オバマ政権の環境・エネルギー政策(その12)

上院による原子力廃棄物管理法案


環境政策アナリスト

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 ユッカマウンテンに関するオバマ政権の動きに呼応して上院では新たな原子力廃棄物管理に関する法制化の動きが始まっている。2013年4月になって上院エネルギー天然資源委員会のワイデン上院議員(民主 同委員会委員長 オレゴン州選出)およびマコウスキー(共和 アラスカ州選出)、上院歳出委員会エネルギー・水資源開発小委員会のファインスタイン(民主 カリフォルニア州選出)およびアレクサンダー(共和 テネシー州選出)が共同で2013年原子力廃棄物管理法案を提出した。この4人の上院議員は前国会においてビンガマン上院議員(民主 前エネルギー資源委員会委員長 ニューメキシコ州選出の法制化に協力をした。今回提出された法案はほぼビンガマン提出法案を下敷きにしたものである。ビンガマン法案はほぼブルーリボンコミッションの提言に沿った内容となっていたが、ビンガマン法案は上院を通過することなく廃案となり、ビンガマン上院議員は2012年選挙に立候補せず長い議員生活を終えた。このときビンガマン上院議員は「統合型」中間貯蔵施設(後述)が建設されるためには最終処分場の立地に「顕著な進展」があることを求めていた。マコースキー、ファインスタイン、アレクサンダーの三人の上院議員は中間貯蔵施設と最終処分場は分離して進めることができるとしており、この点がビンガマン法案と2013年法案との大きな違いとなっている。ワイデン議員は、法案の発表に際してこう述べている。「わが国は廃棄物処分の長期的解決を探すことをもう待つことはできない。(略)われわれの法案へのフィードバックがこの仕事を完成させ、多くの放射性廃棄物を安全に管理し、恒久的に処分するための法案を前進させてくれることに役立たせるであろうと期待している」。

2013年原子力廃棄物管理法案の概要を改めて紹介する。

エネルギー省から独立した新たな連邦機関を設立。原子力廃棄物プログラムを運営する。
新組織に対して使用済み燃料・廃棄物貯蔵パイロット施設を建設するように指示をする。そして廃炉にしたプラントから取り出した使用済み燃料と一部運転中のプラントから取り出した燃料を貯蔵する。
貯蔵・処分場について合意ベースの新たな立地プロセスを確立する
新組織の局長は貯蔵施設を迅速に立地を始めるように権限が付与される。
新たにファンドを財務省内に設立する(原子力廃棄物費用はここに預託され、議会承認手続きを必要としない。)
既存の原子力廃棄物ファンドの収支については議会承認手続きを残しておく。

 なお、「統合型」というのは原文ではconsolidatedという言葉が使われている。法案が提出されている今でも依然consolidateという概念はしばしば使われるわりには明確ではなく、複数の発電所からの使用済燃料・廃棄物を受け入れる施設を想定していると言われている。現状各発電所にサイト内貯蔵されているものを順次受け入れるものと考えられている。
 次に新機関のガバナンスは以下のとおりとすることとしている。
 まず局長は大統領によって指名され、議会によって承認される。大統領はさらに副局長と監察官を指名し、これも議会の承認を必要とする。局長は法律顧問と財務部長、3人以下の局長補佐官を指名することができる。局長と副局長の任期は一期6年。二期務めることを妨げない。法案はさらに監視委員会を設立し、ここには大統領により5名が指名される(任期は5年)。3人以上が同一政党にさせてはいけない。監視委員会には議長を大統領が選任し、事務局長と最大10人のスタッフから構成される。
 第二に新法案は貯蔵・廃棄物施設の立地、建設、運転、廃棄物処分に関する契約締結の権限をエネルギー省から新機関に移行させる。まずは一ヶ所の貯蔵パイロット施設を立地、建設、運転する。さらにひとつまたは複数の優先度の低い使用済燃料・廃棄物の受入れ貯蔵施設およびひとつまたは複数の最終処分場を立地、建設、運転する、としている。
 第三に、新たな合意ベースの立地プロセスを確立するとあるが、新たな組織は概ね下記が求められる。
 貯蔵施設建設の合意のプロセスは下記が求められる。

立法後半年以内に優先される使用済燃料・廃棄物の貯蔵を実証するための提案
(レビューガイドラインを含む)を新機関が策定

各サイト近傍で公聴会実施後サイトを選定。別のサイト候補も選択

議会に通知する

州および地元と協力の合意を締結

サイトの適格性について新機関が決定をする

 なお、貯蔵施設についてひとつめは複数のサイトを選択することを前提としており、サイト選定の1ヶ月まえまでに計画を議会に提供することとしている。建設については原子力規制委員会のラインセンスを得る。

 また処分場選定については貯蔵施設の合意の後、新組織は下記のプロセスを実施。

技術的立地ガイドラインの確立

州および地方自治体に自発的申し出を要請

サイト評価のため州および地元の同意を得る

サイト評価および選択について公聴会を開催

サイトの同意については連邦議会の承認を得る

 処分施設の建設については原子力規制委員会のライセンスを得ることとしている。