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オバマ政権の環境・エネルギー政策(その17)

石炭を巡る攻防


環境政策アナリスト


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注目される「中間」派の動向

 では、焦点となる上院の勢力分布を見てみよう。
 気候変動法案が大きなアジェンダとなっていた第111国会において米国のインターネット上のエネルギー環境関係のレポートE&Eデイリーで気候変動法案に対する上院議員(100人)のインタビューに基づいた調査結果を報告している。気候変動法案にはキャップ&トレードは前提になっているのでキャップ&トレードおよびその経済的影響に対する見方も包含していると言っていい。
 それによると「支持」34人(民主党32人、民主党系独立派2人)、「たぶん支持」9人(民主党7人、共和党2人)、「中間」21人(民主党15人、共和党6人)、「たぶん反対」13人(共和党10人、民主党3人)、「反対」22人(共和党22人)となっている。ここでいう「中間」を「条件付き容認派」と位置づけることもでき、気候変動法案の法制化で重要な役割を果たすと考えられる。(ただし、調査時の「支持」にはエドワード・ケネディ議員が入っているためその逝去後の数字は33人になる)。
 「中間」というのは、法案の条件によって投票行動を変えうる議員たちである。現上院でも議席を持っている比較的議員経験の長い有力議員が多い。民主党ではオハイオ選出ブラウン議員、ウェストバージニア選出ロックフェラー議員、ミシガン州選出スタベナ議員、モンタナ州選出テスター議員ら、共和党には、大統領選挙でオバマと戦ったマケイン議員、エネルギー天然資源委員共和党側トップマコウスキー議員らである。マケイン候補は自身も気候変動法案を提出したことがあるので、原子力の支援などが盛り込まれるなど彼の主張が認められれば賛成投票をするということになる。「中間」にいる民主党議員は15人であった(現在もほぼ同じ傾向)。これらの議員は法案化に際しては、アメリカ経済への影響への十分な配慮、アメリカの製造業の雇用の保護と国際競争力の強化、農業と林業の役割の十分な認識 などを求めている。したがって、法案の通過にあたっては20人前後の「中間」派、特に15人前後の民主党「中間」派の動向は大変重要である。
 「中間」派巻き込みのためには、筆者は先に述べた2008年6月6日民主党中間派10人の書簡(前述)で示された条件――コスト抑制・経済への影響緩和措置など――への手当てが重要だと考える。しかし、これまでのところこれらの点については、キャップ&トレードの導入に際して条件として満たすことは不可能であることがさまざまな指摘で明らかになっている。
 さらに、条約の批准権限を持っている上院で批准するためには、3分の2の67票が必要となる。この点、エドワード・ケネディーの上院議員逝去の2010年1月のマサチューセッツ州補選で伝統的に二議席を確保してきた民主党が敗退、共和党が1議席を奪いとった。これは当時のオバマ大統領の医療保険改革への批判票として実現したインパクトのある出来事として受け止められた。民主党後退を印象づける結果ともなった。また、民主党が維持してきた議事妨害を排除できる安定的多数の60議席を割り込むことにもなった。こうした上院勢力図の変化は米国が気候変動条約を批准するということを一層困難なものとした。

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