工藤智司氏・日本基幹産業労働組合事務局長に聞く[後編]

仲間とスクラムを組んでこの難局を闘いたい


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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温暖化対策については世界全体でやれる枠組み作りを

――COP17が終了し、2013年以降の京都議定書の延長と、中国、アメリカを含む新しい枠組みの発効が合意されていますが、COP17に対すてどう評価されていますか。

工藤:基幹労連としては、一定の評価はしたいと思っています。まず、中国や米国が入ってくる2020年に向けての枠組みを決めたことはやはり大きいと思います。また、日本のこれまで言っていた公約、温室効果ガス排出量を1990年比25%削減について明記せず、約束させられなかったとことは一定の評価ができると思います。ただ次のCOP18では大きな議論になるでしょう。

――基幹労連として、温暖化対策の方針は出していますか。

工藤:基幹労連として、温室効果ガス排出25%削減については、経済効率性が担保できないと認められないと主張しています。要は中国や米国が枠組みに入らない中でやるのは、全く意味がない。やるのだったら、世界全体でやれる枠組みを作っていくべきだとずっと言い続けています。

――日本の排出量は全体の中ではわずかだということでしょうか。

工藤:そうです、日本はわずか4%でしょう。議定書の批准国は27.2%ですので、それらの国だけでも排出削減を頑張ってもだめだということです。

――米国、中国、インドが排出量に占める割合は世界全体の約半分ですね。温暖化対策は推進される立場かと思いますが、どのような形で貢献できると思いますか。

工藤:我々の持つ技術は高効率の発電設備など、電炉メーカーや、リサイクル技術などいろいろありますので、世界最高の技術を世界中に輸出していくことにより、全体的な削減につなげていくほうが現実的でしょう。間違いなく世界最高の技術だと私たちは思っています。

産業の空洞化が今、一番の課題

――必死に日本のモノづくりを守ろうとしている業界もありますが、なかなか厳しいというお話は伺っています。

工藤:最終的に問い正したいのは、この国はどういう国なのかということです。資源が多い国は資源立国、アメリカは金融立国になりつつありますが、観光立国など、国の姿がいくつか描けると思います。私はかつて中学校の先生から「工藤、この国は資源のない国だ」と言われた。「海外から原材料を輸入して、それを加工して外貨を稼いでこの国は発展する形でしか国際社会で生き残れない。だから貿易立国を目指すべきだ」と。私はまさにその通りだと思うのです。こういう国家像を作るべきでしょう。そういう国を私も目指していきたい。そうではないとおっしゃるのでしたら、きちっとした国の形、どういう国家像を描いて進めていくのかを言っていただきたい。

――国家としてのヴィジョンを明確にするということですね。

工藤:電気料金を上げて、国際的に闘えないような国にするのだったら、企業は国外へ出ていきます。そうなった時にこの国は、何で生きていくのかと。農業なら農業、観光なら観光でいいですが、どうやってこの国を発展させていくのかを言ってもらわないと、そう簡単には乗れないですよね。

――海外移転が進んだ場合、組合員の方が海外に渡り仕事をする機会は今後増えそうですか。

工藤:我々の産業でも、輸出比率が60パーセント近いところがありますし、海外に転化していった事例はたくさんあります。今も海外で頑張っている組合員さんは多くいます。

――やはりそういう流れになっているわけですね。

工藤:はい。自動車産業でも、国内でこれだけの規模の残していこうと労使で話し合いながらやっていますし、彼らも産業の空洞化を懸念していると思います。日本で車を買う人がいなくなってしまったら困るでしょう。産業の空洞化が、私たちにとって今一番の課題です。

――空洞化を食い止めるためには、何が一番大事でしょうか。

工藤:大きい課題としては、円高、経済連携協定、電力、法人税率でしょうか。トップを含めたセールスなどもやっていかなくてはいけない。しかし、個人的に一番問題の根底にあるのは少子高齢化だと思っています。