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さいたま新都心 地域熱供給システムを見学


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


(「月刊ビジネスアイ エネコ」2017年1月号からの転載)

 先日、さいたま新都心(さいたま市中央区、写真1)を訪ね、大規模な地域熱供給システムを見学する機会に恵まれました。熱供給事業とは、冷水や温水などを1カ所でまとめて製造し、熱導管を通じて複数の建物に供給する事業のこと。熱をまとめて製造・供給することによる省エネ性の高さと、地球環境にやさしい最新設備が導入され、注目されています。

写真1 さいたま新都心。白線で囲まれた部分が、さいたま新都 心地域冷暖房センターの熱供給エリア=さいたま市中央区

写真1 さいたま新都心。白線で囲まれた部分が、さいたま新都
心地域冷暖房センターの熱供給エリア=さいたま市中央区

エリア内の冷暖房・給湯

 さいたま新都心は、旧浦和・旧大宮・旧与野の3つの市域にまたがる新しい街です。このエリアの旧国鉄大宮操車場跡地と民有地(計47.4ヘクタール)を再開発し、中央省庁の一部や関係機関を移転し、業務核都市の中核として整備を進めています。開発が先行する西地区(約27ヘクタール)では、2000年4月から埼玉県で唯一の熱供給事業の運用が行われています。
 事業を担う東京ガスエンジニアリングソリューションズが運営する「さいたま新都心地域冷暖房センター」(地冷センター、写真2)には、蒸気吸収式冷凍機7台、水管式ボイラー2台、炉筒煙管式ボイラー3台、ガスタービンコージェネレーションシステム(1台2000kW)、冷却塔設備5基、受変電設備などの最新式のエネルギーシステムが導入されています。

写真2 さいたま新都心地域冷暖房センター

写真2 さいたま新都心地域冷暖房センター

 地冷センターでは、都市ガスを利用して冷水、蒸気などの熱媒をつくり、配管を通して一定地域内の複数ビルに必要なだけの熱を供給。供給先では冷暖房や給湯の熱源として使っています。この地域熱供給の導管の総延長は約8km。主要導管の大部分は、水道や電力などとともに共同溝内に敷設され、周辺環境に配慮した形になっています。現在、さいたまスーパーアリーナ、さいたま新都心合同庁舎1号館、2号館、民間企業が入るビルなど10件に熱供給を行っています。

地冷センターの見学

 東京ガスエンジニアリングソリューションズの地域エネルギー事業部さいたま新都心地域冷暖房センター所長、宮原忠人氏に地冷センター内を案内していただきました。
 「ここでは2つの方式のボイラーを採用しています。1つは『炉筒煙管ボイラー』で、保有水量が非常に大きく、圧力や水位の変動が安定するものです。もう1つの『水管ボイラー』はコンパクトで大容量の蒸気を発生させることができます。どちらのボイラーも低NOxバーナーと排ガス再循環システムが採用され、NOx(窒素酸化物)の排出量を抑えるものです」
 ボイラーでつくられた蒸気の熱を使って冷水をつくるのは、蒸気吸収冷凍機という装置です。地冷センターには世界最大級となる1万7600kW(5000RT)の蒸気吸収式冷凍機(写真3)が3台導入されています。この冷凍機1台で、さいたまスーパーアリーナ(収容人員3万7000人)の冷房を賄うことができるそうです。オゾン層を破壊するフロンを使っていないため、地球環境にやさしい設備でもあります。
 冷凍機で使用され温度の上がった冷却水は、屋外の冷却塔(写真4)で空気を利用して冷やす仕組みです。効率よく冷やすには、できるだけ空気に触れる面積を広く、時間を長くする必要があるため、限られたスペースの中で冷却水を効率的に冷やせるような設計がなされています。屋上に見上げるほど背の高い冷却塔が設置されているのには驚きました。
 プラントの地下には3000トンの工業用水が貯められており、通常は冷却水の補給水として使われていますが、火災の際は地元消防本部に防火用水として提供されるそうです。
 「ガスタービンコージェネレーションシステムも導入していますが、発電した電気はプラント内設備で自家使用し、余剰電力は系統に送って売電しています。ガスコージェンネレーションのエネルギー効率は70~80%と高く、大幅な省エネとCO2排出削減に貢献しています」(宮原氏)
 地域熱供給を受け入れた建物では、冷暖房の熱源機器を置く必要がなく、冷却塔や煙突も不要となり、かなりの省スペース化を図ることができます。また、各建物で燃料などの危険物の貯蔵や取り扱いが不要になり、災害発生時の危険が減ることもメリットでしょう。これは都市景観の向上にもつながります。

写真3 世界最大級の蒸気吸収式冷凍機

写真3 世界最大級の蒸気吸収式冷凍機

写真4 冷凍機の冷却水を冷やす屋外の冷却塔

写真4 冷凍機の冷却水を冷やす屋外の冷却塔

2つの病院で新たなサービス展開

 2017年1月からは新都心に完成した2つの新しい病院(写真5)、「埼玉県立小児医療センター新病院」(建築面積約8063㎡)と「さいたま赤十字病院新病院」(建設面積約8860㎡)が本格的に地域熱供給先に加わります。埼玉県立小児医療センターは、開院以来30年余が経過し、建物の耐震化などのため建て替えられました。さいたま赤十字病院は、施設の老朽化や多様化する医療ニーズに対応するため新都心に建設されました。2つの病院が隣接立地しているメリットを生かすため、1階から6階まで渡り廊下で自由に行き来できる設計になっており、エネルギー使用の合理化やエネルギー源の多様化、バックアップ体制の強化を図る計画です。

写真5 埼玉県立小児医療センター新病院 (左)とさいたま赤十字病院新病院(右)

写真5 埼玉県立小児医療センター新病院
(左)とさいたま赤十字病院新病院(右)

 東京ガスの都市エネルギー事業部埼玉都市エネルギー部、日出間峻氏にエネルギーサービスの概要についてうかがいました。
 「私たちが提案するサービスのポイントは3つあります。1つ目は、地域熱供給(冷暖房)により、冷水と蒸気を病院で活用していただきます。病院でも自前の熱源をお持ちですので、電気とガスのベストミックスの提案をさせていただいています。2つ目は、ガスコージェンレーションシステムを導入し、廃熱が余っている時間帯にジェネリンク(排熱投入形吸収冷温水機)の冷水を病院から他の施設へ供給し、エネルギーネットワークの強化を進めます。3つ目は、これらの設備の24時間遠隔監視、メンテナンスおよび省エネ運転支援などを15年間、責任を持ってやらせていただきます。国の分散型電源導入促進事業費補助金を活用し、初期投資費用をできるだけ低減し、BCP(事業継続計画)強化を図ります」
 地冷センターからの一方的な熱供給に留まらず、エネルギーネットワークの強化を図る取り組みも加わり、さいたま新都心のエネルギーインフラ整備は進化していきます。


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