「2050年に向けた環境・エネルギー政策のあり方」(1)

~次世代を担う社員たちが議論!~


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(ⅱ) 再生可能エネルギー先進国からの示唆

 欧州の再生可能エネルギーの普及は、エネルギー自給率の向上と温暖化対策の両面を目的に進んでいる。欧州における太陽光発電・風力の上位国、ドイツとスペインは、電気料金が非常に上昇した。2014年、ドイツが家庭用以外の固定価格買取制度を廃止したところ、太陽光発電の導入量は激減した。2018年の買取価格は、約9円/kWh注5)であり、日本の2.9円/kWhと比べると約3倍の水準になる。ドイツの標準家庭(3人家族)における年間の電気使用量は3,500kWhと言われており注6)、年間、概ね3万円以上を負担している計算になるが、アンケート調査によれば、年間の支払額を認知している人は少ない。

図7 米国と欧州主要国の家庭用電気料金の推移

 スペインは、固定価格買取制度にかかる国民負担の抑制策として、2013年に遡及して、買取価格を引き下げた。これには、事業者による訴訟もあったが、最高裁は「政府は自由に法律を変える権利がある」として、訴えを退けた。その結果、事業者は政策変更のリスクを認識することとなり、風力・太陽光発電ともに、殆ど導入が進まなくなった。
 では、再生可能エネルギー普及によりCO2排出量を削減できたのだろうか。ドイツでは、1990年から2000年にかけて、CO2排出量は大きく減少した注7)。これは、ベルリンの壁の崩壊以降、旧東ドイツのエネルギー効率の悪い設備を順次更新したことによる。

図8 ドイツの温室効果ガス排出実績と目標

 しかし、1990年比で2020年に40%削減するとの目標については、ドイツは達成は困難と、目標を放棄した。これは、周辺産業を含め炭鉱関連業務に従事する人達4万6,000人の雇用確保と電気料金抑制のためとみられる。温暖化対策に熱心と言われるドイツでも雇用問題や経済政策が優先されることもある。
 再生可能エネルギーは経済政策にプラスの効果があるとされるが、果たしてそうだろうか。太陽光発電のモジュール生産企業ランキング・トップ10によれば、2010年には京セラ、シャープが入っているが、2017年では中国企業が9社(※カナディアン・ソーラーの主力工場は中国)を占めている注8)
図9 モジュール生産量企業ランキングの推移

 次に雇用者数の変化をみると、ドイツ・イタリア・スペインにおける太陽光関連雇用者数は、この10年近くで激減した。これは、雇用のうちの殆どが建築関係と販売が中心となっているためで、新規の設備導入が殆どなくなると、雇用は激減する注9)

図10 独伊西の太陽光関連雇用者数の変化

注5)
2018年の賦課金単価は、6.792セント/kWh。 https://www.bmwi-energiewende.de/EWD/Redaktion/EN/Newsletter/2017/16/Meldung/topthema.html
注6)ドイツエネルギー・水道事業連合会(BDEW)参照。
https://www.bdew.de/
注7)
German Environment Agency, "National Inventory Report for the German Greenhouse Gas Inventory 1990 – 2016", https://www.umweltbundesamt.de/sites/default/files/medien/1410/publikationen/2018-05-24_climate-change_13-2018_nir_2018_en.pdf , Figure 1: Development of greenhouse gases in Germany since 1990, by greenhouse gases
注8)
詳細は、PV Techホームページ参照。https://www.pv-tech.org/
注9)
http://www.solarpowereurope.org/home/

次回:「2050年に向けた環境・エネルギー政策のあり方」(2)~次世代を担う社員たちが議論!~ へ続く



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