をリードするPETボトルリサイクル率を極限まで高めるため、現在のPETボトル回収率約91%注4)を、2030年までに回収率100%とすることを目標においている。そのためにはいくつかの課題を検討している。まず、可燃ごみに混入され焼却処分されているPETの分別回収の課題、自動販売機横回収のごみ箱化により回収再利用できる質の良いPETボトル減少の課題、更に、一部自治体によるPETボトルとガラスの混合回収によるPETの質の低下の課題である。これらの課題について、自治体や流通業界との連携により、さまざまな実証テストや商業プラント建設を検討している。

 PETボトル以外の「その他プラ」は、廃プラスチックのリサイクル促進の最大の課題である。これは、欧州も同じ状況にある。
 食品包装材などに使われているプラスチックは、食品の賞味期限や安全性を高めるため、複数の材質フィルムによる多層構造となっている。マテリアルリサイクルに活用するには、材質ごと十分に分離しないと再生材の強度品や品質が大きく低下する。自治体などで集められた「その他プラ」はリサイクル業者の施設で、近赤外線分光装置や重液による比重分離によりポリエチレンやポリプロピレンなどの材質にごとに分離されるが、多層フィルムや複合素材プラスチックを十分には分離できないため、バージン材料と同じものには戻すことができない。比較的廉価な製品に再生されるカスケードリサイクルである。また、自治体から回収されマテリアルリサイクル工場に廻された廃プラスチックも再生材となるのは半分の量であり、残り半分は処理プロセスの工程で分別残渣となりセメントキルンや工業炉の燃料としてエネルギー回収されているのが実態である。
 欧州でも「その他プラ(ミックスプラスチック)」のリサイクルは、日本と同様大きな課題となっている。再生品の品質が元の材料より低下するだけでなく、食品包装材として再利用することには消費者の抵抗がある。ミックスプラスチックの課題解決の決め手となるマテリアルリサイクル技術は現在無い。ゴールデンソリューションとして欧州で最も注目されているのは、ケミカルリサイクル技術である。バージン材と同じ材料に戻せる水平リサイクルである。詳細は次回(第三部)で紹介する。
 水平リサイクルへのもう一つ取り組みとしては、材料のモノマテリアル(単一素材)化である。単一素材であれば、PETボトルのようにリサイクルの可能性は飛躍的に拡大する。耐久性、安全性などのため複合素材でつくられていた包装材等を単一素材に変更するためには、その性能の確認とともに単一素材製品のみを収集する社会システムの構築が必要である。
 CLOMAでは、東京都の公募事業を活用し、モノマテリアル容器の実証テストを行っている。これまで、ハンドソープなどの詰め替えパウチは複数の材質フィルムの多層構造で作られている。水平リサイクルを進めるために、単一材料で詰め替えパウチを作成し、江東区の公共施設に配布し使用して頂き、使用後回収し、洗浄・ペレット化して、再度パウチを制作する実証テストである。この実証を通じてモノマテリアリルの課題を抽出し、次の展開を図る。

注1)
プラスチック資源利用協会ホームページ 
注2)
一般廃棄物処理基本計画(原案)/東京二十三区清掃一部事務組合(2019年10月)
注3)
日本容器包装リサイクル協会ニュース(No. 65 May 2014)
注4)
PETボトルリサイクル年次報告書2019/ PETボトルリサイクル推進協議会