米国の再生可能エネルギー政策(6)~風力発電の新時代3


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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 エネルギー省(DOE)が2014年5月に発表した「DOE Wind Vision」(2008年の「20% Wind Energy by 2030」の改訂版)によると、2013年末時点で米国に導入された風力発電設備容量は61GWで、5万2千台の風車が建ったという。風力発電は2006年から2014年にかけて新規に設置された電源の33%を占め、現在の米国の全発電電力量の約4.6%を賄っている。
 図3は、国立再生可能エネルギー研究所(NREL: National Renewable Energy Laboratory)による風力マップで、濃紺色のエリアは安定的な風力資源がある地域、水色は開発段階にある地域、オレンジ色のエリアは将来的に開発が期待される地域を示している。


(図3)NRELホームページより「風力発電開発の将来ポテンシャル」

(図3)NRELホームページより「風力発電開発の将来ポテンシャル」

 2015年3月、DOEは、風力発電の成長が経済・社会・環境にもたらす利益を具体的な数値で示した、2050年までの展望を示した報告書「風力の展望:米国における風力発電の新時代」を公表した。この新たな報告書の中で、DOEは、発電用地と送電網の開発を進めながら技術の向上によりコスト低減を図り、風力発電による電力を全米50州で経済的に供給可能だと予測している。国内では2013年時点で推計5万人を超える雇用があるが、2050年までに風力産業全体で60万人を超す雇用が生まれると予想する。健康や環境面の利益についても触れ、2050年までに温室効果ガス排出を123億トン以上削減し、電力部門全体の累積経費を1490億ドル低減でき、風力発電がもたらす経済価値は4000億ドルに上ると述べている。DOEは、風力発電の総発電電力量に占める割合を2020年に10%、2030年は20%、2050年は35%を目指すとしているが、将来的にすべての州で風力エネルギーの開発が可能になることを示した風力マップを公表している。


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 2030年から2050年にかけて、風力発電に適した強風が吹くエリア~テキサス州、イリノイ州、アイオワ州、インディアナ州、モンタナ州においては、さらに風力発電への投資が行われ開発が進むことが予想されている。2030年にはタワーが高い風車の登場により、強風が吹かず、これまで風力発電がそれほど導入されてこなかった南東部の州においても普及する見通しとなっている。洋上風力発電は、将来的に全米において普及が進み、クリーンエネルギーの主力になると予測している。まさに米国では「風力の新時代」の風が吹いている。

◎次回は、「米国の再生可能エネルギー政策(7)~強化地熱発電システム(EGS)開発」です。

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