ユッカマウンテン使用済燃料処分場計画プロジェクトを巡る議会の動向


環境政策アナリスト


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「一般社団法人 日本原子力産業協会」からの転載:2018年6月13日付)

 ユッカマウンテン使用済燃料処分場プロジェクトについては、前オバマ政権のもと開発がストップさせられていたが、トランプ政権になって、エネルギー省(DOE)と原子力規制委員会(NRC)への費用支出を認め、再び動き出した。しかしながら、プロジェクト遂行のためには連邦大では二つの障壁がある。ひとつはネバダ州の土地および地下水の利用に関する規制、そして議会における予算措置である。そもそもユッカマウンテン処分場プロジェクトを巡っては、1982年の放射性廃棄物政策法で連邦政府は1998年までに使用済燃料の所有権を得ることになっている一方、1983年から1987年までの間に複数の処分場サイトを選定することになっていた。1998年のデッドラインが近づいた1987年、サイト選定がなかなか進まない中、議会は1987年放射性廃棄物政策修正法を通過させ、ユッカマウンテンサイトに焦点を絞らせることとした。これに対してユッカマウンテンが位置するネバダ州は連邦政府に反発し、ネバダ州選出のリード上院議員(民主党、引退)そしてヘラー上院議員(共和党ネバダ州選出)が議会で抵抗を続けてきた。

下院放射性廃棄物政策法修正法案可決

 今回、下院シムカス議員(共和党イリノイ州選挙区 エネルギー商業委員会環境小委員会委員長)が放射性廃棄物政策法修正法案を提案、5月10日、340対72の超党派による大差で可決、下院を通過した。現在は上院に審議の場が移ろうとしている。このときエネルギー商業委員会ウォルデン委員長およびシムカス議員は、「使用済燃料および軍事用放射性廃棄物処分についての納税者、電力消費者、米国内自治体に対する32年前の約束を守るのに長い時間をかけた。今回の放射性廃棄物政策法修正法案はその方向に向かう常識的一歩である。本日の超党派的可決を誇る。上院はこの国家的優先事を解決するために早く法案を通過させ、使用済燃料を永久処分場へ送り、運営させることを30州の121の自治体に確約をする必要がある」と述べた。
 放射性廃棄物政策法修正法案の内容は以下のとおりである。

土地・地下水の権限
 ひとつにはネバダ州の地下水の利用を認めさせ、連邦の権限下に置くものである。NRCはこれまでの検討の中で認可申請に伴う予備的な作業を行ってきたが、NRCにとって建設認可はできないとの判断を示してきた。なぜならば合衆国憲法では州を超えた利用は連邦議会の権限としているため、DOEは当該施設の土地および地下水利用について権限を持たないからとしていた。

民間廃棄物施設との競合
 次にDOEに対して中間貯蔵の必要性を検討することを求めている。検討の結果、もし中間貯蔵が必要となった場合、連邦施設のほうが早急に完成し、DOEが経済性があると判断を下さない限り、民間施設(現在ホルテックおよびウェイスツ・コントロール・スペシャリスツ社がそれぞれニューメキシコ州およびテキサス州で計画している中間処分場事業)での貯蔵を優先して進めなければいけなくなる。

DOE内組織
 同法ではDOE内に民生用放射性廃棄物管理室(OCRWM)を再設置することとしている。これはオバマ政権のもと閉鎖されていた組織である。そしてその長はFBI長官のように政治的に独立するとし、5年の任期を与える。

予算要求
 さらに同法は1982年放射性廃棄物政策法で導入された放射性廃棄物基金(電力は料金に0.1セント/kWhを上乗せし支払う)の再構築をし、NRCがユッカマウンテン使用済燃料処分場プロジェクトにライセンスを発給するまでさらなる支払いをさせないことにしている。これらのために予算の歳出のための措置が必要となってくる。トランプ大統領は、2018年/2019年予算においてユッカマウンテン使用済燃料処分場プロジェクトを進めるために、それぞれDOEに1億2000万ドル、NRCに3000万ドルを要求している。

今後の見通し

 上記下院での可決にも係らず、上下両院で可決した2018年度包括予算割当法には結果して盛り込まれなかった。理由はヘラー上院議員を中心とした反対のためである。ヘラー議員は2018年11月に予定されている中間選挙で再選を目指すが、民主党のローゼン候補に苦戦を強いられている。上院マッコーネル院内総務(共和党)は上院の勢力が拮抗していることに鑑み、ヘラー議員に同法案を葬り去らせることでユッカマウンテンプロジェクトに関する勝利を演出させ、再選を確かなものにさせようと考えている。ヘラー議員はネバダ州地元紙に「わたしがユッカマウンテンを進めるかストップさせるかの鍵を握っている。わたしだけがストップさせられる」と述べている。またDOEペリー長官に「上院ではユッカマウンテンは未来はない」と敗北を認めさせた。また、ネバダ州選出のもうひとりの上院議員であるコルテス・マスト氏(民主党)は、放射性廃棄物基金からユッカマウンテン使用済燃料処分場プロジェクトにライセンスのために1000万ドル支出されることが発覚したことを受けて、「議会はライセンスのプロセスはストップさせており、このように基金の繰越金からそのために引き出しをしようとすることに強い懸念を覚える」と厳しく批判をしている。今回の顛末は、表面的には推進する側にとっては結果的には敗北、反対派からは勝利という受け止め方をされている。しかしながら、共和党にとって重要なことは今後ユッカマウンテンプロジェクト問題の主導権を握り、予算化をさせるためにも、11月の中間選挙で両院の過半数を握ることである。仮にヘラー議員が敗北をしても共和党が多数を握り、さらに上積みをすることができれば、マコーネル議員にとって懸念材料はなくなる。またヘラー議員が勝利したとしても同様である。その場合共和党はユッカマウンテンプロジェクトを進めるために、ヘラー議員の立場に係らず、今後、放射性廃棄物政策法修正法案およびその予算を盛り込んだ歳出法を可決することができるであろう。中間選挙後、ユッカマウンテンプロジェクトの動向には注目を要する。

出典:
国際技術貿易アソシエイツ
4月26日付ジャッキー・ローゼン議員プレスリリース
5月7日付ディーン・ヘラー議員プレスリリース
5月19日及び21日付ラスベガスレビュージャーナル