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省エネの「ダブルカウント」に要注意

―京都議定書目標達成計画の失敗を繰り返すな― 


キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹


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4.「マクロフレーム」と「省エネ対策の効果の試算」の関係について

 さて今回示された省エネ小委の「省エネ対策の効果の試算」について、そのマクロフレームの関係について述べる。
 エネ環会議では、マクロフレームにおいて、大幅な省エネを見込んだ上で、さらに省エネ対策の効果を積上げたが、これは「ダブルカウント」であり、方法論的に間違いであったことは、RITE資料(p5)が指摘した通りである。
 現在の政府のマクロフレーム(図2)では、「省エネ対策前」の「技術固定ケース」から省エネ対策の効果を積上げて需要見通しを作成することとなっている。このような方法をとるならば、「技術固定ケース」においては、電力消費量のGDP弾性値は1よりもかなり大きくなる(=電力消費量の伸び率はGDPの伸び率を大きく上回る)としなければならない
 なぜなら、過去に観察された「鉄のリンク」は、大幅な省エネ対策の実施があったにも関わらず起きてきたからである。これについて、詳しく見てみよう。

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図2 マクロフレーム(上)と、「省エネ対策前」における技術固定ケースの考え方(下)。 省エネ小委2月17日資料(総合資源エネルギー調査会長期エネルギー需給見通し小委員会(2015年2月13日)資料)

図2 マクロフレーム(上)と、「省エネ対策前」における技術固定ケースの考え方(下)。
省エネ小委2月17日資料(総合資源エネルギー調査会長期エネルギー需給見通し小委員会
(2015年2月13日)資料)

5.「鉄のリンク」に効率向上は織り込み済みである

 例えば、今回の積算の目玉として、LEDの普及が言及されている。確かにLEDは優れた技術であり、既存の蛍光灯照明に比べて効率が倍になると見られている(図3)。
 だが、LEDと同様な効率向上は、過去にも多くあった。例えば、液晶テレビ(図4)、冷蔵庫(図5)、エアコンは、何れも、倍以上の効率改善があった。
 効率改善にも関わらず、電力消費量が全体として伸びてきた理由は何か。それは、機器の普及量が増え、大型化し、また高性能化したからである注4)
 例えば、冷暖房はどうか。図6では、暖房用エネルギー需要の変化要因を分析している。過去の暖房エネルギー需要は、0.83%/年で増加してきた。増加した理由は、年率2.53%という大幅な効率向上(住宅断熱性能の向上 1.89%/年、機器の効率向上0.64%/年)があったにも関わらず、暖房サービスの需要が3.31%/年(床面積増加が0.54%/年、暖房水準向上が2.77%/年)と大きく伸びて、効率改善の効果を上回ったためである。
 将来についても、このようなサービス需要の増大が予想される。図7では、各国での仮想的な住宅のエネルギー消費量が比較されている。ここで注目すべきは、日本でも、これまで多くの家庭でそうであった部分的な冷暖房ではなく、全館冷暖房にすると、エネルギー消費量が大幅に増えると予想されることである。
 今後、冷暖房機器や住宅断熱の効率は向上するだろう。だがそれと同時に、健康によく快適な、全館冷暖房も普及していくだろう。過去においては、図6で見たように、暖房サービス水準の向上は、機器や断熱の効率改善の効果を上回ってきた。今後も、経済成長が続くならばなおのこと、この傾向は継続するだろう。とくに日本の冷暖房については、欧米では一般的である全館冷暖房が未だ普及していないという背景があるので、今後も大きくエネルギー需要が伸びる可能性がある注5)
 状況は他の機器でも同じである。例えばテレビについて言えば、個々の機器の効率は向上した。だがその一方で、大型化し、また画像の質が向上し、普及台数や視聴時間は延び、さらにはインターネットなどの新たな用途にも利用されるようになってきた。この結果として、電力消費量がどう増減したかは、定かでは無い。
 省エネ小委が示したような、省エネ対策の推進は勿論重要である。だが、以上に見てきたように、機器の効率が飛躍的に改善しても、全体としての電力消費量は伸びてきた。このことをよく理解して、今後、「省エネ対策の効果の積算」を、「マクロフレームで想定する省エネ」とダブルカウントしないようにしなければならない。省エネ小委の示した「省エネ対策の効果の積算」は、「鉄のリンク」を起点として電力消費量を削減するものではなく、むしろ、“「省エネ対策の効果の積算」を織り込んだ結果として「鉄のリンク」が実現する”ものと考えることが正しい(図8)。

図3 照明の効率向上、過去および予測。LEDは既存の照明を上回り2001m/Wを超えると期待されている。 オプテックスエフエー社HP

図3 照明の効率向上、過去および予測
LEDは既存の照明を上回り2001m/Wを超えると期待されている。
オプテックスエフエー社HP

図4 テレビのエネルギー効率向上、過去。 資源エネルギー庁資料

図4 テレビのエネルギー効率向上、過去
資源エネルギー庁資料

図5 冷蔵庫の効率向上、過去。 資源エネルギー庁資料

図5 冷蔵庫の効率向上、過去
資源エネルギー庁資料

注4)
新しい機器
なお、省エネの推進にもかかわらず電力消費量が伸びてきた要因のもう一つは、新しい機器が次々に技術開発されて普及してきたことである。家電機器の普及率の推移については
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/more/pdf/summer2014.pdf
今後、技術開発はますます速さを増し、また一層のICT革命が進み、高齢化による医療・福祉需要の増大が予想されるなかで、経済成長が続くならば、また新たな機器が普及していくだろう。現時点で、2030年にどのような機器があるかを具体的に予言することは不可能である(2000年に2015年の機器を予言できなかったことと同じである)。だが、経済成長するならば、電力需要が増えると考えることが、整合的である。
注5)
リバウンド効果
一般的に言って、機器の効率が改善しても、エネルギー消費が総量で比例して減少するとは限らない。機器の効率が向上すると、サービス当たりの光熱費が下がるので、その機器の利用量は増え、エネルギー消費量が増加するという側面があるからだ。これは専門的には「リバウンド効果」として知られており、IPCC第5次評価報告でも重要な話題になった。リバウンド効果の大きさは、先進国では典型的には10~30%とされている。すなわち、効率が10%向上しても、1~3%はリバウンド効果のために電力消費は増える。なおリバウンド効果は途上国ではより大きく30%~60%とされている。日本では、とくに断熱効率の向上につれて全館冷暖房が普及すると、リバウンド効果は大きいと予想される。なおリバウンド効果についてさらに詳しくは拙著をご覧いただきたい。


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