米国のCCSプロジェクト(3)~フューチャー・ジェン(未来の発電)プロジェクトの試行錯誤


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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(前回は、「米国のCCSプロジェクト(2)~CCS商用化・普及に向けた課題、取り組み」をご覧ください)

 エネルギー省(DOE) は 2010年8 月 5 日、イリノイ州ジャクソンビルに、 CCSを併設した 200MWの酸素燃焼石炭火力発電所を建設する「フューチャー・ジェン(FutureGen)2.0」プロジェクトを発表した。今回の「フューチャー・ジェン 2.0」の発表は、もともと同州のマトゥーンにCCS 併設の275MWガス化複合発電(IGCC)の建設を予定していた「フューチャー・ジェン」への支援中止を意味していた。

 当初のフューチャー・ジェン・プロジェクトは、ブッシュ前大統領のエネルギー政策の目玉の一つとして2003年から取り組んできたもので、世界最大規模の石炭ガス化複合発電(IGCC)と二酸化炭素(CO2)回収・貯留プラントを新たに建設し、石炭ガス化発電で発生するCO2を100%分離回収して地中貯留することにより、ゼロ・エミッションを達成しようという世界初の大規模な実証試験を行う計画だった。しかし、予想コストが当初の10億ドルから15~18億ドルに膨れあがり、財政難を理由に2008年1月実質的にプロジェクトは中断していた。

 規模を縮小し、仕切り直しをした今回のフューチャー・ジェン2.0プロジェクトは、DOEの支援のもと、企業連合のフューチャージェン・アライアンス(FutureGen Alliance)が主導する形で進められることになった。米国再生・再投資法(ARRA :American Recovery and Reinvestment Act )の予算から10億ドルの財政支援が投じられることが発表され、アメレン・エナジー・リソース社、バブコック&ウィルコックス(B&W)社などが参加を表明している。プロジェクトでは、マトゥーンの西に約220キロ、イリノイ州メレドシアにある石炭火力発電所で、毎年排出量の90%に相当する130万トンのCO2 を回収し、 地下深くポンプに注入し、長期貯留する計画だ。

 純酸素ベースの行程で石炭を燃焼すると、排出ガスの成分がほぼ純粋なCO2となり、スモッグの原因となる汚染物質や水銀の除去にかかるコストやエネルギーを削減でき、圧縮や貯留に適したCO2燃焼排ガスになるという。環境保護庁(EPA)は、2014年9月、地下への炭素貯留に対する認可を、フューチャー・ジェン2.0に初めて発行している。

図1

出典:FutureGen Allianceホームページより FutureGen 2.0 Carbon Capture and Storage
深さ 4,000 フィート(1,220 メートル)に及ぶ4つの注入井の採掘が行われる計画

 ところが、DOEは、2015年2月、フューチャー・ジェン2.0プロジェクトへの支援を延期すると発表した。理由は、2015年9月末の期限までに米国再生・再投資法(ARRA)からの10億ドルの予算を使いきることが無理だと判断したためだという。ニューヨークタイムズ紙は、このニュースを、「このプロジェクトは中止・開始を繰り返してきた長い歴史を持つ(The project has a long history of stops and starts.)」と皮肉をこめて報じた。一部のメディアはDOEが支援を打ち切り、プロジェクトの中止を指示したと報じている。

 今年3月にワシントンDCでいくつかの政府系関係機関に、CCSの商用化の実現可能性についてヒアリングした際、「初期投資に膨大なコストがかかり、経済性に大きな課題がある。2020年までに実用化するのは難しいのではないか」、「CCSは経済的な問題や環境面への影響、技術的な課題も多い。欧州でも財政的または政治的理由などでCCSプロジェクトの中止が相次いでいる」、「長期に渡り大量のCO2を安全に貯留できるのか、地理的にどこまでの貯留が可能なのか、より詳細な解明が必要だ」といった厳しい声は多かった。民主党寄りのシンクタンクでもCCSの実用化・普及に厳しい見方をしていたことに、私個人は米国のCCS技術開発に期待があっただけに少々驚きもした。

 そうした懐疑的な声を払しょくするように、DOEは、2015年4月22日付のプレスリリースで、同省が支援するCCSプロジェクトにより1,000万トンのCO2が回収され、画期的な成果を上げていると発表した。回収・貯留したCO2排出量は、路上から年間200万台の乗用車を排除することに等しいという。アーネスト・モニツDOE長官は、「米国はCCSに他国よりも多額の政府投資を行ってきたが、これらの投資に対し民間資本もつくようになってきた。温室効果ガス排出削減と気候変動との戦いにCCSは不可欠である」と語っている。クリーン・コール技術の中でもCCSの急速な開発と展開は、クリーン・エネルギー競争において米国がリーダーシップを握ることを象徴するものだと表明している。

 DOEの期待感は依然あるものの、シュランベルジュ、アルストムなどCCSの技術開発を担ってきた有力企業が依然ほどコミットしなくなってきており、民間のインセンティブは薄くなってきている状況ではないかと思われる。CCSの実用化・普及に向けて様々なハードルが立ちはだかり、やはりCCS開発はかなりの時間と投資を要することを前提に、取り組む覚悟が必要なのだろう。中長期的な視野に立ち、イノベーションが起きることを期待したい。



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