エネルギーに関する授業発表の全国大会


環太平洋大学客員教授、元中日・東京新聞記者、経済広報センター常務理事・国内広報部長(産業教育で文部科学大臣賞を受賞)

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 経済広報センターは、エネルギーについて学校で考える場を提供するため、教員向けに毎年、全国7地域で、エネルギー教育シンポジウムを開催している。そして、そのシンポジウムでは、毎回、4~6名の先生方がご自身で考え出したエネルギーに関する授業を提案している。

 そして、各地のシンポジウムごとに選出されたチャンピオンが年度末に東京に集まり、エネルギー教育模擬授業全国大会で、さらにブラッシュアップされた授業を披露し、その年のグランドチャンピオンが決まっている。

 2022年度は、23年1月28日、日本科学未来館で開催された。日本科学未来館が、いわば高校球児の甲子園球場のような存在になっている。毎年、全国大会で披露される授業は、多岐にわたる。今回の授業の一部を紹介すると、「2030年度のエネルギーについてもっと考えよう」「超小型原子炉の未来を予測する」「エネルギーミックス」「次世代型エネルギーシステム構築を担う蓄電デバイス『キャパシタ』」「資料やデータをもとに原子力発電について主体的に調べる力をつける」「森林率日本一の高知から始まる循環型エネルギー」「現代のエネルギー安全保障」など。どれも魅力的なテーマと内容だ。

 小型原子炉を扱った授業が複数あった。世の中で、原子力発電所の運用期間延長が議論され、その一方で電気料金が高騰している。それだけに未来型の小型原子炉が期待されていることの表れなのかもしれない。

 このような社会情勢を反映したテーマを、先生方は見事なまでに選び出している。

 そんな中、経産省が作成した、子ども向け教材やホームページに、太陽光だけの欠点を取り上げ、原子力発電の欠点は取り上げず、原子力発電に誘導しているような内容があり、国会で追及されたと報道された。

 もちろん、「再生エネルギーには欠点があるので原子力発電で安定した電力供給を」という論者がいてもいいし、その一方、「再生エネルギーの欠点を克服するため再エネの研究開発を進めよう」という人がいてもいい。「再エネも原子力も」という人がいてもいい。「原子力発電を扱うと同僚教師や保護者から抗議されるので、原子力発電の授業はできない」という先生もおられよう。いずれにせよ、学校の授業や教材では、ある結論に誘導するのではなく、子供たちに純粋にエネルギーについて考えてもらう授業が望まれる。