米大統領選、トランプ氏が大統領になる日は来るのか(2)

~シンクタンクのアナリストはどう見る?~


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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※【米大統領選、トランプ氏が大統領になる日は来るのか()】

 大統領選の最大のヤマ場、今月1日(火)南部のテキサス州など11州で一斉に予備選挙や党員集会が行われた「スーパー・チューズデー」の結果は、共和党は不動産王ドナルド・トランプ氏、民主党はヒラリー・クリントン元国務長官(ニューヨーク州選出)の勝利に終わった。先月ワシントンD.C.でヒアリングしたシンクタンク(民主党寄りとされる)アナリストの予見した通りの結果となった。

 その後も各候補者は、総力を挙げて選挙戦に臨んでいるが、日本時間の今月7日(月)時点で、これまで民主党の予備選挙や党員集会が行われた19州と1米領のうち、最有力のクリントン氏は合計12州を制し、バーニー・サンダース上院議員(ヴァーモント州選出)が8つの州を制し、追い上げを図っている。これまでに獲得した代議員の数は、クリントン氏が1129人、サンダース氏が498人で、クリントン氏が大幅なリードしている(民主党の候補指名の獲得には7月の全国党大会で総代議員4765人のうち、代議員2383人が必要)。

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民主党 ヒラリー・クリントン氏とバーニー・サンダース氏(出所:CNN)

 一方、7日時点で共和党では候補は4人に絞られ、トランプ氏がスーパー・チューズデー以降大きくリードし、合計12州で勝利。次いで、テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)が6州で勝利を治め、若手のホープとされるマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)は2州・領の勝利に留まっている。獲得代議員は、トランプ氏384人、クルーズ氏300人、ルビオ氏が151人で、オハイオ州のジョン・ケーシック知事はまだ勝利した州はないが、比例配分で代議員37人獲得している。共和党の候補指名獲得には、7月の全国党大会で総代議員数2372人のうち、代議員1237人が必要とされる。勢いに乗るトランプ氏を保守強硬派のクルーズ氏がどれだけ追い上げられるかが焦点になっている。

 スーパー・チューズデー以降、共和党幹部や歴代の閣僚経験者らが次々にトランプ氏に対して、「詐欺師」「偽物」といった批判を浴びせ、大統領としての資質や適性について疑問を投げかけていることがメディアでも伝えられている。共和党の重鎮らがトランプ氏に集中砲火を浴びせている異例の事態から、党内部でもトランプ旋風を止めるのに必死だということがわかる。

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共和党 ドナルド・トランプ氏とテッド・クルーズ氏 (出所:CNN)

 先月ヒアリングをしたシンクタンクのアナリストは、トランプ氏が勝ち続ける理由のひとつとして、2014年に米連邦最高裁が、個人から政治家への献金の上限を撤廃する判断を下したことを指摘した。この最高裁の判断は、大統領選の2年間について、一人の政治家に対する献金の上限を維持する一方、個人から複数の政治家に献金できる総額の上限を撤廃するというものだ。政治資金の制度改革を求める政治家からは、政治に対して利益団体が過度の影響力を持つようになると批判の声があがっている。大金持ちのトランプ氏は、他の候補者と違い、選挙運動資金は自力で賄えるとして、利益団体からの資金や献金に頼っていないことを明言しており、その独自性を支持する国民は少なくない。

———トランプ氏が次の大統領になる可能性についてはどう思うか?

 「トランプ氏が大統領になる可能性があるかという質問を6週間前に聞かれたならば、自信をもって「NO!」と断言しただろう。しかし、今は断言できない状況だ。これまでの過激な言動、また不法移民全員の強制送還やイスラム教徒の入国全面禁止などトランプ氏が掲げる政策は危うい。しかし・・・、思い起こすと、かつてドナルド・レーガン元大統領が大統領選に出馬した当初、「映画スターが大統領なんて!」と多くの人々が思ったものだ。ところが、レーガン氏は当選し、2期8年間の任務をまっとうし、多くの国民に支持された大統領として名を残した。実業家として成功したトランプ大統領の誕生がないとは言えない。クリントン氏が最後は勝つと思っている自分としては、トランプ大統領など考えたくもないが・・」と首を振った。

 両党の候補者選びは、今月15日(火)、大票田の南部フロリダ州など5つの州で予備選挙が行われ、次のヤマ場を迎えることになる。トランプ氏とクリントン氏が指名獲得に向けてさらにリードを広げる展開になるのか、注目だ。

◎次回、「米大統領選、トランプ氏が大統領になる日は来るのか()」へ続く

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