災害から学ばないメディア


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(「EPレポート」より転載:2024年2月11日号)

 東日本大震災直後、公共放送の解説員が計画停電の原因は東電による電力供給の独占にあると解説した。この説明は正しくない。

 日本の大規模発電所は海外から燃料を受け入れているので、外航船が接岸可能な海岸線に建設するしかない。仮に発電所の所有者が東電でなくても被災は免れなかった。独占と停電は関係がない。解説者と同じ発想だろうか、安定供給の確保を目的の一つとして2016年に全面自由化が行われた。

 能登半島地震でも、電力供給のことを理解していないマスメディアがあることが露見した。大手新聞が、「電力の小売りは自由化されたが、大手の寡占が続く発電や送配電網に頼る構図は災害時のリスクになりかねない」「小型電源に分散すれば、災害でも電力を順次復旧しやすい」と解説した。

 記者は能登半島地震の写真を見たのだろうか。電柱が倒れ、配電線は切れていた。地産地消の電力供給網だったら震災でも配電設備を守ることが可能と思っているのだろうか。記者は「独自の供給網が増えれば広範囲の停電を避けやすくなる」とも書いている。まさか電柱を2本立てることはない。創成期の電力業界では電力会社がそれぞれの電柱を立てていたが、無駄な投資なので1社になったことを記者は知らないのだろうか。送配電設備の所有者と送配電網の規模は停電とは何の関係もない。

 被災地の火力発電所が被害を受けたので、大規模電源を持つ周辺の電力会社が緊急に供給し、広域停電を回避した。大規模な連携が停電を回避する。独自の電力供給網であれば配電に加え発電設備の復旧まで必要になり、地域の停電解消には数か月必要になるだろう。独自の設備は災害からの復興を大きく遅らせることになる。

 小型電源の分散により災害に強くなると主張するのは読者受けが良いと考えているからだろうか。一部のマスコミは、災害のたびに電力インフラの弱体化を進めたいようだ。地産地消が増えれば停電を引き起こすかもしれない。その時にこの新聞社は自主的に真っ先に電気を消すのだろうか。