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太陽光パネルの大量廃棄時代に備える

廃棄費用の積立制度の議論始まる


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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(「月刊ビジネスアイ エネコ」2019年6月号からの転載)

 2030年後半に予想される太陽光パネルの大量廃棄時代(図1)に備えて、廃棄費用の積立制度を整備しようと、総合資源エネルギー調査会に「太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ(WG)」が今年4月に設置されました。私もWGの議論に参加しており、施策の今後の方向性を探ってみたいと思います。

図1 太陽電池モジュール排出見込み量

図1 太陽電池モジュール排出見込み量
出所:環境省ホームページ「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」(第一版)

不法投棄や放置への懸念

2012年7月にFITが導入されて以降、急拡大した太陽光発電

2012年7月にFITが導入されて以降、急拡大した太陽光発電

 2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が導入されて以降、新たに運転を開始した再エネ発電設備は4605万kW。そのうち太陽光発電は、住宅用(10kW未満)が583万kW、非住宅用(10kW以上)が3722万kWの計約4305万kWと全体の94%を占めています(昨年12月時点)。
 すでに稼働している事業用太陽光発電は50万件以上に上ります。事業用太陽光発電のうち導入容量ベースで約4割を占めているのが小規模事業(10~50kW)です。事業者数の多さから近年、発電事業終了後の設備の不法投棄や放置を危惧する声が聞かれるようになりました。
 実用化されている太陽光パネル(太陽電池モジュール)は、シリコン系(結晶系、薄膜系)と化合物系(CIS/CIGS系、CdTe系)に大別されます。パネルの種類によっては、鉛、セレン、カドミウムなどの有害物質が含まれており、それぞれ適切な方法で処分する必要があります。
 現状では、製品ごとに異なる有害物質の情報が産業廃棄物事業者に十分伝わっておらず、適切な処理が行われていないケースが見られます。また、太陽光パネルは電気機械器具に該当するため、使用済み太陽光パネル由来の「金属くず」「ガラスくず、コンクリートくずと陶磁器くず」「廃プラスチック類」を埋め立て処分する場合は、水漏れ防止設備のある管理型最終処分場に埋め立てる必要がありますが、そうでない処分場に埋め立てられているケースもあります。
 有害物質については、太陽光発電協会(JPEA)が2017年に策定した「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」に基づき、パネルメーカーや輸入販売業者から産廃事業者らに情報提供する必要があります。

源泉徴収式の外部積立

 太陽光発電設備の廃棄処理の責任は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)」に基づき、発電事業者や解体事業者などの排出者側にあります。
 政府は昨年4月、「事業計画策定ガイドライン」を改訂し、これまで努力義務としていた事業用太陽光発電設備(10kW以上)の廃棄などの費用の積み立てを義務化し、同年7月からFITの認定を受けた設備の定期報告の中で、積立計画と進捗状況の報告を義務化しました。
 FITでは、買取価格の算定に廃棄費用が含められており、発電事業者に廃棄費用の積み立てを促していますが、積み立ての水準や時期は発電事業者に委ねられています。定期報告の中の積立進捗状況報告(今年1月時点)を見ると、低圧(20~50kW未満)、高圧/特別高圧(50kW以上)とも実に84%が「積み立てていない」と回答していることがわかりました。そのため、廃棄費用の確実な積み立てを担保する仕組みとして、第三者が積み立てる「外部積立」(図2)が検討されています。

出所:資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ」第1回資料

図2 外部積立のスキーム
出所:資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ」第1回資料

 外部積立には、①発電事業者が外部に積み立てる方式と、②発電事業者の売電収入から積立金を差し引き、費用負担調整機関(FITに基づく再エネ賦課金の単価が全国一律になるよう地域間の調整を行う清算機関)が源泉徴収的に積み立てる方式の2タイプが考えられますが、実効性の面から源泉徴収式が適切ではないかと議論しているところです。
 外部積立は、廃棄資金の確保が確実になる一方、事業者が柔軟に資金を使えないため、積立の引き出し要件次第では、故障設備のリプレースといった再投資がしにくくなる面があります。一方の内部積立は、事業者が柔軟に資金を使えるため、再投資がしやすいというメリットがあります。
 そのため、原則、発電事業者の売電収入から源泉徴収的に積立金を差し引く外部積立を求めつつ、長期安定発電の責任を担うことが可能と認められる事業者には内部積立を認める方向になりそうです。すでに稼働しているものも含め、FITの認定を受けた10kW以上のすべての太陽光発電設備について、廃棄などの処理に必要な資金を積み立てることになります。

今後の論点

 今後の論点として、以下のようなことなどがあります。

(1)
積立金額はどのような水準が適当か。
(2)
分割して積み立てる場合、FITに基づく調達期間(20年間)のうち、どの範囲で積み立てるのが適切か。
(3)
外部積立制度を施行するにあたり、FIT認定事業者は、買取義務者(送配電事業者または小売電気事業者)との間で、FIT法に基づく特定契約(買取契約)を変更しなくても、源泉徴収的に積立金を確保することが制度上の義務として行われるよう、法令や契約で措置できないか。
(4)
積み立てにあたっては、数十万件の事業者の積立金管理、積立金の取り崩し要件の審査などの業務を費用負担調整機関が新たに担うことになるため、民間金融機関と連携して資金管理システムを構築できないか。

 環境省の「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」によると、太陽光パネルの製品寿命は約25~30年とされますが、一部製品は寿命より前倒しで排出されています。2030年代後半には年間約50万~80万トンの太陽光パネルが排出される見通しで(図1)、産業廃棄物の6%にも及ぶとの試算もあります。
 太陽光パネルの多くはガラスでできていますが、リサイクルで価格が付きやすいアルミや銀なども含まれており、リサイクルを進めることで廃棄量を減らす努力も必要です。また、廃棄費用の積立制度と併せて、リユース(再使用)の公的な仕組みも整備し、太陽光発電の長期安定電源化に向けた責任を果たしてほしいと思います。



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