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省エネの「ダブルカウント」に要注意

―京都議定書目標達成計画の失敗を繰り返すな― 


キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹


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国全体でのマクロな節電率の見通し

 以上では家庭部門を主に論じたが、事業所(工場・オフィス等)でも事情はおおむね同じであると考えられる。
 すると、国全体でマクロに見れば、2015年における節電行動による節電率(=設備・機器更新および電力価格上昇の影響を含まない節電率)は夏季において電力消費量の5%程度であったと見られる。これが今でも年々減少しつつあること、および2015年から2030年までは15年間という長い時間が経過することを考慮すると、今後はさらに大幅な減少をすると見るべきであろう。加えて、夏季ではなく年間で勘定するならば、節電率は更に小さな値となる。暫定的な結論として、2030年において、節電行動の継続による節電率(=設備更新および電力価格上昇の影響を含まない節電率)を数値として織り込むならば、5%前後の半分の半分以下であり、電力消費量の1%程度以下と見込むことが適切に思われる

図9 2014年夏の節電要因のイメージ図、震災前との比較。震災直後は、「電力不足解消への貢献意識」から、我慢・コストを伴う節電が多く実施されたが、そのような行動は年々減少する傾向にある。節電率がそれでも過去数年一貫して10%前後と変わらなかった理由は、高効率な機器への更新の「4年分の効果累積」が4%程度あること、および、電気「料金上昇の影響」が1~2%あり、「料金によらず持続」される節電行動が5%前後に減少したことを埋め合わせている、と推察される。(筆者作成)

図9 2014年夏の節電要因のイメージ図、震災前との比較。震災直後は、「電力不足解消への貢献意識」から、我慢・コストを伴う節電が多く実施されたが、そのような行動は年々減少する傾向にある。節電率がそれでも過去数年一貫して10%前後と変わらなかった理由は、高効率な機器への更新の「4年分の効果累積」が4%程度あること、および、電気「料金上昇の影響」が1~2%あり、「料金によらず持続」される節電行動が5%前後に減少したことを埋め合わせている、と推察される。(筆者作成)

附2.海外諸国の「鉄のリンク」について

 1.5%以上の経済成長をしている国々では、GDPと電力消費量の鉄のリンクが普遍的に観察される。ただし国と時期によっては、鉄のリンクが弱くなることがある。だが以下に見るように、これらは何れも理由がある注7)
 イギリス(図10): 1975年以降、一貫して鉄のリンクが弱い。これは、1980年代は石油ショックがあったこと、1990年以降は製造業が一貫して衰退してきたことによる(図11)。いま日本が指向している経済成長が製造業・サービス業全般にわたるものであれば、イギリスは先例にならない。
 ドイツ(図12): ベルリンの壁崩壊の時期(1990-2000)には、東欧の非効率な産業が衰退したために、リンクが弱くなった。近年もリンクが弱くなっているように見えるが、これは日本と同様に経済が低迷している時期であり、1.5~2%の経済成長をするという前提であれば関係が薄い。
 アメリカ(図13): 2000年代はリンクが弱くなっているが、この時期の米国は金融などのサービス部門が成長の柱になっていた。製造業シェアは、日本より一貫して低く、かつ低下を続けていた(図11)。
 中国(図14): ほぼすべての点が45度線の近くにあることから、鉄のリンクが強固であることが分かる。高い経済成長をする多くの国で、このように鉄のリンクははっきりと観察できる。
 このようにして見てくると、今後日本において、①製造業・サービス業ともにバランスよく、かつ②年率1.5~2%で経済成長を続ける、という前提に立つならば、やはり「GDPと電力消費量の鉄のリンク」が成立すると考えることが整合的である。

図10~14はこちら

注7)
なお図10以降では5年間移動平均をとっているが、その最終年を表示している。図1は中央年を表示している。これは手違いによる。不便をご容赦願いたい。
<引用文献>
 
西尾・大藤(2013) 家庭における2013年夏の節電の実態 電力中央研究所 Y13010
木村(2013) 東日本大震災後の事業所節電行動の継続状況(2013年版) -3カ年のアンケート調査の比較- 電力中央研究所 Y13014
高田しのぶ、西尾健一郎(2009) 暖房エネルギー需要変化要因の整理と簡易データによる試算、電力中央研究所社会経済研究所 ディスカッションペーパー SERC 08015 http://criepi.denken.or.jp/jp/serc/discussion/download/08015dp.pdf
出口満・水石仁(2015) 住宅省エネ基準の国際比較と更なる省エネ化に向けて、野村総合研究所
http://www.nri.com/~/media/PDF/jp/opinion/teiki/region/2015/ck20150102.pdf

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