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第1回 石油連盟専務理事 松井英生氏

「石油」を分散型・自立型エネルギーとして位置づける政策を


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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 第1回にご登場いただくのは、石油連盟専務理事の松井英生氏です。政府のエネルギー政策の見直しや石油業界からの5次にわたる提言の核心部分、さらに今後の日本のエネルギー戦略のあるべき姿について率直なご意見を聞きました。(2012年8月27日インタビュー実施)

エネルギー問題は、“頑張れば何とかなる”ものではない

――現在、2030年に向けたエネルギー政策の見直しについて議論が進んでいますが、政府の検討(選択肢等)についていかがですか。

松井英生氏(以下敬称略):私もすべての議論を把握しているわけではありませんが、率直な印象として、今回の議論は全く「原発をどうするか」の一色です。原発が仮にゼロ、または減った時に、我々の生活や経済状況にどういう影響があるかという見通しがほとんど示されていない中で議論が進んでいます。政府の資料では原発がゼロになるとGDPが9%、45兆円ダウンする、雇用がどのくらい減る等のデータもいくつか載っていますが、それらをほとんどの国民が知らないままです。特に国民一人ひとりの生活にどのような影響があるという情報は知らされていないと思います。TVのインタビューに答える方も「原発がなくなって大変だけども、ライフスタイルを変えて我慢すればなんとかなる」とおっしゃるだけで・・・

松井英生(まつい・ひでお)氏。
1975年に通商産業省(現在の経済産業省)に入省。外務省在連合王国大使館参事官、資源エネルギー庁長官官房原子力産業課長、中小企業庁次長、商務流通審議官、国際協力銀行理事などを経て、2010年3月より石油連盟専務理事に就任。

 問題は電気・電力だけの話に留まらず、日本の経済社会全体が大きく変わってしまうということです。例えば、「あなたは失業するかもしれない」、「10人に1人は失業です」、「GDP45兆円は、消費税で2割近いUPになる」と認識してもらった上で議論すべきです。「それでもいい。自分は消費税が20%上がっても、仮に勤め先がなくなっても原発ゼロにする」と言うのならば、それは一つの重要な見識であり、判断だと思います。

 総合資源エネルギー調査会のある委員の方ともずいぶんディスカッションをしましたが、「原発が減れば再生可能エネルギー関連の産業が増える。そこで雇用が吸収できるからいい」とおっしゃいます。私は「再エネの太陽光パネルはほとんどが中国から輸入されている。電気自動車(EV)も、リチウムイオン電池に必要不可欠なレアアースは中国がほとんど保有していますので、国内雇用の拡大には結びつかないのではないですか。」と切り返しました。しかし、「いや、皆で頑張ればなんとかなるんです」と相手はおっしゃるのです。

――「頑張れば何とかなる」と発言される方は少なくありません。

松井:気合だけでうまくいくものではありません。国が責任あるデータや見通し、それも安心するような緩いものではなくて、厳しいものを国民に見せて国のあり方をしっかり示すべきです。国の将来の姿がどうなり、国民一人ひとりの生活がどうなるかを示したうえで、冷静な議論をすべきであり、拙速な結論は避けるべきだと思います。
 ちなみに政府の示した資料によれば、2030年原発ゼロシナリオの場合は、クリーンエネルギー政策のイメージとして、重油ボイラーの原則禁止、省エネ性能に劣る空調の省エネ改修義務付け、省エネ性能に劣る住宅・ビルの新規賃貸制限、高効率空調機器以外の暖房機器販売禁止、中心市街地へのガソリン車等の乗り入れ制限等が取り上げられており、これは国民生活に大変大きな影響を与えることになると思います。
 さらにこれに加えて原発の問題は、長期間を要する廃炉に必要な技術の維持継承、使用済み核燃料の処理、核燃料サイクルのあり方、プルトニウムの処理、国際的なセキュリティー問題など、幅広くかつ深い検討が必要です。冷静に腰を据えて議論、検討をしていただきたいと思います。



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