薩摩川内市で次世代エネルギーの普及加速

未来を見据え、総合エネルギーの拠点化へ


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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(「月刊ビジネスアイ エネコ」2018年2月号からの転載)

 先日、鹿児島県薩摩川内市を訪ねる機会がありました。同市には九州電力の川内原子力発電所と火力発電所2基が立地し、長年にわたり九州エリアの基幹エネルギー供給拠点として重要な役割を担ってきました。そのまちで今、太陽光、風力、蓄電池、エネルギーマネジメントシステムの普及や照明のLED化などが加速しています。

時代の変化に対応

 薩摩川内市の“玄関口”である川内駅に降り立つと、駐車場の屋根に設置された太陽光発電設備と小型風力発電設備が目に入ってきました(写真1)。同市商工観光部次世代エネルギー対策監の久保信治氏が、次世代エネルギーの整備状況について説明してくれました。
 「2016年3月、川内駅の西口駅前広場に太陽光(出力30kW)、小型風力(同5kW)、蓄電池(容量33.7kWh)を整備しました。発電した電気は平常時、駅の東西自由通路の照明、エスカレーター、エレベーター、給水ポンプなどの一部に使われています。非常時は周辺が防災拠点となり、非常用電源として使われます。また、2年前に国土交通省の補助を受け、川内駅と川内港高速船ターミナル間を結ぶ電気バスを導入しています」

写真1 川内駅に整備された太陽光発電設備=鹿児島県薩摩川内市

写真1 川内駅に整備された太陽光発電設備=鹿児島県薩摩川内市

―――次世代エネルギーの普及を進める理由は?
 「11年3月の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故以降、エネルギー政策は新しい展開を迎えています。当市も『次世代エネルギーを活用したまちづくり」を官民一体で進める必要があると考えています」

太陽光・風力・小水力設備

写真2 ENEOS グローブ薩摩川内太陽光 第1・第2 発電所

写真2 ENEOS グローブ薩摩川内太陽光
第1・第2 発電所

 市内にある太陽光発電所の中で最大規模のENEOSグローブ薩摩川内太陽光第1・第2発電所(写真2)を見学しました。13年9月26日に完成し、最大出力は計3.5MW(3500kW)。年間発電電力量は、一般家庭約1100世帯の年間電力消費量に相当します。
 このほか、同市の総合運動公園では、駐車場の屋根などに設置した太陽光発電システム(出力計670kW)が14年2月から稼働しています。平常時は630kW分を九州電力に売電し、40kW分を自家消費しています。17年1月に定置型蓄電池を導入し、停電時には公園内の施設に電力を供給します。電気自動車(EV)の普及も進めており、公園内には充電器が設置されています(写真3)。このほか市内8カ所に市は急速充電器を設置しています。

 また、同市高江町柳山から久見崎町笠山周辺にかけて、柳山ウインドファームが風力発電所(写真4)を運営しています。出力2300kWのドイツ製風車12基(計2万7600kW)を設置し、14年10月から稼働しています。年間発電電力量は、一般家庭約1万5000世帯の年間電力消費量に相当します。大型の風車(全高119m、ブレード径82m)は近くで見ると迫力があります。
 この日は風車がよく回っていましたが、騒音はそれほど気になりません。騒音に配慮してギアレス構造を採用し、ギアボックスの騒音をなくしています。
 次に小鷹水力発電所(最大出力30kW、写真5)に案内していただきました。同市と建設コンサルタント会社大手、日本工営(東京)が共同で、川内川支流の田海川に建設された農業用取水堰を活用し、らせん水車(スクリュー形状の羽根が3枚ついている水車)の小水力発電設備を15年6月に設置しました。経済産業省の補助を活用しています。久保対策監に説明していただきました。
 「らせん水車は、ほかの種類の水車と比べて構造が簡単なため、設置時のコストやメンテナンスの労力を減らせる可能性があります。ただ、国内での導入実績が少なく、効率特性や環境への影響などを調べるため実証を行っています」
 「発電した電気は近くの物産館に供給しています。余った電力はEVに給電し、物産の配送などに活用しています。エネルギーを感じながら自然と親しむ憩いの場になればと思っています」

写真3 総合運動公園に設置されたEV用充電器1基と非常用コンセント5基

写真3 総合運動公園に設置されたEV用充電器1基と非常用コンセント5基

写真4 柳山ウインドファーム

写真4 柳山ウインドファーム

写真5 小鷹水力発電所

写真5 小鷹水力発電所

竹バイオマス産業都市構想

 同市は、竹の放置林を地域資源として活用する構想を打ち出し、国の16年度「バイオマス産業都市」に選定されています。
 市の「竹バイオマス産業都市構想」では、竹から抽出したセルロースナノファイバー(CNF=植物由来の先端素材)の可能性に着目。17年6月から、中越パルプ工業川内工場内のプラントで、CNFの商用生産が始まっています(年間生産量100トン)。CNFをプラスチックに混ぜることで、自動車部品などを軽く強くすることが期待されています。
 「市として、竹CNFの利用促進を図り、竹の収集、処理、運搬、竹CNF製造の流れの中で、地域産業の振興、雇用創出を目指しています。また、竹は塩素・カリウム・ケイ素などを含むため、バイオマス発電には不向きとされていましたが、新技術の開発でバイオマス発電の可能性も高まっており、実現につなげたいと思っています」(久保対策監)
 同市の次世代エネルギー関連の取り組みとしては、スマートハウス実証事業、LED街路灯導入事業、超小型モビリティ導入実証事業、上甑島(かみこしきしま)でのEV40台導入とリユース蓄電池導入実証事業など、多くのプロジェクトが進行中です。
 「10年、20年先を見据えた次世代エネルギービジョンを、市民の理解を得ながら、スピード感をもって具体化していきたい。目指すのは、原子力、火力、次世代エネルギーがそろった総合エネルギー拠点です。エネルギーの安定供給に貢献するとともに、まちを持続可能な形で発展させていきたいと考えています」
 次世代エネルギーの普及に取り組む同市の事例は、他の原発立地地域のまちづくりで、大いに参考になると思われます。



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