省エネの「ダブルカウント」に要注意

―京都議定書目標達成計画の失敗を繰り返すな― 


(一財)電力中央研究所/IPCC統括執筆責任者


図6 暖房エネルギー需要の要因分解。暖房サービスの向上・増大が、効率向上(機器・断熱)の効果を上回った。出典:(高田しのぶ、西尾健一郎2009)

図6 暖房エネルギー需要の要因分解。暖房サービスの向上・増大が、効率向上(機器・断熱)の効果を上回った。出典:(高田しのぶ、西尾健一郎2009)

図7 住宅の冷暖房エネルギー消費量:全館連続運転と部分間欠運転の比較。日本でも欧米並みに全館連続運転が定着すればエネルギー消費量は大幅に増える。  出典: 出口・水石(2015)

図7 住宅の冷暖房エネルギー消費量:全館連続運転と部分間欠運転の比較
日本でも欧米並みに全館連続運転が定着すればエネルギー消費量は大幅に増える。
 出典: 出口・水石(2015)

図8 「省エネ対策の効果の試算」のマクロフレームにおける位置づけ(概念図)。なお簡単のため鉄のリンクは電力消費量のGDP弾性値1をとした45度線で書いているが、実際には弾性値は1以上になりうる。筆者作成。

図8 「省エネ対策の効果の試算」のマクロフレームにおける位置づけ(概念図)
なお簡単のため鉄のリンクは電力消費量のGDP弾性値1をとした45度線で書いているが、
実際には弾性値は1以上になりうる。筆者作成。

附1.節電の継続性の見通しについて注6)

 本稿の主題とはやや離れるが、附記として、現在継続している節電について、2030年断面でどのように見込むべきかを述べる。(省エネ小委の試算では現時点で「検討中」となっており、数値は示されていない)。

 震災以来、節電が継続している。その規模は家庭・事業所(工場・オフィス他)の何れでも、震災前に比べて10%前後の電力消費量の削減であった。 但し、この内容には変化が見られる。家庭において、節電意識は年々低下しており、「エアコンの利用減」などの、我慢を伴う節電行動は減少している。工場・オフィス他においても、「操業時間シフト」などの、我慢・コストを伴う節電行動は減少傾向にある。

家庭部門の節電率の要因分解

 家庭部門において「高効率な機器への更新」および「電気料金上昇の影響」による節電効果を推計したところ、2014年夏においては、それぞれ、家庭の電力消費量の4%程度、1~2%程度であった。
 節電率の要因分解について、家庭部門は図9のように整理される。すなわち震災直後は、「電力不足解消への貢献意識」から、我慢・コストを伴う節電が多く実施されたが、そのような行動は年々減少する傾向にある。節電率がそれでも過去数年で一貫して家庭部門の電力消費の10%前後と変わらなかった理由は、「高効率な機器への更新」があり、この「4年分の効果累積」が4%程度あること、および、「電気料金上昇の影響」が1~2%あり、「料金によらず持続」される節電行動が5%前後に減少しているものの、それを埋め合わせている、と推察された。
 以上の分析をもとに、2030年の電力消費量における節電の効果を推計すると、以下のようになる。現在10%前後で推移している節電率のうち、コストや我慢を伴うことの多い「節電行動」による部分は、いま5%前後とみられるが、これは今後も減少を続けるだろう。
 他方で、「高効率な機器への更新」(4%程度)は、マクロフレームの中で、ないしは機器の導入による「省エネ対策の効果の試算」で別途勘定される。また、「価格効果による節電量」(1~2%程度)は、マクロフレームなどによって別途勘定される。従って、ここではこれらを勘定すると、ダブルカウントになって、誤りになる

 ダブルカウントにならないのは我慢などを伴うこともある「節電行動」による節電率である。これは、現時点において5%前後であるが、年々1%程度減少してきた。今後もこれは減少を続けるだろう。もちろん、照明や空調が過剰であった場合、それについての学習が進んだりしたので、このような点については、今後も、我慢やコストを伴わず、節電が定着する部分もあるだろう。だが今後、どれだけ長期にわたって定着するかは未知である。

注6)
この章の節電実態の分析は(西尾・大藤2013)および木村(2013)に基づく。ただし2030年の見通しは筆者によるもの。

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