米国のCCSプロジェクト(3)~フューチャー・ジェン(未来の発電)プロジェクトの試行錯誤


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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【参考:米国内のCCSプロジェクト一覧】

 Carbon Capture & Sequestration Technologies @ MIT のホームページによると、現在、計画中を含めた進行中の米国内のCCSプロジェクト(パイロット試験を除く)は20件あり、その内訳を(1)~(3)に示す。中止または延期となっているプロジェクトは(4)の通り13件となっている。

(1)
大規模な「発電所CCSプロジェクト」は、計画中2件、建設中2件のあわせて4件である。発電所 CO2 の実用ベースでの適用事例はまだない。石油技術センター(JPEC)2014年9月レポートによると、発電所CCSプロジェクトの有力事例、ケンパー発電所では回収したCO2を近隣油田のEOR(石油増進回収)用に販売する計画で、 DOE から 2.7 億ドルの助成金を得て、4.12 億ドルの税控除も認められていた。しかし、当初の建設費用 29 億ドルが55 億ドルに膨み、2014 年 6 月運転開始予定が延期となっている。

図2

(Carbon Capture & Sequestration Technologies @ MIT ホームページより)
米国内の発電所CCSプロジェクト(2015年2月5日時点)

(2)
「非発電所CCSプロジェクト」は、化学プラントや製油所、石油採掘などから大量に排出されるCO2を回収・貯留するもので、「US Regional Sequestration Partnership’s CCS Projects(地域的炭素隔離パートナーシップ)」と「US Industrial CCS Projects(産業用CCS)」のあわせて10件ある。CO2貯留形態は、石油採掘での炭酸ガス圧入による石油増進回収(EOR :Enhanced Oil Recovery)と地中深くにある含塩水層への圧入(Saline:Saline Reservoir)とに大きく分かれている。


図3

米国内の非発電所CCSプロジェクト(2015年1月7日時点)

(3)
「Commercial EOR Projects using Anthropogenic Carbon Dioxide(人為的起源排出のCO2を利用する商用EOR)プロジェクト」は6件が運転中で、そのほとんどは天然ガス処理の業種で、貯留形態は石油増進回収(EOR)である。


図4

米国内のCommercial EOR Projects using Anthropogenic Carbon Dioxide
(人為的起源のCO2を使った商用EOR)プロジェクト(2015年1月7日時点)

(4)
米国内で中止または延期となったCCSプロジェクトは、マトゥーンで予定されていたフューチャー・ジェン・プロジェクトを含め13件となっている。

図5

中止または延期の米国内のCCSプロジェクト(2015年4月15日時点)

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